欅坂46『ガラスを割れ!』自撮りTV全員レビュー / けやき坂46 1期生&2期生

f:id:braineclips22:20180717022021j:plain

 

石森虹花

開始1秒から可愛い。女の子がベッドの上で行う自撮りはなぜこんなに可愛いのか、その秘密を探るためにアマゾンの奥深い密林へ調査に向かいたい。カラオケの場面は普段ユニゾンの中に紛れている石森のソロボーカルを堪能できる。五人囃子はぶっちゃけ人気的にはそれほど高くないメンバーが集まってるけどあの5人は歌もダンスも高い平均点を出せるアイドルとしての基礎能力の高い5人で"結局、じゃあねしか言えない"には本質が詰まってるということを石森は証明している。正直面白い瞬間は1秒もないんだけど石森と石森のおばあちゃんの共同クッキングの映像の微笑ましさ6億ガウスなのでちょくちょく荒れがちな欅界隈は荒んだ時にはみんな石森の自撮りTVを観た方がいい。(適当)

www.youtube.com

 

今泉佑唯

「笑顔を100個撮影」という日本語は正しいのか?という疑問からスタートする今作だが企画趣旨が今泉の笑顔をひたすら撮影するというものなのでそんなもん最高な瞬間しかないに決まっているんですよね。全秒優勝。破茶滅茶にかわいい。まあとにかく可愛い。可愛い以外はあんまり言いようないですね、はい。

www.youtube.com

 

上村莉菜

上村莉菜ちゃんの服がゆるふわ女子大生感MAXで童貞には刺激が強い。上村莉菜ちゃんの彼氏気分が味わえて童貞には刺激が強い。ストローを経由してタピオカを吸う上村莉菜ちゃんの口元が童貞には刺激が強い。僕はタピオカドリンク好きなので普通に参考になりました。ありがとうございました。

www.youtube.com

 

齋藤冬優花

「(まあ一応見るか)」というモチベーションしかないんだが同じ食レポでもただ童貞をブン殴ってるうえむーとは違うんですよね。体を張って頑張ってる。涙を流しながらも激辛ラーメンを食しレポートもする齋藤冬優花の姿には「謙虚・優しさ・絆」が詰まっている。これは石森にも言えるけど石森も齋藤もメディア上では中々ピックアップされないけどいい奴なんですよね。それが伝わってくる自撮りTVは偉い。まあ面白い瞬間は1秒もないのですが。あとリタイアでV終わるなら2軒目全カットで良くない?

www.youtube.com

 

志田愛佳

自由。仕事だけど仕事感のあまりないオフの志田の雰囲気が伝わってくる。アイドルアイドルしてる自分が苦手なみたいだけどやっぱり可愛いし、欅坂にはこの志田が必要なんですよね。

www.youtube.com

 

土生瑞穂

また食レポかよ!!!!失礼、取り乱してしまいました。でも土生ちゃんは韓国ですからね、更に自分の自撮りVTRに自分で副音声でコメント入れてますからね、一味違うんですよ。顔と声は可愛いしプライベートの土生ちゃんのファッションも見れて色んな角度から土生瑞穂を楽しめる、おまけに「食べるー?」など"こちら"側への気配りも忘れない素晴らしい自撮りTVですね。土生supreme瑞穂、地上波ゴールデンでやりませんか?

www.youtube.com

 

原田葵

エプロンを着るだけで若妻感が出るのは発明の類だと思うんですよね。本当にエプロンを考えてくれた人、エジソンライト兄弟のように歴史に名を残して然るべきでしょ。クソガキ感のあった葵ちゃんの少し大人びた姿に心の中の徳光和夫も涙ですよ。ただ長いし画が変わらないから1分ぐらいで飽きちゃうんですが。

www.youtube.com

 

■尾関梨香

いや、葵ちゃんと画が一緒やけど??失礼、タイプAの後にそのままBを見た私がいけないんです。葵ちゃんとやってることは完全に同じなんだが尾崎のは「パンケーキアート」とすることで尾崎の絵心も同時に楽しめプラスαのフックを作ってるところが良いですね。最近尾崎がどんどん可愛くなっていておれの中の徳光和夫が(以下存在しない日本語)。

www.youtube.com

 

■織田奈那

チャイナドレスを着るという行為はもう確信犯なわけですよ。その心意気、大義であった。微妙なボリュームで真面目でガチなところが織田奈那っぽいですね。そのままEテレでレギュラー番組やってくれ。

www.youtube.com

 

佐藤詩織

レッスンスタジオで欅の曲に合わせて色んなタイプのダンスの振りをつけ踊る佐藤詩織さんの姿は些かシュールなんですがこれがアートなのでしょうか。いや、普通に見てて楽しいんですけどね。これまでの食レポやクッキングよりは実践的で佐藤詩織さんのダンススキルも再確認できる。やはり五人囃子に本質はあるんですよ。でもこういう時に本人のキャラクターが出てこないところが佐藤詩織さんの惜しいところな気がする。

www.youtube.com

 

■長沢菜々香

温泉レポと言えばやはり入浴シーンが最大の見所ではありますよね。え?入浴シーンがない??正気か??失礼、取り乱しました。キャラが濃くて冷静に見れる機会は少ないけどなーこだいぶ可愛いですよね。手作り感が良い方に転がってるVTRで好感度8400増しです。ただたぬきの置物を見つけて「ねるを見つけました」と真顔でナチュラルにイジるなーこからはサイコを感じました。でも袴を着たなーこはとっても可愛かったです。けど袴を着たまま雪の降る中外で欅の曲踊り出すなーこはやっぱりサイコだなと思いました。おしまい。

www.youtube.com

 

守屋茜

欅坂46、食い物くってばっかりやん!失礼、取り乱しました。他のメンバーは「食レポ」をしてるので映像中にコメントしてるのですが守屋は本当にただ食ってるだけで後日テロップでコメント加えてるところにサグを感じ…、失礼、完全オフの守屋茜を写してる感じがとても良いと思いました。うえむーの自撮りVには彼氏面できるのに守屋ではできないの、考えさせられる。

www.youtube.com

 

■米谷奈々未

企画がしっかりしている。制服姿の米さんはかわいい。そして完成品のクオリティも高い。"制服と太陽"という名曲にフォーカスしたセンスも素晴らしい。てかこれ見ると米さんマジで可愛いなと思えてくる。一人だけ自撮りTVじゃなくて個人PVのような出来ですね。アカデミー賞受賞です。

www.youtube.com

 

渡辺梨加

顔面が偉い。

www.youtube.com

 

■小池美波

ビリビリグッズを検証する小池美波ちゃん、リアクション120点かわいさ12000点です。更にどんだけ良いリアクションしてもこういうのはツッコミとボケという形がいることで成立するもので1人でやるもんではないなと感じさせることで改めてバラエティというものへの哲学的な問いも投げかけている。深イイ。

www.youtube.com

 

小林由依

顔面よし、声よし、企画よし。シンプルにニヤつきもといケヤつきが止まらない。常に期待を裏切らない小林由依横綱相撲に感服しました。5番目の服装の小林由依ちゃんが可愛すぎて死んじゃった。でも正直そこまでオシャry(何者かに後頭部を殴られ永眠)。

www.youtube.com

 

菅井友香

「夕立も予測できない未来も 嫌いじゃない」に続き声に出して言いたい日本語ランキング第2位に君臨する「ゆっかー」こと菅井友香。1人ラーメンどころか激辛ラーメンを苦心しながらレポをしつつ完食し切ることで初めて成立する齋藤冬優花とただ「1人でラーメン食べに行く」だけで企画として成立する菅井友香のこの構図はこの世界の格差社会への風刺なんですよね。21世紀的価値観と資本主義の臨界点がトランプというモンスターを大統領にしてしまったように菅井友香もこのアイドルというシステムの格差が生んだ加害者であり被害者なのです(適当)。

www.youtube.com

 

平手友梨奈

てちが元気にしているだけで世界に光が差す。てちが笑顔になるだけで人々の心に笑顔の花が咲く。おまけに映像の尺も短い。本当に齋◯冬◯花に謝ってほしい。まあ冗談は置いといてこうやって"アイドル"をやっててスーパーかわいい平手が一番良いと思うんですよね。変に気張って表現者とか言って曲の世界に閉じ込められるよりも笑顔のてちで他のアイドルが辿り着けなかった場所まで行ってほしい。2016年の欅坂46を超えてくれ、頼む。

www.youtube.com

 

鈴本美愉

何度目のクッキングか。でも手際の良さが他のメンバーと一味違いますね。あと髪をガン染めしてるすずもんが料理上手で尽くすタイプというの、クるものが多い。まあこのリリース後けやかけで散々料理企画をやることになるのでこの映像の価値は下がってしまったのですが…。

www.youtube.com

 

■長濱ねる

ナチュラルボーンカマトトたぬき。でも他のメンバーと比べてめちゃくちゃ沢山喋るしカメラワークも変えてくれるし長崎弁で彼氏面気分味あわせてくれるとかこんなに偉いアイドルを叩く人間の気が知れません。観覧車一周するだけなのに撮れ高半端ないしこれはアイドルとしての職能と言わざるを得ない。

www.youtube.com

 

渡邉理佐

飾らない素の〇〇というと志田や守屋と一緒なのに何がこんなにも違うのだろうか。BGMとロケーション、そしてべりさの醸し出す圧倒的彼女感。同じコンセプトでも映像のちょっとした作り方でメンバーによって全く印象が変わるのがこの自撮りTVの面白い見方だがねるとの壮絶な殴り合いの果て渡邉理佐は文句なしのMVPです。マジで付き合ってほしい。いや、ほんとマジで付き合ってほしい。大事なことなので2回言いました。

www.youtube.com

 

けやき坂46 1期生

漢字欅の自撮りTVとは違いひらがなけやきは一期生全員での出演。それぞれのメンバーの誕生日とともに誕生花と花言葉が紹介され、そのイメージにあった個人映像が流れる。加藤史帆の映像がメディア上のポワポワした本人のイメージとはガラリと違ってサバサバしたクールキャラだったのと齊藤京子が丸眼鏡の文学少女キャラでそれぞれのギャップがいい感じでしたね。花言葉を当てると本人のイメージ通りの人もいれば結構違うキャラに変わる人もいておもしろい。全体としては意味ありげなセリフと良い具合の映像でまとめた個人PVショートver.という感じですがみんな可愛くてとってもハッピーです。柿崎芽実ちゃんのジト目が優勝。

www.youtube.com

 

けやき坂46 2期生

ひらがなけやき2期生はメンバー全員による自己紹介V。可愛い女の子たちがひたすらお互いを褒め合う素晴らしい映像です。今見返すと小坂菜緒ちゃんがこの半年で信じられない成長を遂げているのがわかり震える。こうして見るとひらがな2期生は乃木坂の3期生と殴り合って勝てるんじゃないかというぐらいビジュアルレベルが高い。個人的には松田好花ちゃんが特技としてギターを挙げていてエレキギターぶら下げてる姿が性癖に刺さる。まあ私は河田陽菜ちゃんの顔面が好き過ぎるのですが。

www.youtube.com

 

braineclips22.hatenablog.com

braineclips22.hatenablog.com

 

はじまりか、 - 伊藤万理華の脳内博覧会 in 北野天満宮

(ネタバレを含んでいるので見に行く予定のある方は注意してください。)

 f:id:braineclips22:20171127112930j:image

◾️はじまりか、

年内で乃木坂46からの卒業が決まっている伊藤万理華による初の個展、『伊藤万理華の脳内博覧会』。東京での会期を終え場所を京都に移し、現在は北野天満宮で開催中の「KYOTO NIPPON FESTIVAL」の一企画として出展されている。(11月17日からは福岡PARCOでも開催されている。)

自分は特別伊藤万理華推しというわけではなかったが、たまたま大阪に行く機会があり、卒業を控えた彼女の初の個展ということもあってせっかくならと足を伸ばすことにした。

北野天満宮へは京都駅からバスで30分ほど。平日でも京都市内は観光客で賑わっており、北野天満宮でも多くの観光客が降りていく。

 f:id:braineclips22:20171119232727j:image

脳内博覧会の会場は北野天満宮内にある「もみじ苑」という園内庭園の中の施設を使っており、展示を見るためには必然的にもみじ苑の中に入場することになる。(もみじ苑の入園料もチケット代には含まれている。) 紅葉シーズンを迎えているのか、まだ一部緑が残っているものの、もみじ苑の中は黄色や赤に染まった多くのもみじで彩られていた。時刻は15時を回り、傾き始めた太陽は早くなった日の入りを知らせる。人は多いが、どこか静かで日常とは切り離された静謐で厳かな空間。移りゆくもみじに反射したやわらかい西日は、儚い時の流れと卒業が突きつける感傷を映すようで、その眩しさに目を細めた。

f:id:braineclips22:20171119232746j:imagef:id:braineclips22:20171119232752j:imagef:id:braineclips22:20171119233048j:image

会場は1Fが同時開催中の永島千裕による個展『神のまにまに』、B1が『伊藤万理華の脳内博覧会』の展示スペースとなっていた。地下への階段を下り、小さな部屋に入ると大きく3つのブロックに分かれた展示スペースが広がる。

1.写真展(伊藤万理華ソロ)

最初のブロックは伊藤万理華のソロ写真展とも言えるファッションシューティングのブロック。大判の写真が規則的に並ぶオーソドックスな展示だが、写真はカメラマンとヘアメイクを変え、大きく2つのコーナーに分かれており、その全ての写真のスタイリングは伊藤万理華本人により行われている。

1つ目のコーナーはカメラマンを間仲宇、ヘアメイクを宇藤梨紗が務めている。
メインビジュアルにもなっている紫のジャケットを着て、前髪を分けた伊藤の写真を筆頭に、スタイリングごとにヘアメイクも変えた"モデル"伊藤万理華の写真が並んでいる。今回の人選は「自身の私服をメインにしたファッション系の写真が撮りたい」という伊藤の希望から間仲氏に白羽の矢が立った。間仲氏曰く伊藤は「パッと写真の中に入ってくれるから撮りやすい。」とのことで、そこには写真ごとに纏う雰囲気を変える伊藤万理華がいた。モデルのような高身長なスタイルではないかもしれない。けれど誰よりもその服をモノにしているのは伊藤万理華だと言わんばかりの佇まいに自然と引き込まれる。

