musicoholic presents『This song vol.3』@下北沢モナレコード act: MC KOSHI(O.A)、SANABAGUN、仮谷せいら、GOMESS

元記事掲載:音楽情報ブログ『musicoholic』

【ライブレポ】musicoholic presents『This song vol.3』 : 音楽情報ブログ『musicoholic』

■20150215

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2月15日、musicoholic3度目となる自主企画『This song vol.3』が下北沢モナレコードにて行われた。『This song』とはmusicoholicのメンバーであるヤットが中心となり「今、この音楽を聴いてほしい!」という想いをもとに、ジャンルやシーンを問わず、ライブを生で見て欲しいというアーティストを招いて行うイベントである。
 2012年10月にONPA MOUNTAIN、BRADIO、barbalip、With A Splash、ill hiss cloverを呼んで池袋マンホールにて開催された第1回、2014年6月にShiggy Jr.、HOLIDAYS OF SEVENTEEN、R (from FAT PROP)の3組が、アコースティックセットで下北沢モナレコードに集った第2回を経て、今回で3度目の開催となった。
 まず一組目、オープニングアクトとして登場したのは、HIPHOPアイドルグループlyrical schoolのバックDJや作詞で活躍する岩渕竜也ことMC KOSHI。 過去にラッパーとしても活動していたが、本人曰くライブをするのは3年振りとのこと。何度かlyrical schoolのイベントではフリースタイルを披露し、自身のsoundcloudには音源を上げていたが、おそらくほとんどの人にとってそのライブはベールに包まれたものだったろう。
 そんな中1曲目に歌われたのは"そういう男に"。イベント前夜にYouTubeの彼のアカウントにリハスタでの映像が突如アップされた楽曲だ。これまでlyrical schoolに提供してきた彼の歌詞は、あくまで女性(アイドル)が歌うことを考えて作られた「男性の考える女性目線の歌詞」だった。しかし、この曲では「辛い悩みから決して逃げない 深い闇から目を逸らさない」と、彼の内面を反映させたような男性目線の硬派なリリックが、決意表明のように力強く歌われている。
 その後も「昨日はバレンタインデーだったので」と歌われたメロウなラブソング"君のせい”など、ゆったりとしたトラックと堅実なライミングを披露、初見でまだ固かった観客も次第に音に身を任せ揺れ始める。"リクルート"では、自身の就職活動とHIPHOPの道に進むきっかけとなった瞬間をメロディアスにラップした。その曲の最後、バックDJの浅野(lyrical schoolスタッフ)が次の曲への繋ぎを失敗してしまうハプニングもあったが、「いいんだぜ間違えたって。間違いながら何かに逆らうんだぜ。」と"リクルート"の歌詞を引用しながらすぐさまフリースタイルでフォローを入れる一幕も見られた。全6曲。短い時間ではあったが、岩渕竜也ではなく一人のラッパーとして、3年ぶりとなるMC KOSHのライブIはステージに華を添えた。

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MC KOSHI セットリスト
1. そういう男に
2. platinum days
3. 封筒
4. 君のせい(原曲:Midnight / Midnight DEMO by KOSHI-03 | Free Listening on SoundCloud
5. リクルート
6. see you again

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続いて登場したのはSANABAGUN。渋谷で毎週ストリートライブ(現在はお休み中)を行う8人組のジャズHIPHOPバンドだ。この日、saxの 谷本大河が入院治療中のため欠席となり7人でのステージとなったが、お馴染みのオープニングナンバー"Son of A Gun Theme"、"M・S"と続けた、その後は新曲をお披露目、ジャズシンガーの高岩遼の色気のあるボーカルの活きたブルージーな一曲にモナレコードの木目の温かい雰囲気がよく似合っていた。
 しかし、そんなムードある曲で聴かせたと思えば、次の"大渋滞"では縦ノリのタイトなリズムに乗せ、MCの岩間俊樹が「みんな金払って今日来てるんだろ?」とステージからフロアに降り客席を煽り立てる。かと思えば"Stuck In Traffic"では高岩が物販エリアまでやってき、ユーモアを交えながらグッズの売り子を始めだす(この日欠席していた谷本大河の生写真が通常は5000円?のところ300円で販売されていた)など、変幻自在のSANABAGUNペースで客席を掴んでいく。そして終盤"Hsu What"では再びジャジーな横揺れのグルーブで客席を魅了し、「メイクマニーしてる間に まず墓」という不思議なフレーズのコール&レスポンスと合掌の振り付けで観客を一つにする"まずは「墓」。"で本編トップバッターを締めてみせた。
 SANABAGUNは全員が平成生まれであり、自分達でも「レペゼンゆとり世代」を公言している。しかし、彼らはそれぞれ微妙に年齢も出身地も異なり、まだ若いながらも各々が別々の音楽活動を行っていた下積み時代も経験しているグループだ。その8人が今SANABAGUNとなり、ジャズやブルースとHIPHOPを巧みに折り合わせたグルーブと人を惹き付けるキャラクターで、渋谷のストリートから徐々に旋風を巻き起こしつつある。彼らのその確信犯的なシニカルさと即興性の高いエンターテイメント力のあるステージは、雨にも負けず、風にも負けず、警察にも負けず、ストリートでその場を通り過ぎていく人並相手に鍛え上げられた度胸と経験、そしてそれぞれの下積み時代に培われた技術に裏打ちされたものだ。それがストリートでも、ライブハウスでも、モナレコードでも、変わらないSANABAGUNのライブを支えている。
 この日はモナレコードという会場の雰囲気に合わせてか、持ち曲の中でも比較的BPMも抑えめの曲が多く、普段よりも「聴かせる」一面を見せてくれたが、どの場所でライブをしようとSANABAGUNはSANABAGUN。そんな確かな演奏力と変わらぬエンターテイメント性を感じさせるようなステージだった。 

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SANABAGUN セットリスト
1. Son of A Gun Theme
2. M・S
3. 新曲
4. 新曲
5. 大渋滞
6. Stuck In Traffic
7. Hsu What
8. まずは「墓」。

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3組目に登場したのは仮谷せいら。この日のHIPHOP色の強い並びの中では、唯一、紅一点のポップスシンガー・ソングライターだ。彼女の真っすぐで伸びのある歌声と、彼女が描くその等身大の詩世界が、それまでのモナレコードの雰囲気をガラっと変える。"NMD"では「お金がないから 遊びに行けないね。外は晴れでも 誰にも会えずに。」とお金のないことが生む寂寥感を赤裸裸に綴っている。そんなありのままの彼女のメッセージは、きっと誰もが一度は体験したことのあるであろう普遍的な感情と重なり、聞く人を選ばずその心にすっと入りこみ、胸を包んでゆく。また、レーベルメイトのgive me walletsとのコラボソング"Yes,I Do."ではシンセポップをバックに全編英語詩を歌い上げ、「おそらく最初で最後」と彼女が作詞として参加したFaint★StarのEDMナンバー"メナイ"の自身によるカバーも披露するなど、ウェットや艶を感じさせる歌声も披露された。彼女が高校1年生の時に書いたという"大人になる前に"は、彼女が21歳となった今も、大人への階段を昇っている彼女の「今」の言葉として響き、聴く人の背中をそっと押してくれる。ステージの上で手拍子を煽る彼女の笑顔に、客席も自然と顔をほころばせる。最後はtofubeatsの1stアルバム『lost decade』に収録されている"SO WHAT!?"で爽やかな幸福感を残し、自身初の9曲となるロングセットのライブをやり遂げた。
 彼女の音楽を端的に表すのであれば「ポップス」という言葉になるのだろう。繊細な心の機微をストレートな歌声とシンプルな言葉で表現してゆく。しかし彼女の場合それはジャンルや音楽性だけではなく、彼女のステージでの笑顔、振る舞い、明るさや持って生まれた気質も「ポップス」として大きく作用しているのだろう。彼女のライブではファンは皆自然と笑顔になり、時にクラップし、体を揺らしながら、不思議な充足感に満ちたその空間に身を委ねる。まだ正式な音源化のなされていない曲も多いが("大人になる前に"と"SO WHAT!?"はiTunesで購入可能)、その音がリリースされた時、彼女の「ポップス」は更に広がってゆくだろう。現在音源を鋭意制作中とのことなので、その時を楽しみに待ちたい。

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仮谷せいら セットリスト
1. HOPPER
2. NMD mix
3. Yes I Do
4. 心の中に...Avec Avec ver.
5. そばにいる
6. メナイ(original by Faint★Star
7. フロアの隅で
8. 大人になる前に
9. SO WHAT!?

