We are still the same - 2017.10.10 MONOEYES Dim The Lights Tour 2017

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■We are still the same

7月5日にリリースされたMONOEYESの2ndアルバム『Dim The Lights』。このアルバムを引っさげ7月から始まった全国ツアーも、追加公演のいわきと最終日の沖縄を残すのみ。10月10日、事実上のツアーファイナルとなる新木場スタジオコーストの2DAYSの初日を迎えた。

ゲストのJohnsons Motorcarがライブを終えると、お馴染みとなったスターウォーズのテーマソングをSEにMONOEYESの4人が登場する。

Wildlife in the sandy land
Barking at the rising moon
That’s what my body feels like doing
You are someone like me
砂だらけの陸地で動物たちが
昇る月に吠えている
僕の体が欲しているのはそれ
君と僕は似てる

「Dim the lights = 灯りを落とす」。暗闇の中でこそ浮かび上がる野生。重い扉を開け、日常とは毛並みの違うライブハウスという空間でだけ露わになる本能。MONOEYESのライブが呼び起こすのは、日々の社会や規範の中では羽を伸ばせない衝動と純真だ。ルールではなく思いやりを持って。それさえあればこのライブハウスでは誰もが平等で自由だ。

It’s you and me again
もう一度 君と僕だ

『Dim The Lights』の核心に触れるリードトラック、"Free Throw"でライブの幕は切って落とされた。 

続く"Reasons"でフロアが更に熱を帯びていくと、3曲目で早くも"My Instant Song"が投下される。

全て失ったと感じるときは
これ以上もちこたえられないと感じるときは
暗がりにいると感じるときは
ただ歌を歌うんだ
即興の歌さ
息を飲む瞬間には
夢みたいだと思うときには
飛び込むのが怖いと感じるときは
ただ歌を歌うんだ
即興の歌さ
いつだってやめられる
即興の歌さ

2年前、MONOEYESはこの曲とともに始まった。「ただ歌うだけ」、いつだってやめられると口ずさんだ即興の歌が、会場をポジティブなエネルギーで満たしていく。ステージも客席も、見渡す限り一面の笑顔が、赴くままに身体を宙へ弾ませる。

 

細美「本日1発目スコットがキメるぜぇ!!」

 

細美のシャウトを皮切りに"Roxette"が披露される。スコットらしい伸びやかなメロディとほろ苦い歌が、細美の曲とはまた違う風通しの良さで、MONOEYESのライブに新しい色を加えていく。

細美「千葉LOOKから始まり、東北を散々回って、九州を巡り、北陸を回り、ようやくここまでたどり着けました。追加公演のいわきと沖縄を残して、事実上のツアーファイナルなんだけど、ファイナルだからと言って特別なことは何もありません。だからおれたちがこれまで回ってきたところと同じライブをするよ。」

"Leaving Without Us"、"When I Was A King"で一瀬の2ビートが激しい疾走感とダイナミズムを起こしたかと思えば、続く"Get Up"では「Get Up」の合唱が優しくも力強いサウンドスケープを描いていく。

「東京でやるのはすごい久々の曲をやります。」

 

そうして演奏されたのは"Cold Reaction"。

I'm against the new world
僕は新しい世界なんていらない

大きい会場でライブがやりたいわけじゃない。ただ、自分たちのこの場所(ライブハウス)をこれからも守っていきたい。MONOEYESは東北で細美が1人で弾き語りを行なっていた時、ライブに来る人たちがもっとスカッと暴れられるようにバンドで来たいと、ソロアルバムを作り始めたことをきっかけに生まれたバンドだ。ただ仲間とともに、ライブハウスでバカ騒ぎをしていたい。1stアルバム「A Mirage In The Sun」のオープニングを飾ったナンバーは、ハードなリフと地鳴りのような轟音で、今も変わらずにMONOEYESというバンドのアティテュードを表明する。