2つ目はカメラマン:前康輔とヘアメイク:吉田真佐美によるコーナー。こちらはスタジオではなく葉山や渋谷など野外で撮影が行われており、化粧も控えめかつ表情もナチュラルで、「もし伊藤万理華のソロ写真集が発売されたら」という妄想を掻き立てる。前氏曰く「(伊藤は)スッと景色に入って紛れ込むのが上手。それを追いかけてるだけでこっちが楽しくなる。」とのことで、写真もくるくると動く素の伊藤万理華を切り取っているように見られた。

また写真展ブロックのスピーカーからは、この展覧会のために収録されたラジオ番組「MdN Presents RADIO DE meets CREATORS 」が流れていた。様々なクリエイターに伊藤が会いに行くというMdNで連載中の同名の企画を、番外編ということでラジオ番組として収録。これまで伊藤に関わってきたカメラマン、スタイリスト、監督、振付師と、様々な人に伊藤が一対一でインタビューを行い、初めての出会いからお互いの印象、この展覧会に至るまで、伊藤万理華にまつわるクリエイティブを話してゆく。そこからはアイドルとスタッフではなく、表現者としてお互いに認め合うクリエイター同士の言葉があった。

2.写真展(犬会)、スケッチ、脳内ROOM

2つ目のブロックは犬会の写真展と脳内ROOMのスペース。犬会は舞台『すべての犬は天国に行く』に出演した通称“犬メン“のメンバーがお正月に集まりパーティーを開くという設定。メンバーは伊藤万理華生駒里奈井上小百合斉藤優里桜井玲香新内眞衣松村沙友理若月佑美。各メンバーのスタイリングにはテーマがあり(斉藤はギャル、伊藤はヒッピー等)、スタイリストの市野沢雄大氏がそのデコボコした個性を一つの家族として統一感を持たせコーディネイトしている。写ルンですで撮影された写真は独特の色合いを浮かべ、何よりこの撮影を「この一年で一番笑ったかも」と伊藤が話すように、気の置けない仲だからこそ出てくる表情や無防備なほどの笑顔からは、メンバー同士の信頼関係が目にみえるようだった。

蝶々と展覧会のビジュアルにもなっている鉱石と苔の本人の原画を挟み、脳内ROOMへ。乱雑に置かれたバッグやぬいぐるみ、多種多様な小物類も全て伊藤の私物であり、彼女の趣味嗜好をぶちまけたようなカオスな展示だ。更にその隣の壁には沢山の私服が所狭しと並んでおり、そこにはメインビジュアルで着用された紫のジャケットも飾られていた。どの服もただそこにあるだけでは何の変哲もない古着の一つだが、伊藤が身につけ、プロのカメラマンが撮影を行うとあれだけの存在感が出るのかと、プロのマジックを感じた瞬間でもあった。

3.ショートムービー

そして最後のブロックはショートムービー。そこでは『トイ』と京都で初公開となった新作『はじまりか、』の2つの作品と、過去の個人PVの上映が行われていた。

 

■『トイ』

監督:柳沢翔

深夜、うらぶれたガソリンスタンドに止まる一台の車。その中で揉み合う男女。助手席のドアから押し出されるように出てきたのは派手な服装とメイクに身を包んだ伊藤万理華。水溜りに身体を投げ出しボロボロになりながらも、空元気にも見える笑顔を運転席の男に投げかけると、化粧を直すために伊藤はトイレへと向かう。水で顔を洗い気を静める。しかしふと見上げたガラスに映った自分の顔に不安を覚え、何かに追い立てられるように何度も口紅を塗り直す。すると外でエンジン音が聞こえ出す。慌てて飛び出すも、そこにはアイスクリームでベタベタに汚れたバッグが捨てられ、車は伊藤をガソリンスタンドに置き去りにしたまま走り去って行った。肩を落とし身動き一つないまま途方にくれる伊藤。しかし次の瞬間、彼女は何かに目覚めたように突如闇夜の中でダンスを踊り始める。怒りも、悲しみも、憤りも、寂しさも、全てを放出し尽くすようなダンス。通りすがりの車を気にもせず車道へ飛び出し、ボンネットに乗り上げ、感情のままに、腕をなびかせ、身体を預け、ステップを踏む。街灯に照らされながら、闇夜に溶け込みながら。身体の中が空っぽになってしまうほどの、自身を放出する鬼気迫るダンス。気がつくと夜は明け、地平線の先には太陽が昇り始めていた。うらぶれたガソリンスタンドには、変わらず1人。捨てられた。何もない。けれど、解き放たれた。関係から、しがらみから、自分自身から。暗闇が晴れ、青みがかる少し前の、乳白色の美しき空がどこまでも続いていた。その限りない広さを前にした彼女は、自由だった。雲の先、永遠とも呼べる空を前に、彼女の瞳には涙が溢れていた。

 柳沢監督に「最後のショートムービーをダンスメインにしたのはなぜか?」と聞かれた伊藤は「ダンスで想いを伝えるっていうのをやってみたかった。」と答えた。アイドルには歌という手段もあるが、それとは違う形で、自身の感情を表現する方法として彼女が選んだのがダンスだった。

そしてそれに対し柳沢監督は非常にダークな内容で応えた。重い内容にしたのは、追い込んだ方が伊藤の感情をより引き出せるからだと。インスパイアされたのは『アナと雪の女王』。あの「Let It Go」も住み慣れた国を追われ、一人ぼっちになった時に歌われた曲だ。それはある意味では不幸なシーンとも呼べる。しかし失うことで得た自由がある。もう誰の目も気にしなくていい。私は私のままでいい。新しい一歩を踏み出す時、私は自由だ。

柳沢監督は伊藤万理華の『トイ』で、彼女の自由を謳い祈った。

 

■『はじまりか、』

監督:福島真希

15の時に乃木坂の オーディションを受けた
まさかの合格!?ハッピー!も束の間
選抜発表で名前は 呼ばれなかった
どうしたらいい?何が足りない?
焦りは空回り まわりまわりぐるぐる巡り
誰かが付けた順番に 泣いて眠れない夜もあった
周りを見ればみんなキラキラ 羨ましいないいないいな
でも違うんだ それはあの子だから出来ること
私にはできない ひとりひとりの眩しい輝き
ようやく認めた時に 何かが開けた!
 
自信なんて無い 不安定な歌声
何でアイドルに?アイドルになったのか?
ずっとずっと コンプレックスだった
でも「味、味」って あなたが言ってくれたから
あなたがあの日 言ってくれたから!
 
ファッションも趣味も全然 アイドルぽくなくて
こんな変な私だけど 見つけてくれてありがとう
どうして私を選んだの?
どこから巡って辿り着いたの?
どうしてそんなに優しく笑ってくれるの?
 
あの時あなたが手を 差し伸べてくれた
あなたの言葉にたくさん 支えられてきた
見ていてくれた
ブログ読んでくれた
コメントくれた
声援くれた
りっかタオル
緑と紫のサイリウム
ありがとうありがとう 全部全部ありがとう
会いに来て手を繋いでくれて ありがとう
 
ここじゃなきゃ出会えなかった 大好きな大好きな大好きなメンバー
みんなすごくない?最高じゃない?
私ここにいて いれて本当によかった
1,2,3,4,5,6年
私の誇り私の青春 一生の宝物
前から3列目のだいたい端っこ
真ん中にはなれなかったけど ここが私らしいかなって
目の前と左に広がる みんなを景色を輝きを
ファンのみんなの声を ずっとずっと忘れない
忘れないから!
 
苔とか石とか鉱物とか アイドルぽくなくて
こんな変な私だけど 見つけてくれてありがとう
どうして私を選んだの?
どこから巡って辿り着いたの?
どうしてそんなに優しく笑ってくれるの?
 
あの時あなたが手を 差し伸べてくれた
あなたの言葉にたくさん 支えられてきた
見ていてくれた
ブログ読んでくれた
コメントくれた
声援くれた
りっかコール
緑と紫のサイリウム
星みたいですごく綺麗だった
広い宇宙にあなたと私
ここで出会えた奇跡に ありがとう
 
もっと話したい まだまだ足りない
離れるのは寂しいけど 違う私も見てほしい
良かったらもし良かったら 一緒に来ませんか?
あなたの未来と 私の未来
どこかでまた交わることができたらいいな
新しい私 これからのタワシ、ってタワシ!?
 
進もう一歩一歩
迷いながらでもいいから
悩んだり森を迷ったり
定期とケーキを間違えたり(べちゃ)
シロクマになったり
アン・ドゥ・トロワ!!で髪を切ったり
でもすぐ伸びたり
たまに「まいっか」って言いながら
 
一歩一歩一歩 未来はたった一歩先
ありがとうありがとう あなたと会えてありがとう
一歩一歩一歩 未来はたった一歩先
ここからここから 私が始まる
一歩一歩一歩 未来はたった一歩先
ありがとうありがとう 全部全部ありがとう
一歩一歩一歩 未来はたった一歩先
ここからここから 私が始まる
ここからここからここから
「はじまりか、」

りっかの名付け親でもある福島真希監督による、乃木坂46伊藤万理華として最後の作品。最後は真希ちゃんじゃないとダメと、伊藤からの指名で制作された今作は乃木坂の街角を伊藤が歩き、歌い、踊る姿をワンカットによる長回しで撮影している。音楽は福島真希の夫でもあるOngakushitsuの福島節が担当。綺麗な音色とエモーションを重ねていくストリングスが琴線に触れていく。キュートな振り付けとともに、リズムに合わせ、街中を踊る伊藤は、ままごとの舞台「わたしの星」で用いられたようなラップ調の歌と不安定だが真摯な歌声で、卒業を迎えた今の心境とファンへの想いを歌う。『トイ』のダークで陰のある内容とは打って変わり、軽快なテンポでストレートにその想いの丈を解き放つ伊藤の姿は、清々しく澄み渡っている。

自信なんて無い 不安定な歌声
何でアイドルに?アイドルになったのか?
ずっとずっと コンプレックスだった
でも「味、味」って あなたが言ってくれたから
あなたがあの日 言ってくれたから!

身に纏っていたコートを脱ぎ、衣装へと姿を変える伊藤。そこには紛れもない"アイドル"伊藤万理華がいた。
映像の最後、タイトルコールで締めようとした伊藤の背後の暗幕が下がると、そこには緑と紫のペンライトを手にしたファンの姿が。伊藤へのサプライズ。驚きとそれ以上の喜びをたたえた満面の笑顔で、映像は終わる。

脳内博覧会を見ていて、伊藤万理華橋本奈々未と似てると思った。2人はともに2月20日生まれ。意志の強さと潔さ、そしてファンへの想い。

自分は橋本奈々未推しで、彼女の最後は掛け値なく素晴らしく、ファンとして望外の感動をもらい、生きてきて一番美しいものを見たとさえ思った。けれど、一番彼女の口から聞きたかった言葉は最後まで聞けなかった。もちろん本人の本心はわからないが、それでも、最後に聞きたかった言葉があった。

『はじまりか、』にはそれがある。自分の好きなアイドルが、いつかアイドルをやめるその時、もし叶うのなら言って欲しい言葉の全てがそこにはある。何百人何千人何万人いるかわからない乃木坂46のファン、そして伊藤万理華のファン。この歌はそんな「ファン」という括りではなく、紛れもなくたった1人の「あなた」に贈られたものだ。自分はその「あなた」ではないだろう。それでも、伊藤万理華の人柄とまっすぐな想いに、自然と涙が頬をつたっていた。

『はじまりか、』を見ていてふと橋本奈々未のことを思い出し、そして伊藤万理華推しの人たちは絶対に幸せだろうなと、違う形の答えに、ほんの少しだけ羨ましくなった。

----------------------------------------------------

伊藤万理華の卒業ライブは乃木坂46初の東京ドームコンサートの2日目となった。ラストソングはともに年内で卒業する中元日芽香とのダブルセンターによる"きっかけ"。

中元日芽香は、オリエンタルラジオと共演していたラジオ番組『らじらー』で先日最後の活動を終えた。中元のために制作された"LAST NUMBER feat.中元日芽香"とともに、最後までアイドル中元日芽香としてその活動を全うした。

www.youtube.com (ファンの人による自作MV)

 

伊藤万理華乃木坂46としての最後の活動は12月23日の仙台の握手会を予定している。

卒業ソングがないことは不公平か、卒業ライブがないのは不運か、握手会で別れを告げられないのは不幸か、わからない。でも伊藤万理華中元日芽香も、それぞれの場所で、それぞれのやり方で、それぞれの最後を全うしている。他の誰にも真似できない愛され方で。正解はない。きっとアイドルは、アイドルを辞める時初めて、何を残したかがわかるんだろう。

「ありがとう」以上の別れの言葉はあるのだろうか。新しい場所へと旅立つ2人の残した同じ言葉は、形は違えど、必ず、「あなた」の心を掬っていく。それはどうしようもないほどハッピーエンドで、そしてどうしようもなく切ない。

 

www.youtube.com

伊藤万理華の脳内博覧会の様子は一部ナタリーでも見れます

【イベントレポート】乃木坂46伊藤万理華、初の個展開催に「やっと自分の存在意義を皆さんに伝えられる」(写真12枚) - 音楽ナタリー

braineclips22.hatenablog.com

欅坂46「不協和音」個人PVレビュー

f:id:braineclips22:20171122014311j:image
◾️石森虹花『虹花と七つのいいところ』

 監督:中村智恵

石森自身に「自分の好きなところを七つ」探してもらうため、1日をかけ都内や故郷の仙台を巡りインタビューをしていく。"欅坂46について"という質問では自身の葛藤が吐露され、また故郷で話されるアイドルを目指したきっかけには、石森の原点が垣間見える。バラエティではおバカキャラで目立つことが多いけど、こうして話してるのを聞くと石森って本当良い子なんだなって思う。てかまず家族が大好きな時点で絶対良い子でしょ。ただ七つ紹介してなくない?"虹"に掛けて"七つ"にして石森がちゃんと七つ考えたのに実際は三つだけ話聞いて終わってない?七つの良いところよりインタビューの方がメインになってない?