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そしてこの日のトリを飾ったのはGOMESS。仮谷せいらのライブで皆が朗らかな気持ちになっていた中、会場の照明も十分に点けぬまま「悪いけどおれに盛り上げる曲は1曲もねぇ」と、いきなり新曲の"箱庭"を披露。3月発売予定のニューアルバム『し』に収録予定のこの曲で歌われたのは、絶望と世界の終わりだった。更に「Twitter不眠症の歌を作ってくださいと言われたので作りました。」と、こちらも新曲の"THE MOON"と続けざまに新曲を繰り出す。ポエトリーリーディングのようなスタイルで、時にまるで呻き声のように、GOMESSの口からは次々と言葉が吐き出されてく。不穏で、物悲しく、退廃的だが、その嘘のない言葉の欠片は、聴く者の心に少しずつ突き刺さってゆく。それは曲間のMCでも変わらず、フリースタイルでGOMESSはずっと言葉を紡ぎ続ける。そして次の曲は、リハーサルの段階では本来別の曲をプレイする予定だったのだが、「今日リリスクの"brand new day"をやるつもりだったんだけど、フックを歌って絶望したから...今日はやらない。」とGOMESSが話したのを機に、観客からは"brand new day"への熱いリクエストが飛ぶ。それを受け急遽その場でセットリストを変更し、lyrical schoolの"brand new day"のカバーを披露。しかしカバーと言ってもヴァースは全てGOMESSのオリジナルであり、そこでは「HIPHOP」というものに対するGOMESSの想いと信念が歌われた。「アイドルラップって言葉が嫌いだ。ジャンルって言葉が嫌いだ。壁を作った日本人が嫌いだ。おれはGOMESSというジャンルだ。」と「HIPHOP」に救われたからこそ抱く「HIPHOP」への憤りや葛藤を、GOMESSはステージの上でラップする。
 その後もGOMESSと同じLOW HIGH WHO?のレーベルメイトである黒柳鉄男を招いての"アイドルオタクライミング”、「地獄はまだ続くぜ」と自虐的なMCの後には、ライムベリーの"IN THE HOUSE"のGOMESS ver.、現在Maison book girlをプロデュースするサクライケンタ作曲の、まだ未発売の『世界の終わりのいずこねこ』のサウンドトラックに乗せてのフリースタイルなど、普段のセットリストでは滅多に見られない曲が続いた。ただそのためか、MCのまとまりがなくなってしまったり、少しグダついてしまうシーンの見られる曲もあった。
 しかし、彼は言う。「皆さんに言いますよ。2015年今日が一番かっこいいライブです。」GOMESSがHIPHOPのライブで好きな場面はラッパーがリリックを飛ばすシーンだそうだ。歌詞を飛ばしたラッパーはどうするか、次の瞬間にはさも最初からそれを予定したかのようにフリースタイルで言葉を並べ、ステージ上では最高にクールに振る舞ってみせる。
 失敗を曝け出せるのがステージ、完璧なんてありえないし、そんなものは必要ない。お客さんを楽しませること、その場にいる人を喜ばせられればそれでいい。そんなGOMESSのライブは常にフリースタイルで、彼の口から溢れる言葉は、その瞬間の彼の気持ちであり、宇宙にもその瞬間にしか存在しない文字通り唯一無二のものだ。だからこそ彼の言葉には想いが宿り、その重さだけ聴く者の心に届き、こびりつくのだろう。ラスト"人間失格"でマイクを通さずにシャウトしたGOMESSの言葉は、初めて彼を見た人の胸にも、きっと何かを残したはずだ。
 "人間失格"を歌い終えたところで、MC KOSHIとSANABAGUNの岩間もステージに上がり、アンコールとしてtofubeatsの"水星"に乗せて3人のフリースタイルセッションが行われた。予定調和ではないその場にしか生まれないもの、酔っぱらったり、ふざけあったり、「こんな感じがフリースタイル。」かっこ良くはないかもしれない。しかしそういうものが、時に人の心を動かし、笑顔にし、忘れられない記憶を刻むこともある。
 「今の音楽シーンは中々言いたいことが言えない、規制規制で言えない世の中だけど、今日ヤバいやつらがいたってことをちゃんと伝えていこうぜ。」岩間は最後にこう言った。その目で確かめなければわからないことが、ライブにはある。
 20150215、紛れもなくこの夜にしか生まれなかった縁をそれぞれの心に残し、『This song vol.3』の宴は幕を閉じた。

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GOMESS セットリスト
1. 箱庭
2. THE MOON
3. brand new day(original by lyrical school
4. アイドルオタクライミング with 黒柳鉄男
5. IN THE HOUSE(original by ライムベリー)
6. し
7. 一歩 ※フリースタイル
8. 人間失格
en. 水星 feat. MC KOSHI、岩間俊樹 from SANABAGUN(original by tofubeats

いつも通りの、特別な夜 - the HIATUS Closing Night -Keeper Of The Flame TOUR 2014-

元記事掲載:音楽情報ブログ『musicoholic』http://bit.ly/2msAX8f

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■いつも通りの、特別な夜

2014年12月22日(月)、the HIATUSがバンドとして初となる日本武道館公演を行った。
この日のチケットは2階席最上段に立ち見席まで用意されたが全てソールドアウト。the HIATUS自体は特に武道館公演をバンドの目標としていたわけではない。それに動員だけで見れば、フェスやイベントでは何万人規模のメインステージを既に何度も埋めている。

しかしことワンマンライブとなると、この規模でのライブは過去一度もない。記念碑としてではなく、あくまでもバンド史上最長となった「Keeper Of The Flame Tour 2014」の追加公演という位置づけではあったこの日のライブだが、ツアーとは一味違う夜を期待し胸を膨らませたファンで、会場は入場前から独特の高揚感に包まれていた。

場内に入ると、日本武道館の中にはいくつものチャリティブースが設置されていた。「東北ライブハウス大作戦」「幡ヶ谷再生大学」「earth garden」「FUTURE TIMES」、そしてカメラマン石井麻木による東北ライブハウス大作戦の活動の様子を収めたミニパネル写真展。東日本大震災以降、ボーカルの細美はよく東北に行くようになった。細美はそれを「ただ何かがしたいという衝動だけ」と言う。そしてそれをまた「自分のため」とも言う。けれど、そうした東北での活動の中で生まれていった人との繋がりという一つ一つの点が、線となって今日この場所へと繋がっていた。チャリティブースも特別を意識したわけではない。ただ、一心不乱に歩んで来た道がここに続いていただけだ。

通路を抜け客席へ出ると、目に入ってきたのはLEDパネルを備えた巨大な漆黒のステージ。さらに大きな透明のスクリーンがステージを隠すように天井から吊るされており、ステージの両サイドには人丈ほどのLEDの柱も14本ずつ設置されていた。

客席は時刻が進むにつれ次々にやってくる人、人、人の波で開演時間の19時を迎える頃にはアリーナから2階の最上段までもパンパンに人が入っていた。これほどの人で埋め尽くされた武道館を見たことがない。

そして開演予定時刻の19時をすこし過ぎた頃、暗転。

最新アルバム『Keeper Of The Flame』に収録されている「Interlude」が静かに流れ出す。すると客席上空から吊るされたスクリーン中央部に小さな光が現れる。その光の周囲を青い光の粒子が次々と漂い、流れ、昇り、落ちていく。目の前に深い海の中のような、幻想的で、静謐な世界が広がる。

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スクリーンの映像に目を奪われていると1曲目、「Roller Coaster Ride Memories」が始まる。伊澤が奏でる重厚なピアノと細美の太く、伸びのある歌声が、心の底に降り積もっていく。曲中も吊るされたままの幕には光の粒子が溢れ、色を変え、形を変えながら、LEDの光の柱とともにステージを染め上げていく。そしてスクリーン越しには、陽炎のように揺れる5つのシルエットが浮かぶ。そして不意に幕が下りメンバーが姿を現すと、割れんばかりの歓声が巻き起こる。

1曲目から火の点いた観客が余韻に浸る間もなく次にプレイされたのは「The Ivy」。不気味な赤い照明が禍々しさを醸し出し、不協和音のような轟音と息を呑むような静寂が繰り返される。そして柏倉の鬼気迫る怒濤のドラミングとストロボのように激しい点滅を繰り返す照明が合わさり、まるでステージが爆発する惑星のように光で燃え上がる「The Flare」、深々と沈んでいく重厚な世界観に引き込まれてゆく「My Own Worst Enemy」と、混沌と美しさの同居したthe HIATUSのシリアスな曲が連続して披露される。

ステージの上の5人は普段通りプレイしているつもりだっただろう。しかし、すり鉢上の広大な日本武道館の空間と次々と色を変えるLEDの照明が、the HIATUSの持つ曲のパワーをより引き出し、拡張していた。

少し間を空けてこの日初めてのMCへ。

「テンション上がり狂ってわけわかんなくなっちゃう前に言っておくわ。今日は俺たちをここ武道館に連れて来てくれてどうもありがとう!」

細美はいつもと変わらない調子で、この日訪れたファンに感謝を告げた。

MC後は一転して「Storm Racers」、「Centipede」、「Monkeys」とmasasucksと細美のツインギターが唸るアグレッシブなナンバーを立て続けに投下。ソリッドなギターは膨張してゆく客席の熱量を受けてダイナミズムを増しながらドライブしてゆく。アリーナエリアではダイブやモッシュが至るところで起こり、フロアの熱もステージと呼応するようにヒートアップしてゆく。

そんな中意外な選曲だったのは「Centipede」だ。1stアルバムに収録されていたこの曲だが、ライブで聴いたのは4、5年ぶりではないだろうか。記憶は定かではないが、おそらく2ndアルバムの『ANOMALY』がリリースされて以降は全くと言っていいほど歌われてこなかった曲のはずである。

エモーショナルなギターの隙間を埋めるように儚く鳴るピアノ。
切なさを内包しながら疾走してゆくメロディ。
喪失をともなった歌。

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And have lost sight of a trinity

3人組を見失ってしまった
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それは単なる歌詞の一片かもしれない。
架空の物語の1ページに過ぎないかもしれない。

それでも、ELLEGARDENが活動を休止した後、the HIATUSとして初めてリリースされたアルバムでこの曲を聴いた時、どうしてもその3人を想像してしまわずにはいられなかった。

しかし、そんな痛みを感じさせるこの曲も、この日の武道館では他の曲と同様に並列に演奏された。それは勝手な想像に過ぎないかもしれない。しかし『乗り越えた』、そう感じさせるような新たな決意を感じた“Centipede”だった。