"明日公園で"では突然スコットがベースを銃に見立て戸高を打つ、すると膝から崩れ落ちる戸高、かと思えばそのままポジションを入れ替え、目の覚めるようなプレイでフロアを煽りに煽る。間奏では戸高がヒリヒリするようなギターソロで琴線を掻き毟り、逆側ではスコットがステージダイブで客席へと飛び込む。無邪気にステージを楽しむ2人が、ハイタッチまで飛び出す抜群のチームワークでライブを更に盛り立てる。

細美「みんな夏の楽しかった思い出があると思うんだけど、そういう楽しかった思い出をべっこう飴みたいに凝縮したような曲ができたんだ。人生で1番好きな曲。だから聞いて。」
「昔好きな女の子をバイクに乗せて海を見に行って、じゃあ帰ろっかってなった時に雨が降り出して、『こんなのすぐ止むよ』って彼女に言って庇の下で雨宿りをして、タバコに火をつけたんだけど、雨は止むどころかどんどん強くなって『ごめん、これは止まないね。』ってなって、そんで彼女を後ろに乗っけってさ。町からちょっと離れたところだったから、ずぶ濡れになりながらバイクで走って、やっとコンビニを見つけて、寒くて震えながらこれでちょっとはマシになるだろって500円のカッパを買ってお互いに着たら、その姿がどうしようもなくおかしくて、お互いに笑い合うような。」
「1番はBRAHMANの宮田俊郎と飲んでる時のことを書いていて、TOSHI-LOWがお店のグラスを全部割ってさ。光るモノが嫌いなゴリラみたいな笑 なんかこういう生き物いたなって笑 手には空のウイスキーのボトル、テーブルの上には割れたグラスがあって。」
サンゴ礁のある海を泳いだことがある人はわかると思うけど、あのあたりにいるような小さな魚は、合図もないのに示し合わせたように同じ方向にクイって進むんだよ。こんなこと言うのはこっぱずかしいんだけど、今日は目の前にいるブスと脳足りんのどうしようもないお前らのために歌います。そんな風に、お前らと一緒におれに年をとらせてくれ。」

"Two Little Fishes"。二匹の小さな魚。
アルバム制作において、1曲オススメの曲があるのは他の曲に失礼だから、それなら全部作り直すべきだ。頑なにそう言っていた細美が、この曲は人生で1番好きな曲と言ってはばからない。ミディアムテンポのパワーポップ。サウンドも詞も、明るく、温かい。

これまで細美の作る音楽は、明るい曲調の裏にも、いつもどこか自己嫌悪や孤独、胸に刺さったままとれないささくれのような痛みを抱えていた。でもだからこそ同時に、自分を認めていいんだと、君は1人じゃないと、痛みは和らぎ、いつか傷跡だけを残しなくなるということも教えてくれた。

彼の音楽は失望を内包することで希望を歌ってきた。 

だが今はそれだけではない。"Make A Wish"で祈った君の幸せ。その隣にいるのは僕じゃなかった。"Two Little Fishes"で歌った僕の願い。君のそばにいるのは、まだ見ぬ誰かじゃない。

Let’s run forever
We get older
Do you think I’m gonna leave
逃げようぜこのまま
僕らは歳をとる
いなくなるわけないだろ

客席を鼓舞し、ファンと一体となり歌う細美。ELLEGARDENの1stアルバムのタイトルは『DON'T TRUST ANYONE BUT US』。自分たち以外は誰も信じない。そこから積み重ねて、失って、そしてまた積み重ねてきた。the HIAUS、東北ライブハウス大作戦のメンバー、TOSHI-LOWとの大きな出会い。仲間と呼べる揺るぎない存在。生まれる確かな信頼。

1stアルバム『A Mirage In The Sun』のリリースツアーでは、ライブ前に細美自らがステージに立ち、ライブの注意事項を説明していた。昨年の「Get Up Tour」では、モッシュやダイブをするファンを時に注意しつつ、常にコミュニケーションを取りながら、MCでも思いやりを持ってと話していた。