www.youtube.com

◾️上村莉菜『少女と怪物』

 監督:藤枝憲 / 須藤中也

1人妄想の世界に浸り寂しく過ごす少女の元に、ある日現れた怪物。2人で楽しい時間を過ごしたのも束の間、別れの時が来てしまい………、という大人になると見えなくなってしまうやーつのストーリー。洋館と上村のロリータ衣装のバランスがマッチしてて、これを着こなせるのは土生ちゃんか上村かって感じでかわいい。そしてそこからの大人になった(設定上)上村の衣装と化粧がまたギャップを生んでて更に可愛い。大人になっても忘れちゃいけない大切なもの、そう、これはもはやトイストーリーやね(違う)

www.youtube.com

◾️小林由依『彼女の愛情 または彼女は如何にして愛することを諦めその感情と訣別したか』

監督:児玉隆

小林に与えられた3つのルール。そのルールを必ず守り、1人で舞台に立ち芝居をしなければならない。ストーリーはある男性に恋する少女の話。文学的表現が並ぶ長尺のセリフを情感込め、淀みなく演じる小林。時にはにかみ、驚き、慌て、そして最後には…。またラストのセリフは空欄となっており、その物語の最後のピースは小林自身が考え決める。約8分に及ぶ熱演。エンディングそのものは、無難と言えば無難だけど、歌にギターにダンス、おまけに演技までやってのける小林のオールマイティカードぶりが恐ろしい。ブログの枕詞もまだ隠れた才能の片鱗なんだろうか、可愛いだけで十二分なのにどんだけ。素直に凄い。

www.youtube.com

◾️原田葵『植物少女』

監督:西堀真澄

「植物はその地に根を張ってしまうと、その場から動けなくなってしまう。彼女もまたそんな生活を送るが、しかしそのことを彼女は不幸には感じていない。」というこの世界とその世界のささやかな交流を描いているんだけど、そんなことよりドレスアップした原田葵ちゃんめちゃくちゃ可愛くない?花びらパクパク食べる原田葵ちゃんめちゃくちゃ可愛くない?育ち盛りなのかな。

www.youtube.com

◾️長濱ねる『Lightning Diary』

監督:上田真紀子 / 石川夕紀

なんだこのあざといたぬきは馬鹿野郎。失礼、取り乱してしまいました。ねるが未来の自分へ向けた日記をモノローグ的に語る映像なんだけどとにかくかわいい。そしてあざとい。あざといが果てしなくかわいい。「分かっててやってるんでしょ?」って聞いたら『そんなことないです』って絶対言い返してくるんだろうな。ただシャッタースピードを遅くすることで光の残像を残して文字を書く、所謂「花火文字」は視覚的にはポップなんだけどなんでこれになったんだろうか。可愛くねるを撮るためのふりかけ程度の味付けにとどまってる気が。まあねるがかわいいからなんでも良いか。

www.youtube.com

◾️柿崎芽実佐々木美玲『Magic Girl』

監督:加藤マニ

SISTER JETのケンスケ アオキ氏によるオリジナル曲「Magic Girl」のリズムが最高に心地いい。ボーカルを取る柿崎芽実佐々木美玲の歌声は少し不安定だけれど、その不安定さはあどけなさや幼さを醸していて、"魔法を使う"という絵空事のようなファンタジーさと合っていて良い方に作用してる。魔法が使えるのにクロスワードパズルは自力で埋めていく2人の姿にこの物語の本質が隠されている、かどうかは全くわからない。

www.youtube.com

◾️高瀬愛奈東村芽依『上京けやきストーリー』

監督:杉山弘樹

関西出身の2人による東京タワーを目指す都内旅、と見せかけたらそうじゃないんかい!というオチ付き。2人とも話してるとナチュラルに関西弁が出る感じがいい。写ルンですで撮った写真のフィルムの具合が超イマドキの子っぽい。映像も少しボヤけたようなフィルターをかけていて全体的に90'sの感じを出してる。東村芽依ちゃんのスカートの丈がちょっとエッチなのが気にな)ry

www.youtube.com

◼️今泉佑唯今泉佑唯のひとり童話』

監督:加藤慶吾 / 小向英孝

前回は天使、今回はお姫様。今泉が有名な童話の物語を天真爛漫かつちょっぴりおバカに書き換えていく。前回はあざとさに自覚的な役を演じていたが、今回はあざとさはなりを潜めていて無邪気な面が前面に出ている。物語のある場面で予測できない未来を選ぶその瞬間、それは今泉佑唯という"キャクター"を超えて今泉佑唯という"人間"にオーバーラップする。夕立も予測できない未来も、嫌いじゃない。

www.youtube.com

◼️尾関梨香『タイムスリップドロップ』

監督:田村啓介

高校の映画部を舞台にしたこれは『桐島、部活やめるってよ』か『幕が上がる』かってぐらいの青春ドラマ。尾関もイメージに似つかわしくないほどの正統派女子高生を演じている。ただこうやって普通の女子高生やらせると尾関超かわいい。ポニーテール尾関の正統派美少女感とベタな甘酸っぱいストーリーに胸キュン必須。途中で流れる音楽はあまり統一感なくて唐突な印象を受けるけど、設定もおもしろいし総じてだいぶ好き。

www.youtube.com

◼️齋藤冬優花『続 NIGHT RACER FUYUKA』

監督:曽根隼人

いや、まだこれやる?あと途中の「取れない」のくだり結局手伸ばして届くならいらなくないですか?セリフにメタ視点が加わったことが違いだけど、なんでこれもっかいやったの?が正直な感想。

www.youtube.com

◼️守屋茜『パーフェクト寝起きドッキリ』

監督:森田亮

前作『二人セゾン』の鈴本美愉の個人PV『鈴本ミユの秘密の告白』を担当した森田亮による作品。今作も守屋茜に早口を喋りに喋らせる。ただ鈴本のと比較すると今作はキャラを守屋のイメージ(本人が言いそう)に寄せた結果か、シチュエーションも実際のアイドル的になり、ダレはしないけど途中で飽きてしまう…。全く言わなそうなことをマシンガンのように言う方が面白い気が。絵的には終始かわいい。

www.youtube.com

◼️渡辺梨花『ベリカ2号機』

監督:谷健二・脚本:高木俊貴

渡辺梨花がアンドロイドって設定はハマっている。それは表情の変化や感情の起伏が見えづらいからかもしれない。そんな渡辺が普段は見せない、最後不完全なアイドルだからこその自分の覚悟を叫ぶ姿はじんわりクる。エンドロールのNGシーンで渡辺梨花"らしさ"に戻ってくるのも良い。ただなぜもう一人の自分に会う時は大体屋上なのか問題。

www.youtube.com

◾️齊藤京子高本彩花『アフレコ職人ず 齊藤&高本』

監督:タナカシンゴ

ラーメン部、腕相撲部、怪談部。3つの部活動を2人が演じるショートストーリー3本立て。と思いきや通常の撮影分とは別に全編2人がセリフから効果音までアフレコしたヴァージョン違いを加えた全6本のショートムービー集。「てくてく」や「とことこ」と言った効果音をつけたくなるような2人のチープでゆるい演技がまあかわいい。白衣と黒縁メガネ最高。ツインテール最高。靴箱から顔を覗かせる齊藤京子のかわいさは異常。ただ「男は星の数ほどいる」のきょんこ、ブルゾンちえみ…?

www.youtube.com

◾️小池美波『誕生日の女』

監督:大畑貴耶

まず喋り声が本当に可愛いですよね。どんなありきたりなモノローグも小池美波の声で聞くと耳が溶ける。最後漫才的掛け合いで関西弁になるのもGOOD。ストーリーは特にこれと言って言及することはないんですが。

www.youtube.com

◾️佐藤詩織『おねぇちゃんのプレゼント』

監督:大金康平

詩織お姉ちゃん…!失礼、取り乱してしまいました。子どもに絵本の読み聞かせをしていたら話が途中で切れてしまっていたため、自ら物語を描き足す詩織おねえちゃんのほっこり物語。赤のベレー帽とコートに身を包んだ姿が破茶滅茶に秋の装いで素晴らしい。佐藤詩織さんの愛らしい動物のイラストもかわいくて美術センスとおねえちゃんスキルが高次元で融合した佳作(適当)。ただ動物の鳴き声たまにエキセントリック。

www.youtube.com

◾️志田愛佳『たった一日の志田愛佳

監督:月田茂

はいはい優勝優勝。志田の自撮りムービーから始まった瞬間頭が3mぐらい後方に吹き飛んだ。内容は誕生日の日にカメラで街を撮影して回る志田の姿と写真、志田の自撮りによる語り映像で構成。ちょいちょい「にゃん」とか「にゃー」とか脈絡なく猫言葉をブッ込んでくるの意味不明とか、トドメの太陽コンピューターによるオリジナルソング「猫時計」(振りもかわいいし良い曲)もなんで猫?となっていたがオチでタイトルの意味も含めて伏線回収。志田がやらなそうな(嫌がりそうな)「甘いかわいさ」を引き出した設定が素晴らしい。「ねる超え」と言っても過言ではない志田の可愛さがフルスロットル。志田には絶対「超恥ずかしい」とか「なんでこんなのやらないといけないの」とかぶつくさ言ってて欲しい。

www.youtube.com

◾️土生瑞穂QUEEN OF COMMERCIAL FILMS』

監督:松田広輝

土生が架空の企業CMのモデルを務める今作。様々な商品に合わせてスタイルを変える土生ちゃんだが、一貫してシンプルにずっと可愛い。土生ちゃんは身長高くてスタイル良いから普通にモデルとか映えそう。コンタクトのCMで全身黒のシックな装いの土生ちゃんとか超カッコいい。東京デザインウィークでこういうのありそう(適当)。

www.youtube.com

◾️渡邉理佐『あの日の忘れ物』

監督:脇坂侑希

引っ込み思案でちょっとイケてないタイプの女の子を演じる渡邉理佐って珍しい。そんな女の子が50年後の世界からやってきた未来の自分に運命の男性に出会うと告げられる。その後の眼鏡を外して髪をほどき、イメージチェンジを果たす瞬間を収めた28秒間にこの個人PVの全てが詰まっていると言っても過言ではない。べりさってこんなに可愛いんですね。可愛いとは思ってたけどその想像の630倍上をいく渡邉理佐が観れる。最高です。

www.youtube.com

◾️潮紗理菜・加藤史帆・佐々木久美『夜は目映し踊れよ乙女』

監督:森岡千織

ドレスアップした3人が街角を闊歩する姿を捉えているんだが、可愛いは可愛いけどセリフもないし、なんかこう、もう一声欲しい。まあ3人いると難しいのかもだけど…。あと俗に言う「女子会っぽい女子会」を加藤史帆と佐々木久美がやるのはいいけど、潮ちゃんがやってるのはなんか嫌だっていうこの感じわかります??宇佐美宏さんの音楽は好き。

www.youtube.com

■織田奈那『コールミー』

監督:松本壮史

先生への淡い恋心を胸に抱く女子高生織田奈那。この時点で良いですよね。織田奈那の歌うオリジナル曲「コールミー」は作曲を先生役も演じているEnjoy Music Clubの江本祐介、作詞を監督の松本壮史、振り付けをロロの島田桃子が手掛けている。芝居から歌への入り方が舞台的。ラスト「あと◯秒」を繰り返してしまう織田奈那がいじらしくてかわいい。青春やね。

www.youtube.com

菅井友香『未来のわたしへ』

監督:柴田啓佑

ゆっかーお姉ちゃんやん。すみません、あたりまえ体操くらい当たり前のことを言ってしまいました。架空の映画の撮影を通して、菅井の見ている10年後の未来の菅井の姿を炙り出すフェイクドキュメンタリー。撮影の合間の菅井の姿はほっこりするし可愛いけど、正直わかりにくい。超能力研究部の3人かよ。 

www.youtube.com

◾️鈴本美愉『冥土のみやげ』

監督:立岡未来

亡くなったおばあちゃんに会いたいと願っていたらある日から成仏できない幽霊が見えるようになってしまった少女の話。鈴本が演じるのは幽霊とおばあちゃん想いの役なんだがこういう裏表のなさそうな健気な役がすずもんには不思議とよく合う。モノローグの話し声も無垢に響く。そして服はダサくてもすごい可愛い。鈴本美愉、地力が強い。

www.youtube.com

◾️長沢菜々香『しりとりっぷ』

監督:田村啓介、企画・作詞:本山香菜子

しりとりの果てに"ダンシングだっしー"という正体不明の生物を産み出した女子高生長沢がしりとりをしながら校内を旅する今作。長沢のしりとりしながら言葉を繋いでいく脱力系のラップと、小道具を使いながらコロコロと表情を変える抜群のチャーミングがもたらす摩訶不思議な世界を長回しで収めている。なーこの不思議キャラを全開にしつつ大正解な可愛さでまとめた良作。めちゃくちゃ好き。ただ持ってる筆記用具の癖が強い。

www.youtube.com

◾️平手友梨奈『>>> swIming/girrrrrl << <』

監督:大久保拓朗

平手のビデオはいつも肩に力が入り過ぎなのでは?もといお金を掛けて大人が本気出しすぎなのでは?まず他のメンバーと違ってコンセプト抜きにスケールの大きさと映像美だけでブン殴れる強さ。そして設定も物語ではなく世界観を重視し、衣装から音楽まで手の込んだ作りよう。当の平手もカメラを通せば意志の強い眼差しと年相応の屈託のない笑顔のコントラストがどこまでも眩しい。夢を夢見る少女はやがて目を覚まし、覚醒する。こんなに絵になる女の子はそうそういない。本当に引き込まれる。そりゃ大人がマジになる気持ちもわかる、が、一回『NIGHT RACER YURINA』やってみよ?