「おれさ、お前らが楽しそうに笑ってる顔を見るのがこの世で一番好きなんだけどさ。普段だったらさ、こっち(アリーナエリアを指す)にしかねぇんだけど今日はさ、横見ても上見ても。おれ、超好きかもしんないこの景色。」

再びのMCを挟み、細美はギターをアコースティックギターに持ち替え、「Deerhounds」、「Bitter Sweet / Hatching Mayflies」、「Superblock」と3rdアルバム『A World Of Pandemonium』の楽曲を演奏する。

音楽であることにより自由になったこのアルバムは、これまでよりも更に一回り大きなスケールを獲得し、有機的で色彩豊かな音色を奏でている。収録されている曲はどれも瑞々しい生命力に溢れており、まるでたった今この世界に産み落とされたばかりのようだ。

「Superblock」を終えたところで細美から5年ほど前に矢野顕子さんから1通の電子メールをもらったという話がされる。そこには「とても素敵よ」という言葉とともにURLが貼られており、そのURLの先にはある海外のフェスで客席に聴覚障害者の人のためのブロックを作り、手話通訳士の方が音楽に合わせてその聴覚障害者の人達のために手話をする動画が映っていたという。

「今日はそれをやってみようかなと思って、手話通訳者を呼んでいます。」

その細美の言葉を受けステージに招かれたのは、手話通訳士のペン子。
彼女と共に演奏する曲は「Horse Riding」。
跳ねるようなアコースティックギターのサウンドと大地を駆けるようなドラム、流れる清流のように澄んだピアノの旋律が青く、美しい一曲。

そんな「Horse Riding」に合わせてステージの一角で曲に合わせ、リリックの一つ一つを丁寧に手話で伝えていくペン子の一つ一つの所作は、とても緩やかで、穏やかで、そして優雅だった。踊りとはそれ自体何かを表現したものだが、その手話は歌に挟みこまれた祈りを体現した舞いのようだった。

それは雄弁な踊り子のように、歌詞の一つ一つに込められた情景を見る者の瞼の裏に映し出し、伝承される神話のように、人々の記憶に焼き付いただろう。

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Revolution needs a soundtrack
革命にはサウンドトラックが必要だろ
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 細美がそう歌う傍らで、ペン子は右手を胸に当てていた。そして、左手から伸びた一差し指と彼女の眼差しは、武道館の舞台に立つ5人の男達に向けられていた。

晴れやかな「Horse Riding」を終えたところで、細美は再びゲストを招き入れる。
『A World Of Pandemonium』に収録されていた「Souls」で共演を果たし、何度かライブでも顔を合わせているRentalsのJamie Blakeだ。

Jamieを迎えて披露されたのは「Tales Of Sorrow Street」。細美の擦り切れてしまいそうな切実なボーカルに、Jamieの力強いコーラスが重なる。2人の慈しみを纏った歌声がサウンドスケープを描き、会場を包む。ペン子の手話も、我が子に絵本を読むかのように温かく、客席へ語りかけていた。そして続く「Souls」祈りは花開き、会場は祝祭的な幸福感に満ち溢れていた。

2人のゲストを送りだした後、e-bowの不穏な響きが漂う中幕を開けた「Thirst」では、ハイパーなシンセの高速ビートでアリーナは一転してダンスフロアへと変貌し、柏倉の変幻自在のリズムと溶け合いどこにもないカタルシスを生みだした。

そして「Unhurt」へ。この曲ではメンバーへ照明が当てられることはなく、妖しく光る緑と紫の照明が、暗がりに包まれたステージと会場を警戒灯のように照らし続ける。BPMが速いわけでも音数の多い派手な曲なわけでもない。しかし浮遊感のあるシンセ、逞しいベース、確信に満ちたボーカルが、終盤に向かうにつれドラマチックに重なり、加速してゆく。身体の奥底で眠る何かが核爆発を繰り返すように、閉じ込められていた感情が引きずり出されるように、全身が躍動する。それはダンスミュージックの機能ではなく、ロックミュージックの本能で訴えかけてくる。

この曲を初めて聴いた時、細美がこの歌詞を書いているということに大きな衝撃を受けた。

「Unhurt」の歌詞の中にこんなフレーズがある。

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We never know who wins this game again
誰がこのゲームに勝つのかはわからない
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今までの細美なら、きっとここまでしか言わなかったはずだ。

誰がこのゲームに勝つのかはわからない。
明日がどうなるかなんて誰にもわからない。
永遠に続くものなんてない。

この日演奏された「Centipede」の一節もこうだ。

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But who knows the game goes on today
今日もゲームが続くなんて誰が言ったんだ
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今日もゲームが続くなんてわからない 。

だからこそ「今」、その瞬間に命を燃やすことにどこまでも本気な男。
それが細美武士という人間だ。

だが「Unhurt」のラスト、言葉はこう書き換えられている。

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We never knew to win this game again
to win this game again
このゲームに勝てるかなんてわからなかった
勝てるかなんて
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細美はずっと「希望」 を歌ってきた。

それはある意味では、常に孤独や絶望と隣り合わせだったということかもしれない。
でもこの曲は違う。

これは紛れもない「勝利」の歌だ。

一度は全てを失った。この日を迎えられると思わなかった。
ここまで来れるとも思ってなかった。たくさんのことが過ぎ去った。

細美は言う。「今でも一人で何でもできると思ってる。」
だが己の信念を曲げず、貫き続けてきた道を振り返れば仲間がいた。
目の前には数えきれないほどの笑顔があった。
屈服させられたこともあった。
でも結局そのまま、まるで無傷だ。

幾多の困難を乗り越えてきた男達の勝利の歌が、超満員の日本武道館に掲げられた。

そのまま「Lone Train Running」へと続く。
もっと遠くへ、どこまでも遠くへ。
ここまで辿り着いた。でもまだ先がある。もっと遠くへ。
masasuksのギターソロは、停滞を許さないように、焦燥感と切迫感を内包しながら激しく刻まれていく。
そしてサビの「Away now」の大合唱は、このバンドとならどこまでも行けるというオーディエンスの信頼がそのまま表れたかのような希望に溢れていた。

「この年まで生きてくると、わりかし先にあの世に逝っちまった仲間がいて、また一人また一人と増えていくんだけど、多分お前らもそうだと思うんだけど。まあ今日ぐれぇはここに来て一緒に聴いててくれるといいなと思っています。まあそのうちおれらも行くからよっていう、そんな歌です。」

そんな細美のMCを受け歌われたのは「Something Ever After」。永遠に続くものなどない。

真っ暗な夜の海を照らす灯台のように、両サイドのLEDの柱の底から、温かいオレンジ色の光の玉が浮き上がる。寄り添うような慈愛と寂寥の宿る細美のボーカルに観客は息を呑む。

いよいよライブはラストスパートへ。「Insomnia」では「Save me」と再び大合唱が起こる。
観客はthe HIATUSの音楽に自分たちの抱える言葉にならない、発露できないエネルギーを乗せて、この世界に放出する。

続く「紺碧の夜に」ではアリーナエリアではダイブやモッシュ、サークルがあちこちで発生していた。しかしそんなアリーナエリアでもスタンディングエリアでも、オーディエンスの表情はみな笑顔で輝いていた。

そして本編の最後に歌われたのは「Save The World」のアナグラムが隠された1stアルバム『Trash We’d Love』のリードトラック「Ghost In The Rain」。the HIATUSの曲として初めて発表された曲だ。水面を走るような流麗なピアノに導かれ、温かい日差しが世界に広がっていくように、場内は光に覆われる。

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I’m a ghost in the rain The rainbow
You can’t discern I’m standing there
Ghost in the rain The same old
You carry on
The world will find you after all

僕は雨に立つ亡霊

君は僕を見分けられない
雨に立つ亡霊
変わらぬもの
君はそのまま進むんだ
やがて世界が君を見つけ出す
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初めは孤独を歌った曲のはずだ。
しかし歌われるほどに、この曲は希望に変わる。

「君はそのまま進むんだ」
「やがて世界が君を見つけ出す。」

ゼロから始まったthe HIATUSの5年間。

その始まりの1曲は彼らのここまでの道程が間違っていなかったことを証明するかのように、強烈な閃光のように眩しく、鳴り響いていた。

爆発して砕け散ったガラス片のようなキラキラとした輝きと硝煙のように燻る熱と余韻を残し、5人はステージを去った。

本編終了後も観客の興奮は冷めやらず、メンバーが去るや否や即座にアンコールが巻き起こる。

そんなアンコール1曲目、「Twisted Maple Trees」。リフレインするギターと細美の静かなボーカル、そこにピアノ、ベース、ドラムが重なり合っていき、曲のラスト5人の激情は収束し一つになる。

エルレが止まったおかげでこいつら(the HIATUS)に出会えた。震災が起きたおかげで新しい仲間ができた。本当なら”せいで”って思うことかもしれないけど、前向いて生きていこうぜ。そうやらないと生きていけないっていうのもあるけど、あれたちみたいな馬鹿野郎は、お前らもだよ?、下向いて落ち込んでたってしょうがないんだよ。バカみたいに笑って生きていこうぜ。」

そうして歌われたのは「Silver Birch」、仲間の歌だ。弾むようなピアノはワクワクするような高揚感を生み、この日、この場所に集まった全ての仲間達とともに、今日という日を祝っていた。

しかしまだアンコールは終わらない。それは素晴らしいライブの余韻をいつまでも感じていたい、今日という日を終わらせたくないというファンのささやかでわがままなお願いのようでもあった。けれどその想いはメンバーも同じだったのか、5人はこの日三度目となる姿を現す。