このライブではわざわざ注意事項を話すことはしなかった。ダイバーに直接話しかけることもなかった。その必要がなかった。

Wanna make us synchronized like two little fishes
Wanna make a sunset like this last forever
Wanna grow older while you’re here beside me
Tell me when the wind starts blowing into the room
僕らは二匹の小さな魚みたいにシンクロしてたい
この夕日がまるでずっと続くみたいに感じていたい
君がそばにいてくれる間に歳を重ねたいんだ

孤独も喪失もない。幸せな記憶。MONOEYESが鳴らす仲間の歌は、ファンの声と重なり、お互いの想いとシンクロしながら、二匹の小さな魚のように同じ未来を描いていた。

マーチのような"Carry Your Torch"を経てライブは終盤戦へ。 "Run Run"、"Like We've Never Lost"を畳み掛けると、"Borders & Walls"ではJohnsons Motorcarのマーティも参加。ポリティカルな内容を孕みながらも、その憂いを吹き飛ばさんとばかりに、スコットの人懐っこいキャッチーなサウンドにフロアは縦横無尽に入り乱れ、幸福な暴動が起こる。スコットがボーカルの曲では細美もギタリストへと変わり、ギターに全霊をぶつける。

細美「たまにどうしようもなく吠えたくなる時があるんだよ。電車乗ってる時とかコンビニにいる時とか、そういう時に吠えるとパクられるからやらないけど笑 お前らもそうだろ?でも今日は吠えられたんじゃない?」「性別も年齢もルックスも貯金も収入も、そんなものはここには何一つ関係ない。」「世の中がこんな風(ライブハウス)だったらいいのにってずっと思ってるけど、どうやらそうじゃないみたい。あのドアを開けたら、少し窮屈な世界が待ってて、ちょっと違う服を着てたり、人と違うご飯の食べ方をしたら笑われる。そういうことに疲れたら、その時はいつでも遊びに来て。」

いつだってここに帰る場所はあると、細美は語りかける。

Let me see the morning light
Ditch a fake TV smile
And you said to no one there
Like 3, 2, 1 Go
When we see the rising sun
I can feel my body getting warm
朝陽が見たい
テレビ向けの笑顔なんて捨てて
君は誰にも向けずにこう言った
3.2.1 行くよ
すると太陽が昇って
僕は体が暖かくなるのを感じる

正解も不正解もない。沢山の人がそれぞれ違った価値観を持つ社会では、常に批判され、常に折り合いや妥協を求められる。自分の全てが間違っているように感じる時さえある。でも夢に見た世界がある。その場所に辿り着きたい。

タイアップを断り、CDの特典を拒み、ライブハウスにこだわり、どれだけ人気が出てもチケット代は2,600円のまま。多少の怪我はしてもいい、でも誰かに怪我はさせるな。禁止するのではなく、信じることで守りたい。理想の世界は綺麗事だろうか。「そんなのは無理だ。」また声が聞こえる。生半可な戦いじゃない。でも彼は戦い続けてきた。その生き方は彼を知った14年前から変わらない。その姿を見てると、ちっぽけな自分の中にも勇気が湧いてくる。そしてその戦いの先にあるこの場所に来ると、夢に見た世界を実感できる。身体は疼き、汗が滲み出す。体の芯から脳天を突き抜けるような高揚感に鳥肌が立つ。言葉にできなかった想いが熱を持って肉体に溶け出し、目頭が熱くなる。夢を見ていいんだと信じられる。
歳を重ねても、バンドが変わっても、変わらない細美の生き様を、"3,2,1 GO"は写している。

"グラニート"が見せる景色はその信念の先にあるものだ。赤の他人同士が、初めてライブハウスで出会い、同じ音楽を聴いて、肩を組み笑い合う。ルールで縛り合うのではなく、思いやりを持ち寄って、想いに惹かれ合う。