www.youtube.com

◾️米谷奈々未『三角関係関数』

監督:田平衛史

前回が文学少女なら今回は理系女子。米谷の勤勉な秀才っぷりを活かした数式物語は米谷ならでは。米さんの舌足らずなナレーションは可愛いしやりたいことはわかるけど、ただすまん、計算式のシーンが長くて途中で飽きてしまった…。

www.youtube.com

◾️井口眞緒影山優佳『ドーナツの変』

監督:こだかさり

影山優佳ちゃんのスタイルの良さが全世界にバレてしまう!!!!ドーナツのためにパン食い競争をする井口と影山、ドーナツのために「炙りカルビ」を連呼する井口と影山、ドーナツのために)ry。井口のポンコツおバカキャラ影山優佳ちゃんの常識人キャラのギャップでほのぼのと進行する映像は2人のナチュラルな可愛さを映していてニコニコオタクスマイル全開になってしまった。いや、こういうので良いんですよ僕は。あと影山優佳ちゃんのPKクソ痺れる。

www.youtube.co 

欅坂46「二人セゾン」個人PVレビュー

f:id:braineclips22:20171122014353j:image
石森虹花 『カワッテアゲル』

監督:住田宅英

「あなたじゃ無理」「代わってあげる」

突如現れたもう一人の石森(黒服)を、本当の石森(白服)が追い掛ける。強くなりたい自分と弱気になってしまう自分。ラスト、「私はできる」ともう一人の自分を捕まえて、自信を取り戻すストーリー展開は、現実の欅坂でいまだ一度もフロントに立っていない彼女のリアルな実情を重ねて見ると、結構シビア。「チャンスの順番」を聴いて諦めずに頑張ってほしいなって感じで…。

www.youtube.com

今泉佑唯『落ちてきた天使』

監督:タナカシンゴ

あざとい天使のキャラと恥じらいの残る演技が良い塩梅でぶりっ子キャラを掻き立ててる。本人はどちらかと言えばおバカで天然なのだろうけど、乃木坂でいう秋元真夏のようなキャラは欅坂にはまだいないので、ぶりっ子役はこれからも引き受けてほしい。洗濯物を畳む時の畳み方が雑、おまけに料理も下手、そんな愛くるしい天使役が最高にハマってる。

www.youtube.com

■尾関梨香『もじもじ探偵尾関ちゃん』

監督:田村啓介

まず服がかわいい。モジモジヘラヘラしながら自己紹介するところがかわいい。文字に関する特殊なトレーニングを受けた(という設定)のもじもじ探偵だけあり、文字を組み合わせる謎解きは意外と凝ってるが、基本的に内容はないので、ただヘラヘラユラユラしている尾関のかわいさを見守る作品。お笑いキャラは織田、天然は今泉、不思議ちゃん・大食いは長沢とキャラ被りの渋滞に巻き込まれ中々クローズアップされず、「欅って、書けない?」での「運動音痴で動きが変」ということが見せ場になることが多いけど、こういうヘラヘラしたかわいさは尾関が一番似合ってる。

www.youtube.com

小林由依『こばやし荘は住人十色』

監督:丸橋俊介/阿部至

101号室の住人、かわいい。102号室の住人、神。103号室の住人、かわいい。104号室の住人、やらされてる感がいい。105号室の住人、かわいい。106号室の住人、指がいい。107号室の住人、シンプルに良い。108号室の住人、かわいい。109号室の住人、神。大家、かわいい。端的に言えば小林由依の十変化なのだが、アパートを舞台にホラーとしてのオチがつくのもおもしろい。何よりメイキングが最強に可愛い。優勝。

www.youtube.com

佐藤詩織『Ballet』

監督:山本花観

バレエスクールでの本人インタビュー。「なぜアイドルになろうと思ったのか?」という問いへの答えには佐藤詩織の人柄が出ているし、レオタードに身を包んだナチュラルメイクの彼女はかわいいけれど、最後に舞台で衣装を着てバレエを披露するところまでそのまま過ぎる気もする。別に個人PVでこれやらなくていいのでは。

www.youtube.com

菅井友香『僕のクラスの学級委員』

監督:ねむことよるこ

菅井友香が学級委員という設定がいい。ゆっかーお姉ちゃんここにあり。内容に関しては正直よくわからない。

www.youtube.com

鈴本美愉『鈴本ミユの秘密の告白』

監督:森田亮

鈴本美愉に早口を喋らせた監督は天才だ。映像の9割がお風呂場で展開されるが、全くダレずにあっという間にエンディングを迎える。テレビの前と楽屋でキャラが違うと言われる彼女だが、この作品は後者の彼女を引き出してるんじゃないか。クールでキツめの彼女とは違うおっちょこちょいで愛らしい、これは良いすずもん。

www.youtube.com

原田葵『ねぇ ねぇ 聴いて』

監督:上田真紀子

「机を叩く音」、「チョークが黒板をなぞる音」、「バスケットボールが地面を打つ音」、「カスタネットを弾く音」、「クラッカーを開く音」、「紙を丸める音」など、原田葵の様々な音を生むアクションを連続して繋いだ今作。メトロームのような無機質に反復するテンポの上で、一挙手一投足の全てに実年齢以下の幼さの残る原田葵のあどけない魅力と、World’s end Girlfriendや蓮沼執太のバックでもドラムを叩くJimanicaの音楽が不思議な融合を果たしている。Type-B収録の個人PVの中では最もコンテンポラリーな作品で、映像のカットとリズムや音のテンポの良さが視覚と聴覚をくすぐる。しかし原田葵ちゃんは本当に高校生なのだろうか、小学三年生の間違いなんじゃないか。でもこの先絶対もっと可愛くなるし美人になりますよね。あと10年はアイドルをやってくれ、頼む。

www.youtube.com

■織田奈々『カッパの好物』

監督:脇坂侑希

白ニットに手料理と、デフォルトなぐらい女の子っぽい織田奈々を見れる。「欅って、書けない?」のお笑いキャラのイメージが強くて、どうしても織田奈々を王道の「かわいい」という目で見れなくなってしまってるけど、当然のことながら美形だしかわいい。このまま欅坂のオカロになってしまうのか。あとカッパとの出会いの場面やキュッキング、エンドロールで使われている音楽が好き。

www.youtube.com

■小池美波『転校生探偵・真壁川ナツ』

監督:磐木大

もじもじ探偵と被ってるやん!それはさておき関西弁で自分のことを「ウチ」と言う小池美波ちゃんがかわいい。あと突然関西弁でキレる小池美波ちゃんもかわいい。ドヤ顔の小池美波ちゃんもかわいい。これも特にストーリーに内容はない。尾関の『もじもじ探偵尾関ちゃん』は「モジモジ」を与えることで彼女の持つかわいいを引き出した感じがあったけど、こっちは素の小池の可愛さがそのまま出てる感じ。

www.youtube.com

齋藤冬優花『NIGHT RACER FUYUKA』

監督:曽根隼人

オープニングのパルクールを駆使したアクションシーンやCGなど、他のメンバーの作品に比べると映像技術としてはかなり凝って作られている。ミニ四駆が好きだったのでレースシーンはテンション上がる。でもこれ齋藤冬優花さんの必要なくない?主人公そのまんまヨシキくんじゃない?

www.youtube.com

土生瑞穂『僕の彼女は吸血鬼』

監督:高木俊貴

吸血鬼という設定と「エピグランマタ」や「ダークシャドウ」からの引用がアクセントになっているが、基本的には「僕の彼女が土生瑞穂だったら」を体感できるガチ恋製造作品。フィルターかかった映像も綺麗で、彼女の美形で整った顔立ちと相まってショートフィルムのよう。セリフや顔のアップのシーン、甘い声で「キス」という単語を連呼し言い寄る場面、土生supreme瑞穂です。

www.youtube.com

平手友梨奈『てち浪漫』

監督:豊島圭介

明治時代の異人館平手友梨奈の底知れない魅力に取り憑かれた男の恋文を、侮蔑を込めたかのような声色で平手が朗読する。「子どもで大人」。真っ赤なワンピースは幼く、妖艶。最後の最後に15歳の少女の声と表情を覗かせるが、それすらも"素の平手友梨奈"ではない"15歳の少女"の演技なのだろう。個人PVはそのメンバーの魅力を引き出すものが多いが、この作品は平手友梨奈本人の魅力ではなく、スイッチの入った平手友梨奈の"演じる"凄みを捉えた作品。この作品だけ関わってるスタッフの人数が他のメンバーよりも明らかに多いし、力の入れようが否応なしに伝わってくる。

www.youtube.com

守屋茜『KICK'N'CLEAN』

監督:加藤マニ

音楽がいい。服はちょっとダサい。えーっと、あんまり言うことがない。

www.youtube.com

■米谷奈々未『文學ガール』

監督:藤枝憲/須藤中也

竹下夢二『秘密』、太宰治『女生徒』、夏目漱石夢十夜』の3つの文学作品を朗読する米谷。自然の中に立つ制服姿の米谷の映像が、その作品の表現の一つ一つをより際立たせている。「美しい目の人と 沢山会ってみたい」、湖の中に入って傘差してるシーンが個人的なハイライト。個人の魅力というよりは、映像と文学との調和の上に成立している作品。米谷は「和」のイメージが強いし、こういう文系路線は非常に好き。あとはもうちょっとだけ舌足らずな語り口がどうにかなれば。

www.youtube.com

渡辺梨加『私の好きな人。』

監督:橋本侑次郎

眼鏡かけてる渡辺梨加を見れるだけでもう十分ではあるが、不思議キャラや天然キャラを使ってシュールやポップな方向に逃がすのではなく、正面から"恋する女の子"を渡辺梨加さんに演じさせてくれてありがとうございますって感じで。意外とこういう渡辺梨加は珍しいと思う。ノースリーブのチェックのワンピースに眼鏡、100点。手紙に口紅でハートマークを書くシーン、1000点。

と途中までは思ってけど、オチはやっぱり渡辺梨加だった。でもそこも含めてめちゃくちゃ好き。

www.youtube.com

上村莉菜『煙に巻く』

監督:中島望

奔放でわがままな上村莉菜は最高にかわいい。もうとにかくかわいい。そしてタイトルも伏線になっていて、最後に少しドキッとさせられる。なんにせよ、女の子がかわいく撮れてる映像は偉い。

www.youtube.com

志田愛佳『ドラムス・シンバル・サバイバル』

監督:川口潤

渡邊理沙とともにザ・クールと言われる志田だが、そのイメージとは異なり内面は熱く、芯の通った信念を持っており、その意志を鼓動という形でドラムのビートで表現した、という風に解釈を勝手にしましたがどうでしょうか。ラスト、振り向いて見せる笑顔を見れば、そんな解釈は瑣末な問題なんですが。

www.youtube.com

■長沢菜々香『私の夢』

監督:土屋隆俊

特技のバイオリンを張り詰めた静寂の中、ドレスアップして演奏する長沢菜々香の普段のキャラとのギャップがすごく、非常に女性的な彼女にドキッとさせられる。特技披露と本人コメントという意味では佐藤詩織の『Ballet』と大きく変わらないはずなのに、こちらの方が「おぉ!」という新鮮さがあったのは、個々に対して持ってるイメージとギャップがあったからだろうか。掘れば掘るほど隠し持っている。なー研入りたい。

www.youtube.com

■渡邊理沙『Love Letter』

監督:月田茂

ぶっきらぼうで不器用な女子高生が、初めて好きになった人にラブレターを書くも相手から先に告白されてしまう。渡辺梨加の『私の好きな人。』も意中の相手に手紙を書くという話だったが、最後に自分の好きな人が誰かを忘れてしまい「ま、いっか」とすませてしまう渡辺梨加と、好きな人に先に告白され「なんかつまんない」と自分の手紙を破り捨ててしまう渡邊理沙。同じシチュエーションではあるが、お互いのキャラが導く異なる結末が好対照に光る。あと告白された瞬間に「なんか急に世界の音が聴こえだした」と音楽が流れ出す演出、ベタかもしれないけどそこからのカットが正に色が付いたように映ってとてもいい。渡邊理沙の表情には心の内を読ませないミステリアスな魅力がある。

www.youtube.com

■長濱ねる『じぶんルール』

監督:柴田啓佑

転校を目前に控え「自分の決めたルールが果たされたら彼に告白する」、と決心するも、中々うまくいかない女の子を演じる長濱ねる。現実の長濱も長崎から上京し、東京の高校に転校したため元々通っていた長崎の高校の卒業式には出られなかった。そして親にアイドルになる道を反対され、一度は夢を諦めた。この物語の主人公は、そんな現実の長濱ねると大きくシンクロしている。作中の彼女が最後「ルールは破るためにある」と、自分で決めたレールを離れた先に待っていた結末。演技も思ったより自然で違和感なく、長濱ねるの良さが120%で出ている最高のビデオだと思う。「余は満足じゃ〜」って周るとこ、最高にかわいい。

www.youtube.com

サヨナラの意味 - 橋本奈々未卒業に寄せて

f:id:braineclips22:20171122014549j:image
16thシングル

2016年11月9日。乃木坂46の16枚目のシングル『サヨナラの意味』がリリースされた。この曲は初期より乃木坂46の中心メンバーとしてフロントに立ち続けてきた橋本奈々未が初めてセンターを務めた楽曲であり、そして同時に、彼女の最後のセンターを飾る1曲となった。

表題曲「サヨナラの意味」は、美しいピアノのイントロに始まり、ストリングス、エレキギター、シンセ、そしてボーカル、コーラスと、それぞれのパートが曲が進むにつれ重なり合い、厚みを増していくミディアムバラードだ。「サヨナラに強くなれ」。選抜メンバー19人による重層的な歌声は、ただ悲しみに暮れるのではなく、別れを受け入れ、前に踏み出そうとする凛とした力強さを放っている。それは新しい一歩を踏み出す橋本の背中を押すような力強さと、見送る者の寂しさに寄り添う優しさに満ちている。まるで曲そのものが、彼女の芯の通った、しなやかな人柄そのものを映しているかのように。

昨年の6月に、乃木坂46からは深川麻衣がグループを卒業し、同年3月には彼女を送り出す作品として、乃木坂としては初めて、明確に一人のメンバーの卒業を受けたシングル、『ハルジオンが咲く頃』がリリースされた。同じ卒業ソングながら、この曲は去っていったものが残した慎ましさと逞しさ、温もりを感じさせる作品だった。ハルジオンの花言葉は「追想の愛」。もうここにはいなくても、その淑やかな美しさを何度でも思い出す。メンバーやファンから「聖母」と呼ばれた深川麻衣を思わせる、慈しみをたたえた楽曲だった。どちらも別れをテーマにした曲だが、「サヨナラの意味」には、別れへの揺るぎない決意が宿っていた。