最後の1曲に選ばれたのは「Waiting For The Sun」。柏倉のドラムはまるで生き物かのように凄まじい手数でありながらも変則的かつ気まぐれで、かつマシンのように正確にリズムを作りあげてゆく。客電は点いたまま、「WOW WOW WOW」と言葉にならない叫びは一人一人を繋ぎ、強固な一体感を生み、大きなうねりとなって会場をわたった。

こうして約2時間弱のライブは大団円を迎えた。

ステージを去り行く5人に向けられた惜しみない拍手は、いつまでも、いつまでも鳴り止まなかった。

これは特別なライブではない。
勝ち負けのある闘いでもない。
本人たちにもそのつもりはない。
どこかの街の小さなライブハウスも、日本武道館も、やることは同じだ。
ただいつもより少し会場が大きくて、少しだけ人の数が増えた、それだけのことだ。

それでもこの日の武道館のライブを見て、the HIATUSのこれまでを振り返らずにはいられなかった。

細美はthe HIATUSの一員となり、作曲のスタイルを変えた。
『A World Of Pandemonium』では、メンバーとのセッションから生まれた種を大切に育て上げるように曲を生み出していった。
いつからか柏倉のことを「柏倉くん」ではなく「隆史」と呼ぶようになった。

伊澤は堀江が抜けた後、サポートではなくバンドのより中核を担う存在として「ミュージシャン」ではなく「バンドマン」として、タフな全国ツアーを仲間とやり遂げた。

スペースシャワーTVで放映された「Keeper Of The Flame TOUR」のドキュメンタリー番組の最後、ナレーションを務めたBRAHMANTOSHI-LOWは「the HIATUSは(このツアーを通して)バンドになったんだな」と言って締めくくった。

今回のツアーのチケット代は2600円。
「このままじゃ会社が潰れます。」そう言われた細美は、スタッフの人数を可能な限りなく少なくするために、機材車の運転から機材の搬入・搬出までも自分で行っていた。

前回のHorse Riding TOURのチケット代は2500円。
「100円値上がりしちまってごめんな。」細美はラジオでファンに謝っていた。

1stアルバムから4thアルバムまで万遍なく取り入れられたセットリスト。
会場内に設けられたいくつものチャリティブース。
ここまで共に歩んで来たメンバー、スタッフ。
日本中から集まったファン。笑顔。
来たくても来れなかった人達も沢山いただろう。

その全てが、始まりのあの瞬間から、今日この瞬間まで積み重ねて来たものだ。

振り返らずに走り続けてきた5年間の旅の間、自分たちに対し、ファンに対し、音楽に対し、誠実で真摯であり続けた。時に愚直なまでの揺るぎない信念を貫き続けたバンドの軌跡が、この日の武道館にはあった。

「でかいとこでやるたびに思うんだけど、似合わないおれたちには。LEDも似合わないし。武道館はやってみて凄い楽しくて好きになったけど、やっぱりお前らまでは遠いし。だからまた、どっかの町のきったねぇ路地裏で会いましょう!」

最後の最後、マイクを通さず肉声で叫ぶ細美の声は、2階席の最も遠くはなれた場所に立つファンの元へもはっきりと届いていた。

別に武道館だからなんだ。
感傷的なムードもない。
振り返るなんてしみったれているかもしれない。

彼らは変わらない。
これまでも、きっとこれからも。

それでもこの日、the HIATUSというバンドは見せてくれた。彼らの生き様を。
今まで歩んで来た道程が間違っていなかったことを。

2014年12月22日。
いつも通りの5人が見せた、いつも通りの、
でもほんの少しだけ、特別な夜だった。

 

12月22日(月) the HIATUS Closing Night –Keeper Of The Flame TOUR 2014- @日本武道館
1. Interlude
2. Roller Coaster Ride Memories
3. The Ivy
4. The Flare
5. My Own Worst Enemy
6. Storm Racers
7. Centipede
8. Monkeys
9. Deerhounds
10. Bitter Sweet / Hatching Mayflies
11. Super Block
12. Horse Riding
13. Tales Of Sorrow Street feat. Jamie Blake
14. Souls feat. Jamie Blake
15. Thirst
16. Unhurt
17. Lone Train Running
18. Something Ever After
19. Insomnia
20. 紺碧の夜に
21. Ghost In The Rain
encore1
22.Twisted Maple Trees
23.Silver Birch
encore2
24.Waiting For The Sun

www.youtube.com

 

新たなS.T.A.G.Eへ - lyrical school one man live 2014@LIQUID ROOM

元記事掲載:音楽情報ブログ『musicoholic』

【ライブレポ】lyrical school one man live 2014@LIQUIDROOM : 音楽情報ブログ『musicoholic』

■新たなS.T.A.G.Eへ

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2014年11月2日。ヒップホップアイドルグループlyrical school(通称リリスク)の今年2度目となるワンマンライブが開催された。会場は恵比寿LIQUIDROOM。前回2月に行われたワンマンライブの会場だった渋谷WWWからキャパシティはおよそ2倍以上。当初このライブが発表された時、「本当に埋まるのか?」と懐疑的な見方をする人も少なくはなかった。しかし、当日は若干数の当日券も販売されたが、最終的には完売。会場は最後方まで人で埋め尽くされ超満員となった。

 開演30分前の16:30頃、この日オープニングDJを務める九州のアイドルグループLinQ深瀬智聖がステージへと現れる。以前、新宿MARZで行われた『PARADE』のリリース記念イベントにも彼女は出演しており、“S.T.A.G.E”では競演を果たしていた。アイドル界きっての日本語ラップリスナーでもある彼女が最初にかけた1曲目は、EVISBEATSの“揺れる feat.田我流”。熱気と期待が充満したフロアをほぐすかのようなメロウなムードが会場を包む。その後も比較的ゆったりとしたチルな楽曲が続くが、今か今かと爆発を待つ会場との客席の反応を見てか、SUGAR SOULの”今すぐ欲しい”をプレイ中に深瀬は「やっぱこの曲やめるね」と言い途中でKICK THE CAN CREWの”スーパーオリジナル”へとチェンジ。その後は一転攻め曲選曲で客席を沸かしていく。それに呼応するように、フロアも徐々に熱気を帯びていく。時折自身のプレイが今日はイマイチだとこぼす一幕もあったが、終止会場を縦に、横にと揺らし、最後は再びセンチメンタルな楽曲で短い時間ながらもDJタイムを締めくくった。

 前回の渋谷WWWでのワンマンライブの際、同様にオープニングDJを務めたNegiccoのMeguがアイドルソング中心のセットリストだったのとは対象的に、この日の深瀬は終止硬派なHIPHOP中心の選曲だった。だが『PRIDE』というラップチューンをリリースした今のリリスクのモードには、深瀬は適任だったのではないだろうか。HIP HOPのグルーヴの余韻を残し、本日のメインアクトへとバトンを渡して彼女はステージを降りた。 

 

【DJ CHISEI セットリスト】

EVISBEATS / 揺れる feat.田我流

Chara x 韻シスト / I don’t know

RYMESTER / ちょうどいい

SUGAR SOUL / 今すぐ欲しい

KICK THE CAN CREW / スーパーオリジナル

餓鬼レンジャー / ラップ・グラップラー餓鬼

ラッパ我リヤ / Check 1,2

韻踏合組合 / 一網打尽(Remix) Feat. NORIKIYO,SHINGO★西成,漢

SALU / ホームウェイ24号

RIP SLYME / ONE

Charisma.com / Mr. BEER

 

そして開演時刻の17:00。照明が落ちる。

この日のライブのチケットが一番最初に発売されたのは、今年4月に大宮ステラタウンで行われたメンバーmeiの生誕イベントの時だった。最も早くチケットを手に入れたファンからしてみれば、数えれば半年以上。

「この日が来るのを待っていた」

 それはメンバーだけでなく、ファンも同じだった。バックスクリーンに楽屋口からステージへと向かう6人の姿が映し出され、暗転。 

「ナナナナナ ナイスなスクールって誰?」

点滅する激しいフラッシュと共に、アカペラの”brand new day”が場内に響き渡る。この日集まった約1000人の観客は、全員彼女達を見にきたのだ。皆その名を知っている。

リリカルスクール!!!!!!』

ヘッズ(リリスクのファンの呼称)の大歓声と共にリリスク史上最大規模のライブは盛大に幕を開けた。

“Myかわいい日常たち”ではyumiが一瞬顔を下に向け、涙をこらえているような場面もあったが、次に顔を上げた時は満面の笑みで客席を見つめていた。“決戦はフライデー”では歌詞を「決戦のリキッドルーム」と変えるアドリブを見せるなどmeiも絶好調だ。見た事のない数のファンを前に、驚きと喜びと、時折襲ってくる感傷をないまぜにしながら、その全てを塗り替える笑顔のステージがそこには広がっていた。

その後も次々と、全てフル尺で休む事なく曲が畳み掛けられる。バックDJを務めるマネージャーの岩渕の繋ぎも滑らかで、ショートフィルムを見ているかのように情景が移り変わってゆく。
ノンストップで8曲連続歌ったところで、ようやく最初のMCへ。

しかし、自己紹介もそこそこに、すぐさま続いての曲へと彼女たちは進む。

リリスクは普段のインストアイベントでもMCを最小限しか行わない。MCを通して滲み出る彼女達のパーソナリティもリリスクの魅力だと思うが、それ以上に、曲とステージで見る人を惹きつけたい、惹きつけられるという自信が今の彼女達にはあるのだろう。そんな彼女達の気概を代弁するかのように、岩渕もその手を休めることなく曲を繋いでゆく。
MC明けはアーバンな夜の雰囲気へと誘うメロウなパートへと進む。