そういう世界があるなら
行ってみたいと思った

そういう世界がここには広がっている。

本編のトリを飾るのは"ボストーク"。『Dim The Lights』の中で唯一収録されている日本語詞の楽曲だ。"グラニート"同様の軽快なドラミングと爽やかなメロディが、ライブハウスに風を運ぶ。ボストークとは1961年にソ連が打ち上げた人類初の有人宇宙飛行船の名だ。これからも、誰も知らない場所へ、この旅は続いていく。

客席のアンコールを受け、すぐにステージに現れた4人。

細美「(袖とステージを)行って帰って来てっていうのは茶番にしか思えないので、あと2曲だけやって帰ります。」「またここで打ち上げやろう。ライブの打ち上げじゃないよ。外の世界では戦って、そして人生の打ち上げを、ここでやろう。」

アンコールのラスト、"Remember Me"で細美は歌詞の中にある「You are still the same.」を「We are still the same.」と歌った。

If you sail back to your teenage days
What do you miss
What did you hate
Remember we are still the same
10代の日々に船を出したら‬
何が一番懐かしい?‬
何が嫌いだった?‬
今も同じだってことを忘れないで

11年前、16歳で初めてライブハウスに行った時、不安で怖かった。でもそれ以上にワクワクして胸が踊った。重いドアを開けたその先では爆音の中、人波に呑まれ、頭の上を人が転がっていき、グチャグチャになりながら息をするのも大変だった。でも日常では絶対見ないような光景の中、そこにいるみんなが、笑顔で拳を掲げ、声を上げていた。
そしてステージで歌うその人は、今この瞬間世界で1番自分が幸せだというような笑顔を見せていた。

11年後、27歳になって訪れるライブハウスには不安はなくて、でも11年前と変わらずにワクワクし、そして少しだけ涙が出そうになった。重いドアを開けたその先では爆音の中、相変わらず人波に呑まれ、頭の上を人が転がっていき、汗まみれのグチャグチャになりながら、普段どれだけこんな顔ができてるんだろうってくらいの笑顔になれた。
そしてステージで歌うその人は、今も変わらずに、この瞬間世界で1番自分が幸せだというような笑顔を見せていた。

人は変わる。細美が手拍子や「オイ!オイ!」と掛け声を煽るようになる日が来るとは思わなかった。身体は鍛え上げられ、すぐTシャツを脱いでは裸になり、親友との惚気話に頰を緩ませる。
自分も変わった。あの日の学生は社会人になり毎日仕事。昔みたいにライブハウスに来て汗まみれになって暴れることも少なくなった。周りは結婚して子どもができ、会うことも少なくなった友達も多い。
全ての人が年とともに、時代とともに変わっていく。

でも変わらないものもある。

もし君が疲れたら
呼び出して
付き合いきれないものに疲れたら
あの頃に戻って話をしよう
そしたらこの世界のどうしようもない出来事が
音にかき消されて
勇気が湧いてくる

この場所では、今も変わらずに素直でいられる。笑われることも比べ合うこともなく、クソッタレのダメ人間も、外の世界で擦り減ってしまった人も、大好きな音楽を大好きなままで。立ち上がれと、1人じゃないと、その音楽は鳴り続ける。

細美「20年後には64歳のおれに会えるよ。」

逃げようぜこのまま
どれだけ歳をとっても
いなくなるわけないだろ

外の世界で戦って、疲れた時は勇気をもらいに、頑張った時には自分へのご褒美に。
人生の打ち上げをやろう。何度でも。


さあ ライブハウスへ帰ろう


 


MONOEYES - Two Little Fishes(Music Video)

 

セットリスト

1.Free Throw

2.Reasons

3.My Instant Song

4.Roxette

5.Leaving Without Us

6.When I Was A King

7.Get Up

8.Cold Reaction

9.Parking Lot

10.明日公園で

11.Two Little Fishes

12.Carry Your Torch

13.Run Run

14.Like We’ve Never Lost

15.Borders & Walls

16.3, 2, 1, Go

17.グラニート

18.ボストーク

アンコール

19.Somewhere On Fullerton

20.Remember Me