最初で最後の握手会

2016年11月23日。幕張メッセで行われた全国握手会に行った。人生初の乃木坂の握手会。これまで一度も握手会には行かなかったが、橋本奈々未と握手できる最後のチャンスだったので、意を決して始発に乗り込んだ。幕張メッセに着いたのは午前6:30頃。 ミニライブが始まるのは午前11:00。4時間30分の待ち時間。でも不思議と苦ではなかった。これから橋本奈々未に会えるのかと思うと、何を話そうか、何を伝えようか、たった数秒の与えられた時間を使って、後悔ないと思えるほど自分の気持ちを正しく伝えられる言葉は何か、そればかり探していた。

午前11:00、ミニライブが始まった。披露されたのは表題曲「サヨナラの意味」を含めた、シングルに収録されている全7曲。初のライブ歌唱となった「ないものねだり」では、橋本が生歌を披露していた。歌が得意な人ではなかったと思う。緊張で声が震えていたようにも思う。けれど時折音程が不安定になりながら、言葉を綱渡りに紡ぎながら、無事に最後まで歌い切っていた。歌い終えた後、安堵からか、表情が緩み笑顔を見せた橋本の表情が印象的で、その姿を見れたことが嬉しかった。

握手会の列に並び始めたのは13:00頃。そこから握手会の会場に入るまで1時間ほど待つ。深川麻衣の卒業前の最後の全握が4時間待ちと聞いていたので、同じか、それより少しかかる程度の待ち時間は覚悟していた。もとより既に5時間以上待っているので、ここまでくると時間の感覚は麻痺している。

14:00頃、橋本奈々未レーンに入る。彼女との握手を待つ人で途方もない長さの列ができていたものの、「いよいよこれから会えるのか」という期待と緊張の気持ちの方が遙かに勝っていた。橋本がラジオやブログで好きと言ってはばからないSuchmosを聴いてその時を待つ。

待つ。待つ。iPhoneに入ってるSuchmosの曲は全て聴き終えた。アーティストを変える。

待つ。待つ。並び始めて2時間が経つ。幕張メッセの9〜11ホールに横たわる何重にも折り返した巨大な列の半分にも達していない。目を疑うような光景を前に、このままだと握手できるまでどう見積もってもあと4時間はかかると気づく。冗談のような現実を目の当たりにし、自分のやっていることが、途轍もなく罪なことのように感じられ、寒気がした。たった数秒の握手のために6時間待つ、どう考えても普通ではない。何よりも握手のために6時間待つということは、それ以上の時間、彼女はファンと握手をし続けるということだった。その列に並ぶということは、彼女の心と体を酷使することと同じことのように思えた。湧き上がる罪悪感と反吐の出そうになる気分から逃げたくなり、今すぐその場を離れてしまいたくなる。でも「この最後のチャンスを逃してお前は一生後悔しないのか」という声が頭をよぎった。なんのために今日ここに来たのか、これが本当に最後だぞ。そのもう1人の自分の、言い訳のような訴えが頭から離れず、その場から動くことができなかった。

待つ。待つ。どれだけ待っただろうか。楽しみなどという気持ちはとうに消え失せ、申し訳ないという罪悪感が寄せては返す波のように何度も訪れ、それでも並び続ける矛盾した自分を呪い、答えのない葛藤の中振り切った、ここまできたらやるしかないという放棄にも似た決意さえ見失うほど、ただただ時間が流れていった。

20:00、橋本奈々未レーンに入り6時間が過ぎた。最後の一列がやってくる。握手の時が近づくにつれ、それまで疲弊し、神妙な顔をしていたはずの周りのファンがみな、表情が生き返り、目が輝き始めた。もちろん自分もそうだった。「何を話そう」。それまでの6時間がなかったかのようにみな、目と鼻の先までやってきた未来の話に声が弾んだ。"アイドル"という存在の業の深さと、尊さを目の当たりにしたようで、そしてその形容しがたい何千人という人間の清濁併せた感情の渦の全てを、その身一つで受け止めようとする橋本奈々未という人に抱いた感情は、言葉にはなれず、心に溶けていった。

握手の時。間近で見る橋本は、テレビや雑誌で見るよりももっと華奢で、か細く、手も小さかった。椅子に座った彼女と握手をする。握り返す力はないに等しい。目が合う。

「アイドルになってくれてありがとうございます」

『ありがとう』

「ずっと、元気でいてください」

『ありがとう』

時間にして4秒。最初で最後の瞬間は、呆気なく終わった。その声は小さく、吹けば消えてしまいそうだった。ただ次の人と握手をする瞬間まで、離れ行く自分からも、彼女は合わせた目を一度も逸らさなかった。

「アイドルになってくれてありがとう」なんて、残酷な言葉だと思った。アイドルになったせいで経験した嫌なこと、辛いこと、悲しかった、忘れたいことさえ全て肯定してしまうような言葉だと思った。でも、絶対にそれだけではないはずだった。何より自分は、彼女がアイドルになってくれたから出会えた。アイドルだったから好きになれた。だからその選択に感謝したかった。乃木坂46になってからの、彼女のこれまでの全てに感謝したかった。

アイドルになってよかったと、思っていてほしかった。 

20:30、会場を後にする。どうするのが一番正しかったのかは未だにわからない。今なら違う言葉をかけたかもしれない。でも帰り道、「握手することを選んでよかった。」、それだけは確かに感じられた。

その日、橋本奈々未の握手が終了したのは、23:00を回った頃だった。

ラストライブ

f:id:braineclips22:20171124171752j:image

2017年2月20日乃木坂46の5th YEAR BIRTHDAY LIVE初日、そして橋本奈々未の誕生日でもあり、彼女が乃木坂46を卒業し、芸能界を引退する最後の日がやってきた。天気は曇りのち雨。二度と使うことはないとわかっているグッズを鞄に詰め、さいたまスーパーアリーナへ向かう。

場内に入ると、乃木坂のライブでは最大規模の、全面にLEDを配した巨大なメインステージと、会場中央にはセンターステージ、そしてそこから十字に伸びた花道が広がっていた。スタンド席の最上段からメインステージ裏のバックステージ席まで全て解放され、平日の18時開演にも関わらず、さいたまスーパーアリーナのスタジアムモードが35,000人もの人で埋まっていた。チケットの取れなかった人や地方に住む人、仕事や学校、色んな事情のあった人。来たくても来れなかった人が沢山いたであろう中、自分がこの場所にいれることは、少なくない幸運の巡り合わせのおかげなんだと、ふと思った。

開演。オープニング映像が流れる。紅白の楽屋での映像のようだ。みんなで手を繋ぎ円になり、2017年へのカウントダウンをしている。5.4.3.2.1.…「ハッピーニューイヤー!」。新年を祝福する輪の中で、誰かが言った「あと2ヶ月あるよ」。その言葉とともに、涙に目を抑える橋本の姿が映る。 

映像が終わり、センターステージに橋本が1人現れた。静寂の中、深々と一礼する彼女。1曲目は「サヨナラの意味」。最後のライブが始まった。

桜井「今日はどんなライブにしたい?」

橋本「私自身もこういうステージに立つのが最後になるから、この景色を焼き付けつつも、それ以上に、…皆さんが帰った後も、こびりついて離れないようなライブにしたい。」

この日はBIRTHDAY LIVEだったが、従来の時系列で乃木坂の歴史を追っていく曲順とは異なり、デビューから最新曲「サヨナラの意味まで」、曲を橋本自らもセレクトし、それぞれのシングルとアルバムから順番に披露していく「橋本奈々未」という人を振り返るようなセットリストだった。シングル曲は、その曲のセンターのメンバーに加え、橋本もセンターに来るスペシャルなフォーメーションで披露された。「指望遠鏡」、「やさしさとは」、「僕が行かなきゃ誰が行くんだ」、「革命の馬」、「ボーダー」、「制服を脱いでサヨナラを…」、「ここにいる理由」、「君は僕と出会わないほうがよかったのかな…」、「自由の彼方」。どれもシングルのカップリングやアルバム曲だが、どの曲も卒業ライブという別れの日に聴くことで、いつもとは違う意味合いを持ち、別の表情を見せていた。ただ卒業ライブの日であっても、自分の参加していないアンダー曲やユニット曲も関係なく入ったセットリストに、橋本の乃木坂46への想い入れや、その曲をパフォーマンスするメンバーへの愛情を感じた。橋本が乃木坂の曲で1番好きという「生まれたままで」は、同じ2月20日生まれの伊藤万理華とともに、センターステージの最上段で背中合わせになりながらの披露。曲が終わると、サプライズで伊藤万理華への誕生日ケーキが用意されていた。奈々未の卒業コンサートなんだからと、橋本を立てようとしゃがむ伊藤。万理華だって誕生日なんだよと、伊藤を祝おうとしゃがむ橋本。35,000人の中心にいた2人は、誰よりも小さくなり、笑い合っていた。

桜井「めっちゃ息切れてるね。」

橋本「やっぱりね、全てを出し切ろうとすると、息が切れちゃうね。」

桜井「珍しく汗かいてる。」

橋本「本当?」

桜井「綺麗だよ。」

橋本「(照笑)」

桜井「最後だから言っちゃった(笑)」

MCでのメンバーとの何気ないやりとりにも、終わりの時が近づく。

橋本「(センターステージで、行ったり来たりを繰り返す)こうしてみんなを見るのも、これが最後なんだなと思って。」

橋本「次が最後の曲になります。」

メンバーと抱き合いながら、笑顔の「孤独な青空」で、本編は終了した。

アンコール、衣装を着替え、1人現れた橋本。

橋本「私は「ないものねだり」という曲を歌っているけど、「ないものねだりしたくない」って歌っているけど…、こんなに素敵な景色を何度も何度も目の前にしているのに、別の道を進みたいと思うのが、いちばん「ないものねだり」だなと感じてます。」

橋本「私が選んだ道が正解であることを願い、きょう皆さんが私とお別れして、その先に、皆さんの道に、楽しいこと、うれしいこと、幸せなこと、これでよかったと思えることがたくさんあることを願っています。 」

そうして歌われた「ないものねだり」。

歌が得意な人ではなかったと思う。涙で声が震えていたようにも思う。途中、言葉に詰まる瞬間もあった。それでも自分の心の内をファンに伝えるように、揺るがない決心が、揺らぐことのないように、胸を張り、最後まで歌い切っていた。

「ないものねだり」の後のMCでは、サプライズで白石から橋本への手紙が読まれた。白石が泣きながら手紙を読む間、目に涙を浮かべながらも、橋本は白石の目を離さなかった。それは握手会の時、自分の目を見続けてくれたその姿と同じだった。

乃木坂46橋本奈々未、白石麻衣の手紙に号泣 卒業スピーチ&白石手紙全文 | ORICON NEWS

(手紙を読み終えて)

白石・橋本「ティッシュください(泣)」

白石「泣いてる私ブス」

橋本「かわいいよ」

白石「そっちこそ!」

橋本「うっ、やられた(泣)」

※白石と橋本が過去に明治チョコレートのCMに出演した際の2人のやりとり 

そして本当のラストへ。

橋本「アリーナのみんなありがとう。スタンドのみんなありがとう。上の席のみんなありがとう。ステージ裏のみんなありがとう。ペンライトを緑にしてくれてる人ありがとう。今手を上げてくれている人ありがとう。立ってくれてる人ありがとう。今日ここに来て、私を見てくれてありがとう。」

一つ一つに感謝の言葉を告げ、ステージ下手に向かい、移動式のステージに立ち、その時を迎える。アンコール最後の曲は「サヨナラの意味」。

移動式のステージに1人立ち、ファンに手を振りながら場内を一周する彼女。

「後ろ手でピースしながら 歩き出せるだろう」

ファンに背を向け、後ろ手でピースをしてみせる彼女の強さが、眩しかった。

「サヨナラに強くなれ」。乃木坂46全員による歌声は、悲しみを振り払うように、何度も、何度も、繰り返された。

ステージに並んだメンバーが1人ずつ、橋本と別れの言葉を交わし、ステージ裏へ下がっていく。齋藤飛鳥は、橋本の伸ばした手に応えようとせず、彼女の肩で泣いていた。最後の白石とは、マイクにも聞こえない2人だけの会話をし、お互いのこれまでの日々を認め合うように抱き合った。

「おわった!」「さようなら!」

会場上空へと上がっていくゴンドラの上で、最後の瞬間まで深く下げた頭を一度も上げないまま、約3時間半に及ぶライブと、5年半に及んだ橋本奈々未乃木坂46としての最後のステージは、幕を下ろした。

握手会の時に見た橋本奈々未は、散る寸前の花のようだった。華奢な体で、握り返す力も弱くなった小さな手で握手をし、それでも語りかけるファンの目は絶対に離さずに、全ての言葉に頷き、全てに言葉を返していた。その姿はあまりに儚くて、いますぐ散ってしまいそうだった。

でも卒業コンサートで見た橋本奈々未は、沈んでゆく夕陽のようだった。もうすぐ目の前からいなくなってしまうことなんて忘れさせるほどに、どこまでも眩しくて、何よりも輝いていた。人生で見た全ての中で、一番綺麗だった。見る人を照らす太陽は、その姿が彼方に沈んでも、また別の場所で昇り、その褪せることない輝きで、誰かを照らすのだろうと思った。

どうしたらこんな人になれるんだろうか。どうしてアイドルは、最後が一番美しいんだろうか。答えは見つからないまま、涙が止まらなかった。楽しいも、好きも、悲しいも、寂しいも、辛いも、全てが霞んでしまうほど、美しい最後だった。

サヨナラの意味

2017年2月23日。オフィシャルとしては最後の仕事となったSCHOOL OF LOCKの放送。ファンへ残した最後の言葉を聞いて、間に合ってよかった。この人と出会えてよかった。好きになれてよかった。ただ、そう思った。

https://youtu.be/5qkvSvJ5ZGo

 