“しってる/しらない”では曲終盤からメンバー全員がステージの前方の淵に座り、肩を寄せ合い歌い始める。そしてそれに呼応するように、誰が言い出すわけでもなくファンも前方から座り始める。ギュウギュウのライブハウスで、ファンも肩を寄せ合う。 

“抜け駆け”を歌い終わったところで、少しの静寂の後、6人の口からそれぞれ、これまでを回想するモノローグが始まる。

最後に、リーダーのayakaが言う。

今は胸を張ってこう言える

「ラップをするのは楽しいです」

最初は韻が何かもわからなかった。それどころかラップを聴いたこともなかった。そんな彼女達が、幾多のステージを重ね、その楽しさを身を以て体現してくれる、教えてくれる。現在の自分たちを肯定した全能的な”FRESH!!!”は客席を一瞬で沸騰させ、最大幸福値を毎秒更新していくような興奮と喝采の坩堝へと巻き込んでいった。

そして”リボンをきゅっと”→”PARADE”→”プチャヘンザ!”とこれまでリリスクに多くの楽曲を提供してきたtofubeatsの曲が連続してプレイされる。どんな楽しいパーティーもいつかは終わる。でもだからこそ、一瞬一瞬を愛おしく思える。ハンドクラップにコール、振りコピ、そう言ったアイドル然とした楽しみ方に加え、聴き手それぞれが思い思いに流れる音楽に身を委ね、手を掲げ、体を揺らし、心を弾ませる。リリスクが築きあげてきたIDOL RAPのステージが客席をロックしていく。

出会ったときからダンスをする運命なのふたりは

(プチャヘンザ!)

アンセム、”プチャヘンザ!”でライブは一度目のクライマックスを迎える。

しかしこの日はここで終わらない。再びセンチメンタルでゆるやかなセクションへと曲は紡がれてゆく。

この日、滅多に歌われることのなかった曲が歌われた。tengal6時代にリリースされた『CITY』に収録されている“bye bye”だ。上品なジャジーヒップホップにパーティーの終わりを描いたこの曲は、過去にメンバーの卒業ライブなどの機会でしか歌われたことのない曲だった。そのせいか、この曲はどこか特別な意味を持ってしまい、その後普段のライブで歌われることはなかった。

この日、”Akikaze”と”ひとりぼっちのラビリンス”に挟まれる形で、あくまでも切なさや寂寥感を歌った1曲として、グラデーションのように流れていく物語のワンシーンとして歌われた。

この曲のテーマは別れだ。刻一刻と迫るその時が頭をよぎると胸が苦しくなる。でも今日は違う。

「さようなら」ではない、「またね」

また必ず会える。

この日の”bye bye”はそんな確信に満ちた、幸福な”bye bye”だった。

ライブ終盤、“photograph”のイントロが流れる。すると場内のいたるところで次々とサイリウムが焚かれだす。「photographのイントロでリキッドルームを6色のサイリウムで染める」。有志のファンが用意したサイリウムによる、メンバーにも運営にも内緒で用意されたサプライズ企画だった。これまでメンバーの生誕イベントの時などでは、そのメンバーのイメージカラーに客席が1色に染まることはあった。

しかしこの日は6色。ファンからメンバーへ日頃の感謝の気持ちを込めて。

イントロが終わり客席へ振り返った時、6人は皆、目を大きく見開き驚いているようだった。それ以上の感情は歌に溶けていったが、あの瞳にはどんな景色が広がっていたのだろうか。

VJのホンマカズキも急遽のサプライズのサイリウムの演出にも関わらず、バックスクリーンに輝く客席を移す粋な演出を見せていた。
けれど、それをステージから肉眼で見ることができる特権は彼女達だけのものだ。それはこれまで歩んで来た道程への、ささやかなご褒美だったのかもしれない。

また、“photograph”の間奏では毎回meiがフリースタイルを行い、その日のライブに関することや彼女の気持ちを、歌詞を変えて歌うのが定番となっている。この日は当初、4月に行われた自身の生誕イベントで披露した彼女による作詞曲、「一人じゃないよ」のリリックを披露するはずだったようだ。(ライブ翌日のmeiのブログを参照:この日が来るのを待っていた|芽依オフィシャルブログ「芽依の夢旅」Powered by Ameba

しかしフリースタイルの最後、目の前に広がる沢山のヘッズと6色に輝くフロアを見てか、言葉を詰まらせながら彼女は予定されていなかった言葉を絞り出した。

言葉にできない

本当にありがとう

個人的な意見だが、meiはボキャブラリーが豊富なわけでも、特筆してラップが上手いというわけでもないと思っている。

けれど、彼女の言葉は、いつもストレートに胸に突き刺さってくる。

それはきっと、彼女の言葉からは彼女の想いが伝わってくるからだ。 

想いを伝えるために大切なことは何か、

それは「心を込める」ことだ。

あの瞬間、彼女の胸の内を満たしたのは感謝の気持ちだったのだろう。
だからこそ予定調和ではなく、土壇場で、最後の言葉を変えた。
衒いのない、実直で真っすぐな言葉は、彼女の心をそのまま映していた。飾り気のないありふれた言葉は、世界中のどんな言葉を集めても足りない、想いの結晶だった。

滲む視界と頬をつたう熱いものに胸を焦がしながら、ライブは終幕へと加速してゆく。

そして迎えた本編ラストは最新曲”PRIDE”。IDOL RAPとして覚悟と誇りを歌ったこの曲では、フロウとライミング、培ってきたラップのスキルでフロアを湧かせていた。途中のブリッジではリリスクのライブでは初めてではないだろうか、前方エリアでモッシュが起こるなど客席の熱狂もクライマックスを迎える。天に突き上げた拳はかつてない熱気を纏い、本編は幕を下ろした。

ヘッズの鳴り止まないアンコールを受けて、ライブは延長戦へと突入。 

「Drums please!!」

アンコール1曲目を飾るのは”そりゃ夏だ!”。季節外れのサマーソングは、問答無用に客席にジリジリとした熱気と夏の陽気を運んでくる。続いてこの日初披露された”wow♪-okadada remix”では、普段客席を煽ることのない未南が間奏で「セイ wow wow wow!!!」とハイテンションで客席にコールアンドレスポンスを要求するなど、盛り上がりはアンコールへ入ってもとどまる事を知らない。

そしてオープニングDJだった深瀬をステージへと迎え入れ、1年越しに揃った7本のマイク。完全版の“S.T.A.G.E feat.深瀬智聖”。約1年半前、新宿MARZで競演した際は率直に言って深瀬がリリスクのメンバーを圧倒していた。ステージでの胆力から立ち振る舞い、ボーカルからラップのスキルまで、ほんの1ヴァースだがレベルの違いは明らかだった。

しかしあれから一年、深瀬と肩を並べたメンバーは、深瀬に飲み込まれることなく、互いにアジテートし合うように客席を共に揺らしていた。 

彼女達の持ち曲のほぼ全てが歌われたのではないだろうか、そう思っていた矢先、耳馴染みのない、でもどこかで聞いたことのあるピアノのメロディが空気を震わせる。

 “6本のマイク”。

『CITY』にてメンバーが自ら作詞に挑戦した楽曲だ。

元々は卒業したmarikoとerikaを含めたtengal 6時代の楽曲だが、この日のためにhinaとminanだけでなく、ayaka,ami,mei,yumiの4人も歌詞を新たに書き下ろしていた。

バックスクリーンには彼女達の手書きの文字と思われるリリックが、それぞれのヴァースで映し出される。

知らないことばかり 謎だらけ

助けてくれた みんな笑って

(hina)

退屈な日々を抜け出したくて

リリカルスクールの門を叩いた

(minan)

one for all, all for one

チームリリスクNo.1

(ami)

RAPするのは難しい

そんなひとときも 懐かしい

(ayaka)

6マイク プラス 2マイクで

作ったストーリー 一生一緒に

(mei)

みんなの夢が わたしの夢

(yumi)

そのどれもが、今の彼女達でなければ書けないリリックだった。

他のアイドルも同様だが、リリスクはほぼ全ての曲で歌詞が提供されている。
他の誰かの書いた歌詞に、自分の感情を移入していく。それは

「言葉に想いを乗せる」

という行為だ。

 けれど、”6本のマイク“で彼女達は自らの手で作詞をした。それは、

「想いを言葉にする」

ということだ。

minanは自身のパートで込み上げてくるものをこらえきれなかった。

言葉という器から零れ落ちた感情は涙となり、彼女の頬を濡らした。

それほどまでに、彼女達が自ら選んだ言葉には、強い想いが込められていた。

それは”photograph”のmeiのフリースタイル同様、彼女達の心を映し出す鏡となり、きっと、この日あの場所にいた人達に届いているだろう。

途中ayaka,mei,yumiと3人連続で歌詞を一部飛ばすシーンもあったが、拍子抜けするような気の置けなさが、また、彼女達らしくもあり微笑ましかった。

この日MCらしいMCはほとんどなかったが、この”6本のマイク”のリリックが過去を、今を、そして未来を語っていたように思う。

オーラス”tengal 6-アコースティックver.”の優しいメロディに包まれ、2時間半に及ぶリリスクのリキッドルームでのワンマンライブは途方もない充足感と心地いい疲労感とともに終わりを告げた。

