細美武士が気づかせてくれたもの

元記事掲載:音楽情報ブログ『musicoholic』 http://bit.ly/2mkZ2i7

細美武士

ELLEGARDEN/the HIATUS、現在2つのバンドでフロントマンを務めるバンドマンだ。彼のライブはチケットもグッズの値段も安い。CDには初回限定盤もなければ特典もつかない。地上波のTVやマスメディアには一切出ない。あれは嫌だ、これは嫌だ。ひたすら愚直なまでに、ファンの想いを直接感じられるライブを、何よりファンの事を1番に考え、細美はここまでやってきた。周りとの意見のぶつかり合いも少なくなかっただろう。もっとラクな道ならいくらでもあったはずだ。

何が彼をそこまで駆り立てるのか。

細美は挫折の人間だ。学校や社会の要求する規則や常識に馴染めず周りから浮いていた。高校を中退し工場で働いたが未来は見えなかった。バイクレーサーになりたいという夢も自分より優れた才能を前に諦めた。ELLEGARDENの前に組んでいたバンドがメジャーデビュー目前まで行った時も納得がいかず話は頓挫、結局バンドは解散する事になった。音楽の道すら一度は諦め就職もした。

彼は自分の信念が報われてこなかった人間だ

その後、偶然残っていた一つの電話番号から引き寄せ合うようにELLEGARDENは生まれた。でもまだ信じられない。1stアルバムのタイトルは『Don' Trust Anyone But Us』。「おれたち以外は信用するな」。しかしそれからライブを重ね、アルバムをリリースする度にファンの数は増えていった。2007年にはELLEGARDEN幕張メッセでワンマンライブを行うまでになった。

あの頃信じていた道は間違いじゃなかった。

細美の信念とは純粋過ぎる程の理想主義と潔癖なまでの完璧主義を貫くことだ。
誰もが自分の理想を持っている。それなのに多くの人は最初から何かを諦めて生きている。『二兎を追うものは一兎をも得ず』。その言葉を飲み込み、二兎を得た方が幸せな事をみんな知っているのに、両方を失う事を恐れて、初めから一兎しか追わない。傷つくことを恐れているから。そして二兎を追う道が最も困難な事を知っているから。
そんな生き方を細美はしたくなかった。別に誰かを困らせたいわけでも傷つけたいわけでもない。でもだからって自分を曲げたり押し殺したりなんてできない。自分も皆も、全員で幸せになりたい。その結果、たとえ二兎を失うことになっても。細美はそうやって生きてきた。

「人生はそんなに甘くない」
「綺麗事だ」
「現実を見ろ」

どれほど周囲と摩擦を生もうと細美は自分の信念を決して曲げなかった。すると少しずつ、少しずつ、彼と同じ道を歩む仲間が増えていった。誰も信じてくれなかった言葉を信じてくれる仲間ができた。そしてファンの存在は、細美に1人じゃないことを教えてくれた。細美の言葉に救われたファンは多いと思う。しかし細美こそが、そんなファンの存在に救われていた。だから彼は誰よりもファンのために歌う。周りに受け入れてもらえなかった自分を信じてくれる仲間のために。

the HIATUSのThe Afterglowツアーで彼らがライブの最後に演奏していた曲は「Silver Birch」だった。『仲間の歌』と言ってこの曲を歌う前、細美はしきりに仲間の大切さを話していた。ELLEGARDENからthe HIATUSになり音楽性は変わった。曲作りの方法だって変わった。
そもそも人間というものは成長し変わっていくものだ。

でも彼にとって本当に大切なものはずっと変わっていない。

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降参するなんて言わないでくれ
奴らに妥協させられるな
理想を実現するんだろ
君は弱虫じゃない

すでに諦めた奴らが君の強い意志を妬む
奴らは君を負け犬の輪に引きずり込もうとしてる

僕は君からやりたいことは
なんでもやっていいと教わった
僕は君から結局王道なんてものは
ないんだということを教わった

奴らは君の信念をぐらつかせようとする
何故なら既に自分の分を失ってしまったから
君には出来ないなんて誰にも証明できない

願い続けさえすれば
いつか気付くかも知れないじゃないか
一緒に歩いている人がいるってことに

僕は君と一緒に行くよ

(Cuomo)

itun.es

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僕たちは全く完璧じゃないし失敗ばかり。クソッたれのダメ人間。おまけに世界は不条理で物事はびっくりするぐらい上手くいかない。泣きたくなる夜もあれば信じているものを諦めたくなる時だってある。

でも『音楽』の下で、赤の他人の僕らがバカみたいに笑い合って一つになれたあの瞬間を僕たちは知っている。周りの人が「そんなものはない」と言っていたその世界は確かに存在した。諦めたくない。信じたい。その道がたとえ最も辛い道だとしても。仮に全てを失ったとしても。

だけどそんな道を一人で生きていけるほど人は強くない。心配事が消えさることなんてない。でもだからこそ僕たちは音楽に勇気をもらい、ライブでその存在を確かめるんだ。不安な時はここに帰ってくればいい。

 

「君は1人じゃない」

 

そんな彼の音楽を僕は今も信じている