2017年2月24日。最後のモバメが届いた。これが本当に、本当の最後。あっさりとした文体。簡潔な言葉。オセロの石が、一手で全てひっくり返るような、手にとって触れそうなほどの決意。余りにも軽やかで、そして力強い志を目の当たりにして、いつまでも悲しみを引き連る自分が恥ずかしくなった。握手会の時、瞬き一つせず自分の目を見続けてくれたように、彼女の視線は今、揺らぐことなく、目の前に広がる未来を見ているのだろう。

なんで彼女を好きになったのか考えた。外見の好み、もちろんめちゃくちゃある。可愛い子や綺麗な子は世の中に沢山いる。乃木坂なんて更に可愛くて綺麗な子しかいない。その中でも、顔も髪型も、ショートヘアーもロングヘアーも、ブランドや値段より好きなものを選んで着こなす服装も、所作も、極端なことを言わず自分と相手のことを考えて慎重に言葉を選ぶ言葉遣いも、優しくて、でもメンバーにもファンにも媚びない、人への接し方も、一番好きだった。何かのインタビューで好きな男性のタイプを聞かれた時「言葉がやわらかい人」と言っていて、そういう人間になろうと密かに思った。

音楽の趣味が自分に近いことにも勝手に親近感が湧いていた。以前ブログで好きなアーティストを書いた時、その内の一人に細美武士と書いていた。自分も彼のことが好きで、そしてELLEGARDENthe HIATUSとバンド名ではなく「細美武士」と書くところに、1人シンパシーを感じていた。最近ではSuchmosの話をすることも増えたけど、Suchmosを好きと言いながら、キュウソネコカミに感動する橋本奈々未が好きだった。

他にも好きなところを挙げれば沢山ある。でも、きっと1番好きだったのは、物事の考え方や生き方だったんだと思う。

「自分に正直に生きていたい」。

最後のアップトゥボーイのインタビューで語っていた言葉。客観的に物事を見つつも、ブレない自分の考えや意志をしっかり持っていて、感じたことを、時に素直すぎるほどに表に出す人。モバメでファンに思っていることをぶつけることも少なくなかった。正直そのメールを読むと、しんどい気持ちになることもあった。でも思い返せば、ブログでも昔からファンにもハッキリと思ってことを言っていた人だった。スタッフや関係者には"子供っぽい"ところもあると、メディアで書かれていたこともあったけど、それは自分の気持ちに正直であろうとしたことの裏返しだったんじゃないかと思う。卒業を発表したANNで、桜井と生田を呼んで「(この2人は)ズルくない」と言ったことが、ファンの中で憶測を呼んだこともあった。でもそれも、この2人は自分自身に対して嘘をつかない人だと、言いたかったんじゃないかと思う。ファンの目に見える部分なんてほんの一部で、全てはこちらの都合のいい解釈でしかないけれど、それを信じられるような、まっすぐな人だったと思う。

サヨナラは、その人がいたことの証だ。そしてサヨナラの数だけ、残るものがある。自分にとって、橋本奈々未が残してくれたものは生き様だ。

自分が人生でこの人のようになりたいと思っている人が一人いる。そしてそこに、橋本奈々未も加わって二人になった。それが自分より年下の女性アイドルになるとは思わなかったけど、カッコいいことや美しいこと、尊敬できるということに、年齢も性別も職業も関係ない。人生という道で、何千マイルも先を走る彼女の背中に追いつけるように、自分に正直に、自分らしく、自分の選んだ道を、自分で切り開いていく、そういう風に生きたいと、強く思った。「幸せになってほしい」なんて言葉を彼女にかけるのは100年早かった。まず自分自身が、それに足るふさわしい人間になりたいと思った。

ずっとありがとうございました。本当にお疲れ様でした。

出会えて、好きになれて、心から良かった。

こんな気持ちにさせてもらって、あんなにカッコよくて、美しい卒業を見届けさせてもらった自分は、アイドルファンとして、最大級に幸せなんだと思う。悲しいし、寂しい。それでもなお、これ以上望めないほどに、自分は幸せなファンだと思う。

いつか偶然でも、どこかで会えたらいいな。その時には「あなたのおかげで幸せになれました。」そう目を見て言えるような、正しい人間になっていたい。そんな期待は持つべきではないけど、期待が希望になって、希望が未来に変わるなら、夢見るぐらいは許してほしい。

 

でもそう望んでしまうのはきっと、ないものねだりなんだろう。

 


乃木坂46 『サヨナラの意味』


乃木坂46 橋本奈々未 『ないものねだり』

橋本奈々未 school of lock!最終回

 

 

新たなS.T.A.G.Eへ - lyrical school one man live 2014@LIQUID ROOM

元記事掲載:音楽情報ブログ『musicoholic』

【ライブレポ】lyrical school one man live 2014@LIQUIDROOM : 音楽情報ブログ『musicoholic』

■新たなS.T.A.G.Eへ

f:id:braineclips22:20171115011723j:plain

2014年11月2日。ヒップホップアイドルグループlyrical school(通称リリスク)の今年2度目となるワンマンライブが開催された。会場は恵比寿LIQUIDROOM。前回2月に行われたワンマンライブの会場だった渋谷WWWからキャパシティはおよそ2倍以上。当初このライブが発表された時、「本当に埋まるのか?」と懐疑的な見方をする人も少なくはなかった。しかし、当日は若干数の当日券も販売されたが、最終的には完売。会場は最後方まで人で埋め尽くされ超満員となった。

 開演30分前の16:30頃、この日オープニングDJを務める九州のアイドルグループLinQ深瀬智聖がステージへと現れる。以前、新宿MARZで行われた『PARADE』のリリース記念イベントにも彼女は出演しており、“S.T.A.G.E”では競演を果たしていた。アイドル界きっての日本語ラップリスナーでもある彼女が最初にかけた1曲目は、EVISBEATSの“揺れる feat.田我流”。熱気と期待が充満したフロアをほぐすかのようなメロウなムードが会場を包む。その後も比較的ゆったりとしたチルな楽曲が続くが、今か今かと爆発を待つ会場との客席の反応を見てか、SUGAR SOULの”今すぐ欲しい”をプレイ中に深瀬は「やっぱこの曲やめるね」と言い途中でKICK THE CAN CREWの”スーパーオリジナル”へとチェンジ。その後は一転攻め曲選曲で客席を沸かしていく。それに呼応するように、フロアも徐々に熱気を帯びていく。時折自身のプレイが今日はイマイチだとこぼす一幕もあったが、終止会場を縦に、横にと揺らし、最後は再びセンチメンタルな楽曲で短い時間ながらもDJタイムを締めくくった。

 前回の渋谷WWWでのワンマンライブの際、同様にオープニングDJを務めたNegiccoのMeguがアイドルソング中心のセットリストだったのとは対象的に、この日の深瀬は終止硬派なHIPHOP中心の選曲だった。だが『PRIDE』というラップチューンをリリースした今のリリスクのモードには、深瀬は適任だったのではないだろうか。HIP HOPのグルーヴの余韻を残し、本日のメインアクトへとバトンを渡して彼女はステージを降りた。 

 

【DJ CHISEI セットリスト】

EVISBEATS / 揺れる feat.田我流

Chara x 韻シスト / I don’t know

RYMESTER / ちょうどいい

SUGAR SOUL / 今すぐ欲しい

KICK THE CAN CREW / スーパーオリジナル

餓鬼レンジャー / ラップ・グラップラー餓鬼

ラッパ我リヤ / Check 1,2

韻踏合組合 / 一網打尽(Remix) Feat. NORIKIYO,SHINGO★西成,漢

SALU / ホームウェイ24号

RIP SLYME / ONE

Charisma.com / Mr. BEER

 

そして開演時刻の17:00。照明が落ちる。

この日のライブのチケットが一番最初に発売されたのは、今年4月に大宮ステラタウンで行われたメンバーmeiの生誕イベントの時だった。最も早くチケットを手に入れたファンからしてみれば、数えれば半年以上。

「この日が来るのを待っていた」

 それはメンバーだけでなく、ファンも同じだった。バックスクリーンに楽屋口からステージへと向かう6人の姿が映し出され、暗転。 

「ナナナナナ ナイスなスクールって誰?」

点滅する激しいフラッシュと共に、アカペラの”brand new day”が場内に響き渡る。この日集まった約1000人の観客は、全員彼女達を見にきたのだ。皆その名を知っている。

リリカルスクール!!!!!!』

ヘッズ(リリスクのファンの呼称)の大歓声と共にリリスク史上最大規模のライブは盛大に幕を開けた。

“Myかわいい日常たち”ではyumiが一瞬顔を下に向け、涙をこらえているような場面もあったが、次に顔を上げた時は満面の笑みで客席を見つめていた。“決戦はフライデー”では歌詞を「決戦のリキッドルーム」と変えるアドリブを見せるなどmeiも絶好調だ。見た事のない数のファンを前に、驚きと喜びと、時折襲ってくる感傷をないまぜにしながら、その全てを塗り替える笑顔のステージがそこには広がっていた。

その後も次々と、全てフル尺で休む事なく曲が畳み掛けられる。バックDJを務めるマネージャーの岩渕の繋ぎも滑らかで、ショートフィルムを見ているかのように情景が移り変わってゆく。
ノンストップで8曲連続歌ったところで、ようやく最初のMCへ。

しかし、自己紹介もそこそこに、すぐさま続いての曲へと彼女たちは進む。

リリスクは普段のインストアイベントでもMCを最小限しか行わない。MCを通して滲み出る彼女達のパーソナリティもリリスクの魅力だと思うが、それ以上に、曲とステージで見る人を惹きつけたい、惹きつけられるという自信が今の彼女達にはあるのだろう。そんな彼女達の気概を代弁するかのように、岩渕もその手を休めることなく曲を繋いでゆく。
MC明けはアーバンな夜の雰囲気へと誘うメロウなパートへと進む。

“しってる/しらない”では曲終盤からメンバー全員がステージの前方の淵に座り、肩を寄せ合い歌い始める。そしてそれに呼応するように、誰が言い出すわけでもなくファンも前方から座り始める。ギュウギュウのライブハウスで、ファンも肩を寄せ合う。 

“抜け駆け”を歌い終わったところで、少しの静寂の後、6人の口からそれぞれ、これまでを回想するモノローグが始まる。

最後に、リーダーのayakaが言う。

今は胸を張ってこう言える

「ラップをするのは楽しいです」

最初は韻が何かもわからなかった。それどころかラップを聴いたこともなかった。そんな彼女達が、幾多のステージを重ね、その楽しさを身を以て体現してくれる、教えてくれる。現在の自分たちを肯定した全能的な”FRESH!!!”は客席を一瞬で沸騰させ、最大幸福値を毎秒更新していくような興奮と喝采の坩堝へと巻き込んでいった。

そして”リボンをきゅっと”→”PARADE”→”プチャヘンザ!”とこれまでリリスクに多くの楽曲を提供してきたtofubeatsの曲が連続してプレイされる。どんな楽しいパーティーもいつかは終わる。でもだからこそ、一瞬一瞬を愛おしく思える。ハンドクラップにコール、振りコピ、そう言ったアイドル然とした楽しみ方に加え、聴き手それぞれが思い思いに流れる音楽に身を委ね、手を掲げ、体を揺らし、心を弾ませる。リリスクが築きあげてきたIDOL RAPのステージが客席をロックしていく。

出会ったときからダンスをする運命なのふたりは

(プチャヘンザ!)

アンセム、”プチャヘンザ!”でライブは一度目のクライマックスを迎える。

しかしこの日はここで終わらない。再びセンチメンタルでゆるやかなセクションへと曲は紡がれてゆく。

この日、滅多に歌われることのなかった曲が歌われた。tengal6時代にリリースされた『CITY』に収録されている“bye bye”だ。上品なジャジーヒップホップにパーティーの終わりを描いたこの曲は、過去にメンバーの卒業ライブなどの機会でしか歌われたことのない曲だった。そのせいか、この曲はどこか特別な意味を持ってしまい、その後普段のライブで歌われることはなかった。

この日、”Akikaze”と”ひとりぼっちのラビリンス”に挟まれる形で、あくまでも切なさや寂寥感を歌った1曲として、グラデーションのように流れていく物語のワンシーンとして歌われた。

この曲のテーマは別れだ。刻一刻と迫るその時が頭をよぎると胸が苦しくなる。でも今日は違う。

「さようなら」ではない、「またね」

また必ず会える。

この日の”bye bye”はそんな確信に満ちた、幸福な”bye bye”だった。

ライブ終盤、“photograph”のイントロが流れる。すると場内のいたるところで次々とサイリウムが焚かれだす。「photographのイントロでリキッドルームを6色のサイリウムで染める」。有志のファンが用意したサイリウムによる、メンバーにも運営にも内緒で用意されたサプライズ企画だった。これまでメンバーの生誕イベントの時などでは、そのメンバーのイメージカラーに客席が1色に染まることはあった。

しかしこの日は6色。ファンからメンバーへ日頃の感謝の気持ちを込めて。

イントロが終わり客席へ振り返った時、6人は皆、目を大きく見開き驚いているようだった。それ以上の感情は歌に溶けていったが、あの瞳にはどんな景色が広がっていたのだろうか。

VJのホンマカズキも急遽のサプライズのサイリウムの演出にも関わらず、バックスクリーンに輝く客席を移す粋な演出を見せていた。
けれど、それをステージから肉眼で見ることができる特権は彼女達だけのものだ。それはこれまで歩んで来た道程への、ささやかなご褒美だったのかもしれない。

また、“photograph”の間奏では毎回meiがフリースタイルを行い、その日のライブに関することや彼女の気持ちを、歌詞を変えて歌うのが定番となっている。この日は当初、4月に行われた自身の生誕イベントで披露した彼女による作詞曲、「一人じゃないよ」のリリックを披露するはずだったようだ。(ライブ翌日のmeiのブログを参照:この日が来るのを待っていた|芽依オフィシャルブログ「芽依の夢旅」Powered by Ameba