リキッドルームでのワンマンライブを成功させたのも束の間、先日、最新シングル『PRIDE』でオリコンウィークリーチャート9位という順位を獲得した。リーダーのayakaのBirthday Partyでmeiの言った言葉が現実のものとなった形だ。

リキッドルームでのワンマンライブの大成功とオリコンウィークリーチャート9位。
今、大きな追い風がリリスクには吹いている。では、このまま彼女達はスターダムに駆け上がっていくか、そう聞かれると現実はきっとそんなに甘くはないのだろう。

今年の夏、ROCK IN JAPAN FESやSUMMER SONICといった日本を代表する音楽フェスに出演した彼女たちだが、夏を終えて彼女達の現場に変化が起きたかと言えば、目に見える大きな影響は見られなかった。青山CAYで開催されたリーダーayakaの生誕も新代田FEVERで行われたメンバーyumiの生誕イベント(平日だったが)も横浜みなとみらいで行われたクルージングパーティーも、全てのライブがSOLD OUTしなかった。メンバーのyumiも自身の生誕時に「夏を終えて成長した気がしたけど、あんまり何も変わらなかった」と言った趣旨の発言をしていた。

でも今回の結果は目に見える形で、少しずつ、確実に、前に進んでいることを教えてくれた。一見意味のないように見えることも、見てくれている誰かは必ずいる。

この日披露された全33曲。初めてのミニアルバム『まちがう』から最新曲『PRIDE』まで。

ちょっと振り返ってる

でもねdon’t stop 次が待ってる

扉あけ 向かう新たなステージへ

まだまだ これから

(6本のマイク)

2年前に生まれたこの曲も、色褪せることなく、今を歌っている。全ての点と点と点と点と点と点は繋がっていく

 ワンマンライブの最中、来年の春にニューアルバムが発売されることが発表された。

リリスクはこれからどこへ向かうのだろうか

それは誰にもわからない。 

なぜなら彼女達はこれまでだって、誰も歩んできたことのないIDOL RAPという道を切り開いてきたのだから

 これからも、きっと誰も辿り着いたことのないような場所へと向かうのだろう。その先に、もっと素敵な景色が待っていると信じて

震える手・心臓 やっぱ怖い

そんな時は

ねぇ一緒に行こう

この日meiが言えなかった言葉

「いつでもここが みんなの居場所」

手を取り合って 歩き出そう

新たなステージへ

次が待ってる 

 

セットリスト

1. brand new day

2. tengal6

3. Myかわいい日常たち

4. 決戦はフライデー

5. perfect☆キラリ

6. Maybe Love

7. ルービックキューブ -Fragment remix

8. もし

9. fallin’ night

10. しってる / しらない

11. でも

12. P.S

13. まちがう

14. 流れる時のように

15. 抜け駆け

16. FRESH!!!

17. リボンをきゅっと

18. PARADE

19. プチャヘンザ!

20. わらって.net

21. Akikaze

22. bye bye

23. ひとりぼっちのラビリンス

24. ケセラケセラ

25. Sing,Sing

26. おいでよ

27. photograph

28. PRIDE

EN.

1. そりゃ夏だ

2. wow♪-okadada remix

3. S.T.A.G.E feat.深瀬智聖

4. 6本のマイク

5. tengal6-アコースティックver.

うつむきがちだった君がもっと笑えるから - lyrical school one man live 2014@渋谷WWW

元記事掲載:音楽情報ブログ『musicoholic』

lyrical school one man live 2014@渋谷WWW : 音楽情報ブログ『musicoholic』

■うつむきがちだった君がもっと笑えるから

タワーレコードが設立したアイドル専門レーベル、T-Palette Recordsに所属する6人組HIP HOPアイドルユニットlyrical school(通称リリスク)。

昨年8月に麻布十番 VILLAGEで行われたワンマンライブ以来、約半年振りとなった今回のワンマンの会場は渋谷WWW。前回のワンマンは未南さんが新メンバーとして加入してまだ間もないこともあったからか、もちろんアルバム先行試聴に新曲初披露、彩夏さんの生誕サプライズもあり楽しいライブには違いなかったが、個人的には出色の出来と言うようなライブではなかった印象を持った記憶がある。

しかしそれから約半年、継続的なライブへの出演や短期間で多くのミニライブが続くリリースイベント、バスツアー・地方遠征、そしてアルバム「date course」のリリースツアーファイナルではtofubeats、Fragment、餓鬼レンジャーイルリメ呂布、okadada等との競演と多くの場数を経験し、「今の6人のlyrical school」としての一体感やグルーヴは確実に増していった。

特に昨年末のT-Palette感謝祭2013では「ゆるいラップ」のイメージを打ち破る熱くエモーショナルなステージを見せ、ヘッズ(リリスクのファンの呼称)だけでなく、あの日会場にいた多くのアイドルファンをも巻き込んでいた。ラストの”photograph"で会場の多くのファンがペンライトやタオルを掲げ、その景色を見たリーダーの彩夏さんが涙してしまうほどに。その日のライブの模様はこのワンマンの前日にUstreamでも放送され、画面越しにも見ていた多くの人の心を打った。

そして2月7日決戦のフライデー。チケットは前売り、当日券を含め完売。今のリリスクに対する注目、期待がいかに大きかったかがわかる。

この日のライブは、開演前DJとしてNegiccoのMeguさんが登場。自身もアイドル好きであることを公言しているMeguさんだが、この日もアッパーなアイドルアンセムを畳み掛けていく。Dorothy Little Happy "デモサヨナラ"、Negicco "圧倒的なスタイル"、9nine "SHINING☆STAR"、ももいろクローバー ”走れ!”、RYUTist "ラリリレル"、アップアップガールズ(仮)"アッパーカット"など名曲を次々と投下していく。

楽しそうに卓の前で飛び跳ねるMeguさんを見ていると、つまらない自意識をこじらせるよりも、目一杯その瞬間を楽しむ事の大切さを感じさせられる。

彼女の持つ天性のポジティブさはDJの時でさえ、見ているだけで楽しい気持ちにさせてくれた。フロア全体の盛り上がりとしては(皆リリスクの出番に体力を温存してたか、アイドルファンではない人が多かったのか、それとも"ももクロで盛り上がるわけには…"という自意識と格闘していたのか、はわからないが)まずまずといった感じだったけれど、それでも皆思い思いに身体を揺らし、ある人はお酒を呑み、ある人はあーりんわっしょいしたりと、特別な夜に花を添えるには十分なステージだった。
そしてDJ Meguのゲストプレイは小田和正 "ラブストリーは突然に"のRemixにて幕を閉じた。
※僕が会場に着いた時には既に"デモサヨナラ"がかかっていたけれど、その前にtofubeatsサ上とロ吉などHIP HOPもかけていたみたいです。セトリな情報あれば教えて下さい。

そしていよいよlyrical schoolの出番。ステージ袖からいつものメンバーのあのかけ声が聞こえてくる。1曲目"Myかわいい日常たち"のイントロのロングエディットで本編はスタート。会場に普段より長く響き渡る手拍子が、この夜の特別さを教えてくれるようだった。そこから立て続けに"リボンをきゅっと"、"PARADE"をプレイ。イベントやミニライブでも定番の楽曲に会場は早くも沸点に達しそうな程の熱気が立ちこめる。続く"tengal 6"ではJackson 5 "I Want You Back"のサンプリングによりオリジナルよりも更にゆるやかに、ゆったりと会場を揺らす。「そんな飛ばして大丈夫か?」と余計な心配をしてしまう程のキラーチューンの連続。

最初のMCを終え、芽依さんの「(冬だけど)久しぶりに夏を味わいたいよね!」という一言の後、そこにはサングラスをかけたプリンセスが。「Drums Please!!」真冬の渋谷を一気に夏模様に変えるリリスクの代表曲の一つ"そりゃ夏だ!"。コール&レスポンスの応酬にフロアの温度はますます上昇していく。そんなジリジリと照り着ける夏の日差しからトロピカルな熱帯夜"wow♪"へ。この曲は久しぶりに聴いた気がするけれど、腰をかがめ、七輪の上にあるであろう秋の味覚的な何かをパタパタとするひなちゃんが相変わらず妙にサマになっていて、あの、凄く可愛かったです。

そこからはメロウな中盤戦へ。"perfect☆キラリ"、"fallin' night"、"もし"、"苺のショート"、”決戦はフライデー"、"Maybe love"、"ルービックキューブ"とtengal時代の曲を中心にノンストップで一気に駆け抜ける。tengal6時代の曲は、聴いてすぐに跳ねたり、飛んだりできるようなフィジカルに訴えかけてくる曲は比較的少なめである。今のような明るいパーティーの印象よりも、夜を感じさせる、しっとりと聴かせるような雰囲気のある曲が多かった。もし全ての曲をフル尺でやっていたら、序盤で暖まった身体が冷めてしまったかもしれないし、お客さんは少しダレてしまっていたかもしれない。
しかし、ミドル~スローテンポな曲をショートRemixで繋ぎグラデーションのようにムードを変化させることで、リズムを切らすことなく、普段のライブでは中々やらない曲でもしっかりとお客さんを惹き付けていた。"ルービックキューブ”ではアカペラから始まり、1サビ終わりにFragment remixへと転調するニクい演出を見せ、リリスク改名以降強くなった、”ポジティブでハッピーな一面”だけじゃないところを見せられたはずだ。

