22│06│Yet To Come

■某日
 同じ部署の同僚が諸般の事情で、今抱えているプロジェクトをこれ以上続けることができなくなったという話を聞く。そのチームの噂は度々耳には入ってきていたが、実態は噂よりも過酷だったようだ。こういう時、外野の人間としては「もっと早く相談してくれれば。」という気持ちになってしまう。外からは中で何が起こっているかわからない。何か少しでもSOSを出してくれれば、多少なりとも自分にできることもあったはずだ。でもそのような状況下に置かれた当人にとっては、「相談する」ということは他人が思う以上に心理的に負担を感じることか、もしくは選択肢にも最初から入らないような状態なのかもしれない。それに自分はその悩みを打ち明ける対象ではなく、もっと言うと社内のほとんどの人がその対象ではなかったのか可能性もある。周囲にその悩みを打ち明けられず、状況が一向に改善されない中で、過度なプレッシャーに追い詰められ抱え込んでしまったものが溢れてしまった結果が今。そのチームはもちろん会社にも部署にも自分にも責任がある。かなり気が落ち込む。でも何もできなかったのに落ち込むのも、ひどく偽善的だなとも思う。

 

■某日
 会社の先輩に飲みに誘われ仕事終わりに渋谷へ。普段ただでさえ会社の人と飲みに行かない上にコロナ禍でもあったので、こうして社内の人と飲むのはすごく久しぶりだ。昨年に自分が異動してから同じ部署になったものの、一度もちゃんと話したことのない先輩も同席しており上手く話せるか緊張。しかし実際に話をしてみると職場のイメージとは違い気さくで人間味を感じ、飲み会の後は以前よりも距離が近くなれたように感じた。当たり前だが自分の勝手なイメージに相手を当てはめ決めつけるのはよくない。まあ友達ではないので、会社の人と別に仲良くしたくないと言われたらそこまでだが。ただ「大した話もしないのに仕事終わりに飲みにばっか行くおじさんはダサい」と思い飲み会を断りまくっていた昔の自分に、「それはもしかしたら少しもったいないことをしてるかもしれないよ」とは言ってあげたい。

 

■某日
 Creepy NutsオールナイトニッポンでDJ松永が「自分が何をしたいかがわからない」と言っていて首がもげるほど共感した。「彼女を作らないのもありえる」「結婚しないのもありえる / するのもありえる」「子どもを持たないのもありえる / 持つのもありえる」「別居婚事実婚もありえる」、全ての選択肢に対して同じ距離感でフラットになっているらしい。「おれは子孫を残す気があるのか?」「そもそも結婚したいかもわからない。」というDJ松永に、自分と同じように思っている人間がいるんだということに、少しだけ肩の荷が下りた気持ち。それに対してAwichは「何やっても元気があればギャルじゃん?」と、話が長いと一刀両断していたが。

 

■某日
 BTSが今後はしばらくグループとしての活動を控え、それぞれのソロ活動にフォーカスしていくことを発表した。その発表の数日前に公開された新曲のタイトルは「Yet To Come(The Most Beautiful Moment)」。"best moment is yet to come"(最高の瞬間はこれから)。世界一のボーイズグループになったと言っても過言ではない中で抱えていた葛藤をRMが涙ながらに話す姿には、熱心なファンではない自分の胸にも迫るものがあった。その上で、グループとしても一人の人間としても成長し、そしてファンのために「最高の瞬間はこれから」と歌う姿は、自分の願う人の最も美しい在り方のように映った。
 「Yet To Come」を聴いて、人生で一番好きになったアイドルである橋本奈々未乃木坂46を卒業する際、最後にファンに送ってきたメッセージに「私の絶頂は絶対にここではない。」と書いていたことを思い出す。
 自分は良い人間ではない。そうなる日も決してこない。自分にできることは"良い人間であろうと努力し続けること”しかない。

 

■某日
 年に一度の健康診断の日、人生で一番太ったことを知る。腹囲を計測するスタッフの女性に「昨年よりも(腹囲が)4.9cm増えておりますが大丈夫ですか?」と聞かれる。全然大丈夫じゃないが大丈夫じゃないと言えば助けてくれるのか。「階段は辛いものではなく、運動するチャンス!」。館内の階段に張られた標語のようなポジティブ思考が自分にもほしい。痩せねば。

 

■某日
 日記を書き始めて3週目だが全体的に暗いなと我ながら思う。テンション上がるような、ハッピーになるようなことが起きていないので仕方なくもあるが、もうちょいアガる話でも書きたい。Drakeのニューアルバムはがっつりなハウスでかなり調子が良かった。アガったのはそれぐらい。