しかしフリースタイルの最後、目の前に広がる沢山のヘッズと6色に輝くフロアを見てか、言葉を詰まらせながら彼女は予定されていなかった言葉を絞り出した。

言葉にできない

本当にありがとう

個人的な意見だが、meiはボキャブラリーが豊富なわけでも、特筆してラップが上手いというわけでもないと思っている。

けれど、彼女の言葉は、いつもストレートに胸に突き刺さってくる。

それはきっと、彼女の言葉からは彼女の想いが伝わってくるからだ。 

想いを伝えるために大切なことは何か、

それは「心を込める」ことだ。

あの瞬間、彼女の胸の内を満たしたのは感謝の気持ちだったのだろう。
だからこそ予定調和ではなく、土壇場で、最後の言葉を変えた。
衒いのない、実直で真っすぐな言葉は、彼女の心をそのまま映していた。飾り気のないありふれた言葉は、世界中のどんな言葉を集めても足りない、想いの結晶だった。

滲む視界と頬をつたう熱いものに胸を焦がしながら、ライブは終幕へと加速してゆく。

そして迎えた本編ラストは最新曲”PRIDE”。IDOL RAPとして覚悟と誇りを歌ったこの曲では、フロウとライミング、培ってきたラップのスキルでフロアを湧かせていた。途中のブリッジではリリスクのライブでは初めてではないだろうか、前方エリアでモッシュが起こるなど客席の熱狂もクライマックスを迎える。天に突き上げた拳はかつてない熱気を纏い、本編は幕を下ろした。

ヘッズの鳴り止まないアンコールを受けて、ライブは延長戦へと突入。 

「Drums please!!」

アンコール1曲目を飾るのは”そりゃ夏だ!”。季節外れのサマーソングは、問答無用に客席にジリジリとした熱気と夏の陽気を運んでくる。続いてこの日初披露された”wow♪-okadada remix”では、普段客席を煽ることのない未南が間奏で「セイ wow wow wow!!!」とハイテンションで客席にコールアンドレスポンスを要求するなど、盛り上がりはアンコールへ入ってもとどまる事を知らない。

そしてオープニングDJだった深瀬をステージへと迎え入れ、1年越しに揃った7本のマイク。完全版の“S.T.A.G.E feat.深瀬智聖”。約1年半前、新宿MARZで競演した際は率直に言って深瀬がリリスクのメンバーを圧倒していた。ステージでの胆力から立ち振る舞い、ボーカルからラップのスキルまで、ほんの1ヴァースだがレベルの違いは明らかだった。

しかしあれから一年、深瀬と肩を並べたメンバーは、深瀬に飲み込まれることなく、互いにアジテートし合うように客席を共に揺らしていた。 

彼女達の持ち曲のほぼ全てが歌われたのではないだろうか、そう思っていた矢先、耳馴染みのない、でもどこかで聞いたことのあるピアノのメロディが空気を震わせる。

 “6本のマイク”。

『CITY』にてメンバーが自ら作詞に挑戦した楽曲だ。

元々は卒業したmarikoとerikaを含めたtengal 6時代の楽曲だが、この日のためにhinaとminanだけでなく、ayaka,ami,mei,yumiの4人も歌詞を新たに書き下ろしていた。

バックスクリーンには彼女達の手書きの文字と思われるリリックが、それぞれのヴァースで映し出される。

知らないことばかり 謎だらけ

助けてくれた みんな笑って

(hina)

退屈な日々を抜け出したくて

リリカルスクールの門を叩いた

(minan)

one for all, all for one

チームリリスクNo.1

(ami)

RAPするのは難しい

そんなひとときも 懐かしい

(ayaka)

6マイク プラス 2マイクで

作ったストーリー 一生一緒に

(mei)

みんなの夢が わたしの夢

(yumi)

そのどれもが、今の彼女達でなければ書けないリリックだった。

他のアイドルも同様だが、リリスクはほぼ全ての曲で歌詞が提供されている。
他の誰かの書いた歌詞に、自分の感情を移入していく。それは

「言葉に想いを乗せる」

という行為だ。

 けれど、”6本のマイク“で彼女達は自らの手で作詞をした。それは、

「想いを言葉にする」

ということだ。

minanは自身のパートで込み上げてくるものをこらえきれなかった。

言葉という器から零れ落ちた感情は涙となり、彼女の頬を濡らした。

それほどまでに、彼女達が自ら選んだ言葉には、強い想いが込められていた。

それは”photograph”のmeiのフリースタイル同様、彼女達の心を映し出す鏡となり、きっと、この日あの場所にいた人達に届いているだろう。

途中ayaka,mei,yumiと3人連続で歌詞を一部飛ばすシーンもあったが、拍子抜けするような気の置けなさが、また、彼女達らしくもあり微笑ましかった。

この日MCらしいMCはほとんどなかったが、この”6本のマイク”のリリックが過去を、今を、そして未来を語っていたように思う。

オーラス”tengal 6-アコースティックver.”の優しいメロディに包まれ、2時間半に及ぶリリスクのリキッドルームでのワンマンライブは途方もない充足感と心地いい疲労感とともに終わりを告げた。

リキッドルームでのワンマンライブを成功させたのも束の間、先日、最新シングル『PRIDE』でオリコンウィークリーチャート9位という順位を獲得した。リーダーのayakaのBirthday Partyでmeiの言った言葉が現実のものとなった形だ。

リキッドルームでのワンマンライブの大成功とオリコンウィークリーチャート9位。
今、大きな追い風がリリスクには吹いている。では、このまま彼女達はスターダムに駆け上がっていくか、そう聞かれると現実はきっとそんなに甘くはないのだろう。

今年の夏、ROCK IN JAPAN FESやSUMMER SONICといった日本を代表する音楽フェスに出演した彼女たちだが、夏を終えて彼女達の現場に変化が起きたかと言えば、目に見える大きな影響は見られなかった。青山CAYで開催されたリーダーayakaの生誕も新代田FEVERで行われたメンバーyumiの生誕イベント(平日だったが)も横浜みなとみらいで行われたクルージングパーティーも、全てのライブがSOLD OUTしなかった。メンバーのyumiも自身の生誕時に「夏を終えて成長した気がしたけど、あんまり何も変わらなかった」と言った趣旨の発言をしていた。

でも今回の結果は目に見える形で、少しずつ、確実に、前に進んでいることを教えてくれた。一見意味のないように見えることも、見てくれている誰かは必ずいる。

この日披露された全33曲。初めてのミニアルバム『まちがう』から最新曲『PRIDE』まで。

ちょっと振り返ってる

でもねdon’t stop 次が待ってる

扉あけ 向かう新たなステージへ

まだまだ これから

(6本のマイク)

2年前に生まれたこの曲も、色褪せることなく、今を歌っている。全ての点と点と点と点と点と点は繋がっていく

 ワンマンライブの最中、来年の春にニューアルバムが発売されることが発表された。

リリスクはこれからどこへ向かうのだろうか

それは誰にもわからない。 

なぜなら彼女達はこれまでだって、誰も歩んできたことのないIDOL RAPという道を切り開いてきたのだから

 これからも、きっと誰も辿り着いたことのないような場所へと向かうのだろう。その先に、もっと素敵な景色が待っていると信じて

震える手・心臓 やっぱ怖い

そんな時は

ねぇ一緒に行こう

この日meiが言えなかった言葉

「いつでもここが みんなの居場所」

手を取り合って 歩き出そう

新たなステージへ

次が待ってる 

 

セットリスト

1. brand new day

2. tengal6

3. Myかわいい日常たち

4. 決戦はフライデー

5. perfect☆キラリ

6. Maybe Love

7. ルービックキューブ -Fragment remix

8. もし

9. fallin’ night

10. しってる / しらない

11. でも

12. P.S

13. まちがう

14. 流れる時のように

15. 抜け駆け

16. FRESH!!!

17. リボンをきゅっと

18. PARADE

19. プチャヘンザ!

20. わらって.net

21. Akikaze

22. bye bye

23. ひとりぼっちのラビリンス

24. ケセラケセラ

25. Sing,Sing

26. おいでよ

27. photograph

28. PRIDE

EN.

1. そりゃ夏だ

2. wow♪-okadada remix

3. S.T.A.G.E feat.深瀬智聖

4. 6本のマイク

5. tengal6-アコースティックver.

うつむきがちだった君がもっと笑えるから - lyrical school one man live 2014@渋谷WWW

元記事掲載:音楽情報ブログ『musicoholic』

lyrical school one man live 2014@渋谷WWW : 音楽情報ブログ『musicoholic』

■うつむきがちだった君がもっと笑えるから

タワーレコードが設立したアイドル専門レーベル、T-Palette Recordsに所属する6人組HIP HOPアイドルユニットlyrical school(通称リリスク)。

昨年8月に麻布十番 VILLAGEで行われたワンマンライブ以来、約半年振りとなった今回のワンマンの会場は渋谷WWW。前回のワンマンは未南さんが新メンバーとして加入してまだ間もないこともあったからか、もちろんアルバム先行試聴に新曲初披露、彩夏さんの生誕サプライズもあり楽しいライブには違いなかったが、個人的には出色の出来と言うようなライブではなかった印象を持った記憶がある。

しかしそれから約半年、継続的なライブへの出演や短期間で多くのミニライブが続くリリースイベント、バスツアー・地方遠征、そしてアルバム「date course」のリリースツアーファイナルではtofubeats、Fragment、餓鬼レンジャーイルリメ呂布、okadada等との競演と多くの場数を経験し、「今の6人のlyrical school」としての一体感やグルーヴは確実に増していった。

特に昨年末のT-Palette感謝祭2013では「ゆるいラップ」のイメージを打ち破る熱くエモーショナルなステージを見せ、ヘッズ(リリスクのファンの呼称)だけでなく、あの日会場にいた多くのアイドルファンをも巻き込んでいた。ラストの”photograph"で会場の多くのファンがペンライトやタオルを掲げ、その景色を見たリーダーの彩夏さんが涙してしまうほどに。その日のライブの模様はこのワンマンの前日にUstreamでも放送され、画面越しにも見ていた多くの人の心を打った。

そして2月7日決戦のフライデー。チケットは前売り、当日券を含め完売。今のリリスクに対する注目、期待がいかに大きかったかがわかる。

この日のライブは、開演前DJとしてNegiccoのMeguさんが登場。自身もアイドル好きであることを公言しているMeguさんだが、この日もアッパーなアイドルアンセムを畳み掛けていく。Dorothy Little Happy "デモサヨナラ"、Negicco "圧倒的なスタイル"、9nine "SHINING☆STAR"、ももいろクローバー ”走れ!”、RYUTist "ラリリレル"、アップアップガールズ(仮)"アッパーカット"など名曲を次々と投下していく。

楽しそうに卓の前で飛び跳ねるMeguさんを見ていると、つまらない自意識をこじらせるよりも、目一杯その瞬間を楽しむ事の大切さを感じさせられる。

彼女の持つ天性のポジティブさはDJの時でさえ、見ているだけで楽しい気持ちにさせてくれた。フロア全体の盛り上がりとしては(皆リリスクの出番に体力を温存してたか、アイドルファンではない人が多かったのか、それとも"ももクロで盛り上がるわけには…"という自意識と格闘していたのか、はわからないが)まずまずといった感じだったけれど、それでも皆思い思いに身体を揺らし、ある人はお酒を呑み、ある人はあーりんわっしょいしたりと、特別な夜に花を添えるには十分なステージだった。
そしてDJ Meguのゲストプレイは小田和正 "ラブストリーは突然に"のRemixにて幕を閉じた。
※僕が会場に着いた時には既に"デモサヨナラ"がかかっていたけれど、その前にtofubeatsサ上とロ吉などHIP HOPもかけていたみたいです。セトリな情報あれば教えて下さい。

そしていよいよlyrical schoolの出番。ステージ袖からいつものメンバーのあのかけ声が聞こえてくる。1曲目"Myかわいい日常たち"のイントロのロングエディットで本編はスタート。会場に普段より長く響き渡る手拍子が、この夜の特別さを教えてくれるようだった。そこから立て続けに"リボンをきゅっと"、"PARADE"をプレイ。イベントやミニライブでも定番の楽曲に会場は早くも沸点に達しそうな程の熱気が立ちこめる。続く"tengal 6"ではJackson 5 "I Want You Back"のサンプリングによりオリジナルよりも更にゆるやかに、ゆったりと会場を揺らす。「そんな飛ばして大丈夫か?」と余計な心配をしてしまう程のキラーチューンの連続。

最初のMCを終え、芽依さんの「(冬だけど)久しぶりに夏を味わいたいよね!」という一言の後、そこにはサングラスをかけたプリンセスが。「Drums Please!!」真冬の渋谷を一気に夏模様に変えるリリスクの代表曲の一つ"そりゃ夏だ!"。コール&レスポンスの応酬にフロアの温度はますます上昇していく。そんなジリジリと照り着ける夏の日差しからトロピカルな熱帯夜"wow♪"へ。この曲は久しぶりに聴いた気がするけれど、腰をかがめ、七輪の上にあるであろう秋の味覚的な何かをパタパタとするひなちゃんが相変わらず妙にサマになっていて、あの、凄く可愛かったです。

そこからはメロウな中盤戦へ。"perfect☆キラリ"、"fallin' night"、"もし"、"苺のショート"、”決戦はフライデー"、"Maybe love"、"ルービックキューブ"とtengal時代の曲を中心にノンストップで一気に駆け抜ける。tengal6時代の曲は、聴いてすぐに跳ねたり、飛んだりできるようなフィジカルに訴えかけてくる曲は比較的少なめである。今のような明るいパーティーの印象よりも、夜を感じさせる、しっとりと聴かせるような雰囲気のある曲が多かった。もし全ての曲をフル尺でやっていたら、序盤で暖まった身体が冷めてしまったかもしれないし、お客さんは少しダレてしまっていたかもしれない。
しかし、ミドル~スローテンポな曲をショートRemixで繋ぎグラデーションのようにムードを変化させることで、リズムを切らすことなく、普段のライブでは中々やらない曲でもしっかりとお客さんを惹き付けていた。"ルービックキューブ”ではアカペラから始まり、1サビ終わりにFragment remixへと転調するニクい演出を見せ、リリスク改名以降強くなった、”ポジティブでハッピーな一面”だけじゃないところを見せられたはずだ。