再びMCタイムがあり、未南さんの「流れる時のように、一分一秒、瞬間瞬間を刻んで、皆さんと大切な時間を作っていきたいなと思います。」という言葉から、ドリーミーな"流れる時のように"へ。浮遊感のあるトラックに次々と景色の変わる街を飛ぶリリック、昼から夜へと場面展開する彩夏さんのポエトリーリーディング。日常に溢れるワンシーンを切り取ったこの一曲は、当たり前の普段の生活の中に隠れた〈素敵なもの〉と、流れ続ける時間の一抹の寂しさを胸に感じさせる。続く"P.S"ではこれまでとは打って変わり笑顔もダンスもなく、失恋した女性の切なさを綴っていく。裕美さんと麻未さんのファストラップは、何度聴いてもこの曲のハイライトになるほど、胸に迫る。そして曲終わり、芽依さんの「私の目に涙は似合わない。だから"わらって.net"。」という一幕から最新シングル”わらって.net”が披露される。泣かないで、笑って、という”P.S”からの繋ぎになんだか無性に泣けてきた。日常の、インターネットの、小さな箱の中の、小さな決意。繊細な心情を歌った、この曲は聴く人の背中をきっと押してくれたはずだ。

そして遠くから、“おいでよ”のイントロが聞こえてくる。

この曲が持つ圧倒的な幸福感。何者も拒まない、この場所に来れば、うだつが上がらない毎日でも、笑顔になれる。笑顔をもらったその夜は、明日への活力になる。うだつが上がらない毎日でも、笑顔にかえられる。この曲にはリリスクのライブで感じる心地良さ、肩肘張らず、流れる音楽にその身を任せ、ステージに立つ6人を見てもらえる笑顔、元気、ポジティブなエネルギーが凝縮されている。時に降り掛かるやるせない出来事から、手を差し伸べて救い出してくれる。”わらって.net”の時点で涙腺が刺激されていたのだが、”おいでよ”でもうるうる来てしまい、心底楽しいにも関わらず涙をこらえるのに必死だった。なんでこの曲を聴くとこんなにも泣けてくるのか。 

「こんなところに紙が!」とポケットから小さな紙切れを出した裕美さんから4月2日にニューシングル『brand new day』のリリースが発表される。新曲の発表はある程度予想はしていたが、作詞作曲をLITTLE、NATSUMENAxSxEが手掛けるのには驚いた。芽依さん曰く「みんな世界が変わっている」その季節、新曲を聴ける日が待ち遠しい。

そして本編ラストの"photograph"へ。リリスクのライブの鉄板曲であるこの曲だが、このワンマンからダンスの振りが一新されており、より歌詞に添い、曲のメッセージを伝えるようなものに変わっていた。ファンの中でも定着しているこの曲の振りを変えるというのは、ある意味勇気のいることだったと思う。しかしそれは、これからもリリスクは止まらず進化し続けるというメッセージなのかもしれない。ラストの大サビではマネージャー兼DJの岩渕さんがボリュームを落とし、マイクを預けてくれる彼女たちの信頼に答えるヘッズの大合唱でWWWは一つになった。

振りは変わったものの、曲が終わった後のMCで芽依さんが「振りは新しくなったけれど、サビはみんな
手を振って欲しいな。」というような発言をしていたので、これからもこの曲がライブを引っ張っていくのは間違いないだろう。

本編はここで終了するも、メンバーが袖にはけるや否やすぐに起こるアンコール。

アンコールが5分程続いた後、再びステージに現れたメンバー。

6つのバックシルエットが暗闇に浮かぶ中、披露されたアンコールの1曲目はまさかの”S.T.A.G.E”だ。『PARADE』 の初回限定盤に収録されていたこの曲だが、リリースイベント以降、耳にする機会はほとんどなかった。しかしこの日、未南さんの新しいリリックが書かれ、新しい”S.T.A.G.E”として蘇った。久々の”S.T.A.G.E”に客席のヘッズも異様な盛り上がりを見せていた。これからこの”S.T.A.G.E”もライブのレパートリーに加わるのであれば、セットリストの幅もグッと広がるだろう。

アンコール2曲目にはこの日二度目となる”tengal 6”をオリジナルヴァージョンで再演。途中オープニングDJをしたNegiccoのMeguがMC Meguとしてステージに登場し、リリスクの7本目のマイクとして自己紹介ラップを披露した。「ラップ憧れ系女子」や「スマイル100%」と言った本人が選んだワードを盛り込んだオリジナルのリリック。そんな彼女の明るい陽性のキャラクターを書いたのは岩渕さんと言うのだから本当に多才な人だ。また、LinQ深瀬智聖さんが”S.T.A.G.E”でラップを披露した際も、その歌唱力の高さに目が冴えるような感覚があったが、Meguさんにおいても、初めて歌うとは思えないほどラップが上手い。11周年目を迎えるNegiccoで培ったスキルと経験が表れたパフォーマンスだった。

ひなちゃん「皆さん、まだ聴いていない曲ありますよね?聴きたいですか?」
ヘッズ「おぉー!」
ひなちゃん「全然足りないです。聴きたいかー!?」
ヘッズ「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

皆わかってる。声に力が込もる。まだあの曲をやっていない。
オーラス、“プチャヘンザ!”

「出会った時からダンスをする運命なの二人は」


運命が本当にあるのかどうかなんてわからない。でも、そうだと信じた方が、ドラマチックだし、ロマンがある。ただそれだけで、同じ景色だって違って見えてくるじゃないか。

最後のMCで彩夏さんが「lyrical schoolは一つ一つ次のステップへと進んでゆきます。次に目指す場所は、恵比寿の”あの場所”です。」と語る。それを見たひなちゃんが裕美さんの新曲のリリース発表を真似し「あれ、こんなところに紙が・・・な〜い」とアドリブをぶっ込み、一瞬本当に信じた彩夏さんに怒られる場面もあった。しかし大成功のワンマンに、必要以上に感傷的になることなく、しっかりと地に足をつけ、もう次を見据えている彼女達はとても頼もしかった。

こうしてリリスク2014年の初ワンマンライブは大団円で幕を閉じた。プレッシャーは相当あったはずだけれど、ライブ中はそれを感じさせない程に充実した表情で、終止笑顔の絶えないライブだった。

ニューシングルのリリースも決まり、一息つく間もなく、リリスクは次のステージへと向かう。そこには涙をみせるメンバーの姿はなく、地に足をつけ、これからの飛躍を確信させる6人がいた。

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前回のワンマンは未南さんが加入して間もなく、まだ「新しくなったリリスク」を見せる意味合いが強かったライブだったと思う。しかし今回のライブは、現体制の一つの完成形を見せたと言えるライブだった。

ひなちゃんと未南さんに言えることだけれど、他の4人とは違い、新しく入った二人は当然ながらtengal時代の曲を一から覚えなければならない。lyrical schoolの既存の曲に加えて『date course』の楽曲も覚えねばならない中、tengalの曲を自分たちの曲として昇華する時間が以前はまだ足りないように思えた。

けれどこの日、これまで重ねてきたステージと僕たちの目には見えない努力・乗り越えた葛藤が彼女たちに自信を与えたのか、tengal6の曲も〈今の6人のlyrical school〉のものになっていた。

中でも一番変化があったのが未南さんだ。

思えば彼女のデビューライブは去年の夏のTIF2013だったわけだが、そこからまだ7ヶ月しか経っていないことが信じられない。それくらい彼女のステージングは変わった。最初はどこか遠慮がちに(ある意味当然だけれど)ステージに立っていたように見えたけれど、ライブを見るたびに彼女の歌は変わっていった。自分の表現が彼女のパートに表れてくるようになった。この日も”苺のショート”の「つまり恋をしてるってこと♡」の時のキューッとした笑顔の可愛さなんて100万ボルト恋はスリルショックサスペンスだったし(何がだ)、"もし"のヴァースは鳥肌が立つ程にしなやかで、情感の込もったボーカルだった。初めて彼女を見た時、高身長と端正なルックスでクールな印象を持ったけれど、実際は可愛いらしいボーカルと女の子的な可愛さをも併せ持った女性だった。そしてそのキャラクターは、恋する女の子の気持ちを歌うのにドンピシャだった。えりかさんにはえりかさんにしかない良さがもちろんあったが、今未南さんが彼女の歌を歌っていることで、リリスクは新しい魅力を見せている。

加えてこの日は「流れ」も非常に意識されていたライブだった。

全体を通してみても、曲間をつなぐだけでなく、最初のMCでは芽依さんの「夏を味わいたいよね!」と言ってからの"そりゃ夏だ!"だったり、前述の未南さんの「流れる時のように、(中略)大切な時間を作っていきたいなと思います。」からの"流れるときのように"であったり、"P.S"終わりの芽依さんの「私の目に涙は似合わない。だから"わらって.net"。」という繋ぎだったり、MCも全て次への曲のバトンになっていた。
リリスク史上最長となるロングセットだったが、MCをはさむものの一貫してほとんど流れの切れないライブとなっていた。このおかげか、90分のライブはあっという間に終わってしまった感覚がある。「20分、30分のショーケースライブなら一番」と、Tパレ祭の際に嶺脇社長に言われていたが、90分のライブでも、途中で息切れすることなく惹きつけられるという一つの答えをこの日見せたと思う。

そんな中、数ある曲の中で1曲目に歌われた”My かわいい日常たち”。

ただいま!わたしの普通でかわいい日常たち
ゆっくりと寄り添うようなやさしい日常をいきてくわ
(Myかわいい日常たち)

皆が待ち望んだこの夜、大事なワンマンライブ。
けれどそれは、「日常」にほかならない。

イヤホンから流れる音楽、学校・仕事・恋愛。朝目覚めて、夜眠りにつく。街へ飛び出し、喧噪の中でささやかな幸せに触れ、気持ちが弾む。同じはずの景色が違って見える。ささいなすれ違いや、ちょっとしたミスで、なんだか落ち込んだ気持ちになる。でも金曜日には、皆で集まり、少しの間嫌なことも忘れ踊る。そしてまた、日常に帰っていく。地続きの日常の、ささやかなワンシーン。

lyrical schoolの曲はいつも僕たちのそばにある。
それはあくまで「日常」の中にあって、特別だけれど特別でない。

この日のライブも、昨日から続く毎日の、明日へと繋がる日常の一ページに過ぎない。だから「ただいま」なんだ。けれどだからこそ、僕たちにこんなにも寄り添ってくれる。
1曲目の”My かわいい日常たち”を聴いて、なんだかそんな事を思ってしまった。

また、アンコールの1曲目は新しく生まれ変わった”S.T.A.G.E”。
この日のライブで新たに発売されたニューTシャツ、その左胸には「NEWSTAGELYRISCH」と書かれていた。初めからわかっていたのかもしれない。このライブを節目に、リリスクは次のステージへと向かうことを。
これからリリスクのライブはもっと広いキャパの会場で行われることになっていくだろう。ファンの数も増えて行く。それは嬉しくもあり、ちょっとだけ寂しいことでもある。でも彼女達は、僕たちにこう歌ってくれている。

会場の規模よりずっと 大事なものがあるきっと
どんな時だって人と人が作りあげていくひと時を
(S.T.A.G.E)

大事なものは変わらない。これまでも、これからも。アンコール1曲目に選ばれた”S.T.A.G.E”には、新しいSTAGEに進む彼女たちの、そんな決意が込められていたのかもしれない。

”エモいか”どうかという見方をすれば、このライブよりも前日にUstreamで放送されていたT-Palette感謝祭2013の方が胸に迫るライブだった。一年前に嶺脇社長に言われた言葉にケリをつけるためか、"プチャヘンザ!"前のひなちゃんの煽りなど、一小節一語一句、普段よりも一層気合いの入ったメンバーがそこにいた。そしてそのステージは初めてリリスクを見る人の心と会場をロックし、フロアを揺らした。その様は見ているだけでなぜか涙がでてくるような、そんな琴線に触れるステージだった。
それに比べると今回のワンマンライブは、そういったエモーショナルな感情を喚起させるようなステージではなかった。あくまでも普段のライブの延長にあり、それが30分から90分になった、そういうライブだったと思う。WWWソールドアウトという結果に対し、メンバーも妙に感傷的になることはなく、あくまで通過点にすぎないとでも言うかのように、しっかりと地に足をつけていた。

それはきっと、彼女たちが見せる物語は、どんどん会場のキャパを広くして夢を叶えていくという、倍々ゲームの劇場型のカタルシスではないということだ。

僕がリリスクを好きなのは、メンバーのみんながいつも凄い楽しそうにライブをしていて、その姿を見ているだけで、こっちまで楽しくなって幸せな気持ちになれるからだ。もちろん好きな理由は他にも沢山あるけれど、あの気持ちに勝るものはない。メンバーもファンも、皆を笑顔にするあの空間は、そしてそのエネルギーは、ジャンルとか、イメージや偏見といった、隔ているものを越えて、見てる人に伝わるもっと根源的なものだと思う。そしてその笑顔の連鎖がまた別の人に伝わり、どんどんその輪は広がってい。

人と人とが作り上げるひと時にこそ、彼女たちの物語はある。

lyrical schoolはまた新しいステージに向かうけれど、それはきっと変わらずに、僕たちの日常でありつづけるだろう。ヘッドフォンから流れてくる音楽は、ゆっくりと寄り添ってくれるだろう。

そしてそんな物語がずっと続けばいいと
今はそう、思わせてほしい

おいでよ パーティーへいそごう

まだまだ続くものがたり

君と僕だけかかる魔法

おいでよ パーティーへいそごう

うつむきがちだった君が もっと笑えるから

ずっと探していたものが きっと見つかるから


lyrical school「おいでよ」

セットリスト

1.My かわいい日常たち
2.リボンをきゅっと
3.PARADE
4.tengal 6
5.そりゃ夏だ!
6.wow♪
7.perfect☆キラリ
8.fallin'night
9.もし
10.苺のショート
11.決戦はフライデー
12.Maybe Love
13.ルービックキューブルービックキューブ(Fragment remix)
14.流れる時のように
15.P.S
16.わらって.net
17.おいでよ
18.photograph
En1.S.T.A.G.E
En2.tengal 6 feat.MC Megu
En3.プチャヘンザ!

細美武士が気づかせてくれたもの

元記事掲載:音楽情報ブログ『musicoholic』 http://bit.ly/2mkZ2i7

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細美武士

ELLEGARDEN/the HIATUS、現在2つのバンドでフロントマンを務めるバンドマンだ。彼のライブはチケットもグッズの値段も安い。CDには初回限定盤もなければ特典もつかない。地上波のTVやマスメディアには一切出ない。あれは嫌だ、これは嫌だ。ひたすら愚直なまでに、ファンの想いを直接感じられるライブを、何よりファンの事を1番に考え、細美はここまでやってきた。周りとの意見のぶつかり合いも少なくなかっただろう。もっとラクな道ならいくらでもあったはずだ。

何が彼をそこまで駆り立てるのか。

細美は挫折の人間だ。学校や社会の要求する規則や常識に馴染めず周りから浮いていた。高校を中退し工場で働いたが未来は見えなかった。バイクレーサーになりたいという夢も自分より優れた才能を前に諦めた。ELLEGARDENの前に組んでいたバンドがメジャーデビュー目前まで行った時も納得がいかず話は頓挫、結局バンドは解散する事になった。音楽の道すら一度は諦め就職もした。

彼は自分の信念が報われてこなかった人間だ

その後、偶然残っていた一つの電話番号から引き寄せ合うようにELLEGARDENは生まれた。でもまだ信じられない。1stアルバムのタイトルは『Don' Trust Anyone But Us』。「おれたち以外は信用するな」。しかしそれからライブを重ね、アルバムをリリースする度にファンの数は増えていった。2007年にはELLEGARDEN幕張メッセでワンマンライブを行うまでになった。

あの頃信じていた道は間違いじゃなかった。

細美の信念とは純粋過ぎる程の理想主義と潔癖なまでの完璧主義を貫くことだ。
誰もが自分の理想を持っている。それなのに多くの人は最初から何かを諦めて生きている。『二兎を追うものは一兎をも得ず』。その言葉を飲み込み、二兎を得た方が幸せな事をみんな知っているのに、両方を失う事を恐れて、初めから一兎しか追わない。傷つくことを恐れているから。そして二兎を追う道が最も困難な事を知っているから。
そんな生き方を細美はしたくなかった。別に誰かを困らせたいわけでも傷つけたいわけでもない。でもだからって自分を曲げたり押し殺したりなんてできない。自分も皆も、全員で幸せになりたい。その結果、たとえ二兎を失うことになっても。細美はそうやって生きてきた。

「人生はそんなに甘くない」
「綺麗事だ」
「現実を見ろ」

どれほど周囲と摩擦を生もうと細美は自分の信念を決して曲げなかった。すると少しずつ、少しずつ、彼と同じ道を歩む仲間が増えていった。誰も信じてくれなかった言葉を信じてくれる仲間ができた。そしてファンの存在は、細美に1人じゃないことを教えてくれた。細美の言葉に救われたファンは多いと思う。しかし細美こそが、そんなファンの存在に救われていた。だから彼は誰よりもファンのために歌う。周りに受け入れてもらえなかった自分を信じてくれる仲間のために。

the HIATUSのThe Afterglowツアーで彼らがライブの最後に演奏していた曲は「Silver Birch」だった。『仲間の歌』と言ってこの曲を歌う前、細美はしきりに仲間の大切さを話していた。ELLEGARDENからthe HIATUSになり音楽性は変わった。曲作りの方法だって変わった。
そもそも人間というものは成長し変わっていくものだ。

でも彼にとって本当に大切なものはずっと変わっていない。

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降参するなんて言わないでくれ
奴らに妥協させられるな
理想を実現するんだろ
君は弱虫じゃない

すでに諦めた奴らが君の強い意志を妬む
奴らは君を負け犬の輪に引きずり込もうとしてる

僕は君からやりたいことは
なんでもやっていいと教わった
僕は君から結局王道なんてものは
ないんだということを教わった

奴らは君の信念をぐらつかせようとする
何故なら既に自分の分を失ってしまったから
君には出来ないなんて誰にも証明できない

願い続けさえすれば
いつか気付くかも知れないじゃないか
一緒に歩いている人がいるってことに

僕は君と一緒に行くよ

(Cuomo)

itun.es

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僕たちは全く完璧じゃないし失敗ばかり。クソッたれのダメ人間。おまけに世界は不条理で物事はびっくりするぐらい上手くいかない。泣きたくなる夜もあれば信じているものを諦めたくなる時だってある。

でも『音楽』の下で、赤の他人の僕らがバカみたいに笑い合って一つになれたあの瞬間を僕たちは知っている。周りの人が「そんなものはない」と言っていたその世界は確かに存在した。諦めたくない。信じたい。その道がたとえ最も辛い道だとしても。仮に全てを失ったとしても。

だけどそんな道を一人で生きていけるほど人は強くない。心配事が消えさることなんてない。でもだからこそ僕たちは音楽に勇気をもらい、ライブでその存在を確かめるんだ。不安な時はここに帰ってくればいい。

 

「君は1人じゃない」

 

そんな彼の音楽を僕は今も信じている