再びMCタイムがあり、未南さんの「流れる時のように、一分一秒、瞬間瞬間を刻んで、皆さんと大切な時間を作っていきたいなと思います。」という言葉から、ドリーミーな"流れる時のように"へ。浮遊感のあるトラックに次々と景色の変わる街を飛ぶリリック、昼から夜へと場面展開する彩夏さんのポエトリーリーディング。日常に溢れるワンシーンを切り取ったこの一曲は、当たり前の普段の生活の中に隠れた〈素敵なもの〉と、流れ続ける時間の一抹の寂しさを胸に感じさせる。続く"P.S"ではこれまでとは打って変わり笑顔もダンスもなく、失恋した女性の切なさを綴っていく。裕美さんと麻未さんのファストラップは、何度聴いてもこの曲のハイライトになるほど、胸に迫る。そして曲終わり、芽依さんの「私の目に涙は似合わない。だから"わらって.net"。」という一幕から最新シングル”わらって.net”が披露される。泣かないで、笑って、という”P.S”からの繋ぎになんだか無性に泣けてきた。日常の、インターネットの、小さな箱の中の、小さな決意。繊細な心情を歌った、この曲は聴く人の背中をきっと押してくれたはずだ。

そして遠くから、“おいでよ”のイントロが聞こえてくる。

この曲が持つ圧倒的な幸福感。何者も拒まない、この場所に来れば、うだつが上がらない毎日でも、笑顔になれる。笑顔をもらったその夜は、明日への活力になる。うだつが上がらない毎日でも、笑顔にかえられる。この曲にはリリスクのライブで感じる心地良さ、肩肘張らず、流れる音楽にその身を任せ、ステージに立つ6人を見てもらえる笑顔、元気、ポジティブなエネルギーが凝縮されている。時に降り掛かるやるせない出来事から、手を差し伸べて救い出してくれる。”わらって.net”の時点で涙腺が刺激されていたのだが、”おいでよ”でもうるうる来てしまい、心底楽しいにも関わらず涙をこらえるのに必死だった。なんでこの曲を聴くとこんなにも泣けてくるのか。 

「こんなところに紙が!」とポケットから小さな紙切れを出した裕美さんから4月2日にニューシングル『brand new day』のリリースが発表される。新曲の発表はある程度予想はしていたが、作詞作曲をLITTLE、NATSUMENAxSxEが手掛けるのには驚いた。芽依さん曰く「みんな世界が変わっている」その季節、新曲を聴ける日が待ち遠しい。

そして本編ラストの"photograph"へ。リリスクのライブの鉄板曲であるこの曲だが、このワンマンからダンスの振りが一新されており、より歌詞に添い、曲のメッセージを伝えるようなものに変わっていた。ファンの中でも定着しているこの曲の振りを変えるというのは、ある意味勇気のいることだったと思う。しかしそれは、これからもリリスクは止まらず進化し続けるというメッセージなのかもしれない。ラストの大サビではマネージャー兼DJの岩渕さんがボリュームを落とし、マイクを預けてくれる彼女たちの信頼に答えるヘッズの大合唱でWWWは一つになった。

振りは変わったものの、曲が終わった後のMCで芽依さんが「振りは新しくなったけれど、サビはみんな
手を振って欲しいな。」というような発言をしていたので、これからもこの曲がライブを引っ張っていくのは間違いないだろう。

本編はここで終了するも、メンバーが袖にはけるや否やすぐに起こるアンコール。

アンコールが5分程続いた後、再びステージに現れたメンバー。

6つのバックシルエットが暗闇に浮かぶ中、披露されたアンコールの1曲目はまさかの”S.T.A.G.E”だ。『PARADE』 の初回限定盤に収録されていたこの曲だが、リリースイベント以降、耳にする機会はほとんどなかった。しかしこの日、未南さんの新しいリリックが書かれ、新しい”S.T.A.G.E”として蘇った。久々の”S.T.A.G.E”に客席のヘッズも異様な盛り上がりを見せていた。これからこの”S.T.A.G.E”もライブのレパートリーに加わるのであれば、セットリストの幅もグッと広がるだろう。

アンコール2曲目にはこの日二度目となる”tengal 6”をオリジナルヴァージョンで再演。途中オープニングDJをしたNegiccoのMeguがMC Meguとしてステージに登場し、リリスクの7本目のマイクとして自己紹介ラップを披露した。「ラップ憧れ系女子」や「スマイル100%」と言った本人が選んだワードを盛り込んだオリジナルのリリック。そんな彼女の明るい陽性のキャラクターを書いたのは岩渕さんと言うのだから本当に多才な人だ。また、LinQ深瀬智聖さんが”S.T.A.G.E”でラップを披露した際も、その歌唱力の高さに目が冴えるような感覚があったが、Meguさんにおいても、初めて歌うとは思えないほどラップが上手い。11周年目を迎えるNegiccoで培ったスキルと経験が表れたパフォーマンスだった。

ひなちゃん「皆さん、まだ聴いていない曲ありますよね?聴きたいですか?」
ヘッズ「おぉー!」
ひなちゃん「全然足りないです。聴きたいかー!?」
ヘッズ「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

皆わかってる。声に力が込もる。まだあの曲をやっていない。
オーラス、“プチャヘンザ!”

「出会った時からダンスをする運命なの二人は」


運命が本当にあるのかどうかなんてわからない。でも、そうだと信じた方が、ドラマチックだし、ロマンがある。ただそれだけで、同じ景色だって違って見えてくるじゃないか。

最後のMCで彩夏さんが「lyrical schoolは一つ一つ次のステップへと進んでゆきます。次に目指す場所は、恵比寿の”あの場所”です。」と語る。それを見たひなちゃんが裕美さんの新曲のリリース発表を真似し「あれ、こんなところに紙が・・・な〜い」とアドリブをぶっ込み、一瞬本当に信じた彩夏さんに怒られる場面もあった。しかし大成功のワンマンに、必要以上に感傷的になることなく、しっかりと地に足をつけ、もう次を見据えている彼女達はとても頼もしかった。

こうしてリリスク2014年の初ワンマンライブは大団円で幕を閉じた。プレッシャーは相当あったはずだけれど、ライブ中はそれを感じさせない程に充実した表情で、終止笑顔の絶えないライブだった。

ニューシングルのリリースも決まり、一息つく間もなく、リリスクは次のステージへと向かう。そこには涙をみせるメンバーの姿はなく、地に足をつけ、これからの飛躍を確信させる6人がいた。

---------------------------------------------------------------------

前回のワンマンは未南さんが加入して間もなく、まだ「新しくなったリリスク」を見せる意味合いが強かったライブだったと思う。しかし今回のライブは、現体制の一つの完成形を見せたと言えるライブだった。

ひなちゃんと未南さんに言えることだけれど、他の4人とは違い、新しく入った二人は当然ながらtengal時代の曲を一から覚えなければならない。lyrical schoolの既存の曲に加えて『date course』の楽曲も覚えねばならない中、tengalの曲を自分たちの曲として昇華する時間が以前はまだ足りないように思えた。

けれどこの日、これまで重ねてきたステージと僕たちの目には見えない努力・乗り越えた葛藤が彼女たちに自信を与えたのか、tengal6の曲も〈今の6人のlyrical school〉のものになっていた。

中でも一番変化があったのが未南さんだ。

思えば彼女のデビューライブは去年の夏のTIF2013だったわけだが、そこからまだ7ヶ月しか経っていないことが信じられない。それくらい彼女のステージングは変わった。最初はどこか遠慮がちに(ある意味当然だけれど)ステージに立っていたように見えたけれど、ライブを見るたびに彼女の歌は変わっていった。自分の表現が彼女のパートに表れてくるようになった。この日も”苺のショート”の「つまり恋をしてるってこと♡」の時のキューッとした笑顔の可愛さなんて100万ボルト恋はスリルショックサスペンスだったし(何がだ)、"もし"のヴァースは鳥肌が立つ程にしなやかで、情感の込もったボーカルだった。初めて彼女を見た時、高身長と端正なルックスでクールな印象を持ったけれど、実際は可愛いらしいボーカルと女の子的な可愛さをも併せ持った女性だった。そしてそのキャラクターは、恋する女の子の気持ちを歌うのにドンピシャだった。えりかさんにはえりかさんにしかない良さがもちろんあったが、今未南さんが彼女の歌を歌っていることで、リリスクは新しい魅力を見せている。

加えてこの日は「流れ」も非常に意識されていたライブだった。

全体を通してみても、曲間をつなぐだけでなく、最初のMCでは芽依さんの「夏を味わいたいよね!」と言ってからの"そりゃ夏だ!"だったり、前述の未南さんの「流れる時のように、(中略)大切な時間を作っていきたいなと思います。」からの"流れるときのように"であったり、"P.S"終わりの芽依さんの「私の目に涙は似合わない。だから"わらって.net"。」という繋ぎだったり、MCも全て次への曲のバトンになっていた。
リリスク史上最長となるロングセットだったが、MCをはさむものの一貫してほとんど流れの切れないライブとなっていた。このおかげか、90分のライブはあっという間に終わってしまった感覚がある。「20分、30分のショーケースライブなら一番」と、Tパレ祭の際に嶺脇社長に言われていたが、90分のライブでも、途中で息切れすることなく惹きつけられるという一つの答えをこの日見せたと思う。

そんな中、数ある曲の中で1曲目に歌われた”My かわいい日常たち”。

ただいま!わたしの普通でかわいい日常たち
ゆっくりと寄り添うようなやさしい日常をいきてくわ
(Myかわいい日常たち)

皆が待ち望んだこの夜、大事なワンマンライブ。
けれどそれは、「日常」にほかならない。

イヤホンから流れる音楽、学校・仕事・恋愛。朝目覚めて、夜眠りにつく。街へ飛び出し、喧噪の中でささやかな幸せに触れ、気持ちが弾む。同じはずの景色が違って見える。ささいなすれ違いや、ちょっとしたミスで、なんだか落ち込んだ気持ちになる。でも金曜日には、皆で集まり、少しの間嫌なことも忘れ踊る。そしてまた、日常に帰っていく。地続きの日常の、ささやかなワンシーン。

lyrical schoolの曲はいつも僕たちのそばにある。
それはあくまで「日常」の中にあって、特別だけれど特別でない。

この日のライブも、昨日から続く毎日の、明日へと繋がる日常の一ページに過ぎない。だから「ただいま」なんだ。けれどだからこそ、僕たちにこんなにも寄り添ってくれる。
1曲目の”My かわいい日常たち”を聴いて、なんだかそんな事を思ってしまった。

また、アンコールの1曲目は新しく生まれ変わった”S.T.A.G.E”。
この日のライブで新たに発売されたニューTシャツ、その左胸には「NEWSTAGELYRISCH」と書かれていた。初めからわかっていたのかもしれない。このライブを節目に、リリスクは次のステージへと向かうことを。
これからリリスクのライブはもっと広いキャパの会場で行われることになっていくだろう。ファンの数も増えて行く。それは嬉しくもあり、ちょっとだけ寂しいことでもある。でも彼女達は、僕たちにこう歌ってくれている。

会場の規模よりずっと 大事なものがあるきっと
どんな時だって人と人が作りあげていくひと時を
(S.T.A.G.E)

大事なものは変わらない。これまでも、これからも。アンコール1曲目に選ばれた”S.T.A.G.E”には、新しいSTAGEに進む彼女たちの、そんな決意が込められていたのかもしれない。

”エモいか”どうかという見方をすれば、このライブよりも前日にUstreamで放送されていたT-Palette感謝祭2013の方が胸に迫るライブだった。一年前に嶺脇社長に言われた言葉にケリをつけるためか、"プチャヘンザ!"前のひなちゃんの煽りなど、一小節一語一句、普段よりも一層気合いの入ったメンバーがそこにいた。そしてそのステージは初めてリリスクを見る人の心と会場をロックし、フロアを揺らした。その様は見ているだけでなぜか涙がでてくるような、そんな琴線に触れるステージだった。
それに比べると今回のワンマンライブは、そういったエモーショナルな感情を喚起させるようなステージではなかった。あくまでも普段のライブの延長にあり、それが30分から90分になった、そういうライブだったと思う。WWWソールドアウトという結果に対し、メンバーも妙に感傷的になることはなく、あくまで通過点にすぎないとでも言うかのように、しっかりと地に足をつけていた。

それはきっと、彼女たちが見せる物語は、どんどん会場のキャパを広くして夢を叶えていくという、倍々ゲームの劇場型のカタルシスではないということだ。

僕がリリスクを好きなのは、メンバーのみんながいつも凄い楽しそうにライブをしていて、その姿を見ているだけで、こっちまで楽しくなって幸せな気持ちになれるからだ。もちろん好きな理由は他にも沢山あるけれど、あの気持ちに勝るものはない。メンバーもファンも、皆を笑顔にするあの空間は、そしてそのエネルギーは、ジャンルとか、イメージや偏見といった、隔ているものを越えて、見てる人に伝わるもっと根源的なものだと思う。そしてその笑顔の連鎖がまた別の人に伝わり、どんどんその輪は広がってい。

人と人とが作り上げるひと時にこそ、彼女たちの物語はある。

lyrical schoolはまた新しいステージに向かうけれど、それはきっと変わらずに、僕たちの日常でありつづけるだろう。ヘッドフォンから流れてくる音楽は、ゆっくりと寄り添ってくれるだろう。

そしてそんな物語がずっと続けばいいと
今はそう、思わせてほしい

おいでよ パーティーへいそごう

まだまだ続くものがたり

君と僕だけかかる魔法

おいでよ パーティーへいそごう

うつむきがちだった君が もっと笑えるから

ずっと探していたものが きっと見つかるから


lyrical school「おいでよ」

セットリスト

1.My かわいい日常たち
2.リボンをきゅっと
3.PARADE
4.tengal 6
5.そりゃ夏だ!
6.wow♪
7.perfect☆キラリ
8.fallin'night
9.もし
10.苺のショート
11.決戦はフライデー
12.Maybe Love
13.ルービックキューブルービックキューブ(Fragment remix)
14.流れる時のように
15.P.S
16.わらって.net
17.おいでよ
18.photograph
En1.S.T.A.G.E
En2.tengal 6 feat.MC Megu
En3.プチャヘンザ!