22│06│Alone

■某日
 『かぐや様は告らせたい』が次回で最終回という現実が受け入れられない。


■某日
 月に一度のバスケの日。ただ今日は集まりがあまりよくなく、まさかの7人。仕方ないためハーフコートの3 on 3をする。でもいざ始めてみると存外楽しい。別にバスケ経験者でもないので技術はお察しというレベルだが、スポーツをしている時はプレイに集中して雑念が一切ない状態になれてかなり気分転換になる。
 バスケの後は元取引先の人と飲むことに。で、結局そのまま会社の先輩も合流して朝まで大変だった…ってこれTwitterで見たことあるな。この年になってくるとキャリアやら転職やら仕事関係の人と飲むと自然とそういう話になることも多く人生を考える。5年ぶりぐらいに朝4時までお酒を飲んで流石に気持ち悪くなった。


■某日
 前日会社にELLEGARDENのTシャツを着ていったからか、ほとんど話したことのなかった社員の人に「エルレ好きなんですか?」と聞かれる。どうやらその人もエルレが好きなようで、更に同世代ということもわかり、2000年後半のポストエルレと呼ばれたバンドが沢山いた頃の話など、同じ時代に同じ道を通った人にしかおそらく通じないだろう話ができてとても楽しかった。「好きなバンドのTシャツを着てく」、たったそれだけ。何かのきっかけというのは些細なものだ。日記を書き始めて、何も起きていないような自分の人生にも、それなりに何かは起きてると気づいた。
 夜は同業他社に移った後輩と取引先の人と3人で飲み会。普段はあまりお酒を飲まないのに突然予定が続いたりするから不思議だ。他社事情を聞き2日連続で人生について考える。考えても正解がないのに考えたくないよ人生。


■某日
 某アーティストのライブへ。いくつかのアーティストを見ていて「〇年前に出てきていたら、もっと色んな人に届いたかもしれないな。」と感じることがある。時代は常に移り変わっていて、その時々の流行や人の気分、社会のムードがあって、そのアーティストがどんなに良いアーティストでも、その時勢に合致しないと大きな流れに乗るのは難しいように思う。もちろん大きな流れに乗ってヒットを出したことで逆に消費されてしまったアーティストも沢山いるので、それを全員が目指すべきとは言えないが。
 こういう時、一緒に仕事をした中で最も尊敬する人の一人がインタビューで言っていたことを思い出す。その人も、その人の師匠にその言葉を言われたようなので又聞きではあるのだけれど。いつ思い出しても真理だなと思う。 "僕の師匠がよく言うんですけど、「時代とタイアップしなさい」と。タイアップする相手について、一つ目が“企業”、二つ目が“季節”、最上が“時代”だと。"


■某日
 OMSBのライブを見に渋谷WWW Xへ。今年リリースされたアルバム『Alone』が人生のベストアルバムレベルの傑作だったので期待値は最高潮。狙っていたTシャツも無事買えて万全の状態で待機する。ライブは音源で聴いていた更にその何倍も素晴らしかった。心臓に響く低音にOMSBの声量あるラップが乗り、否が応でも首を振り、体を揺らしてしまう。それに加えもちろんラップそのもののカッコよさもずば抜けているが、何よりOMSBのラップはどれだけファストでもフロウが変わっても言葉がクリアに聞き取れ、リリックの意味が全て入ってくる。出自によって受けた偏見への憤りやうだつの上がらない自分への苛立ちと葛藤を吐きながら、でもこのままでは終われないと自分を鼓舞し、そして結婚した奥さんと生まれた子どもへの愛が歌われている。歌詞の内容は全てOMSB本人の話なのに、自分に向けて歌われているような、自分のことを歌っているような感覚になる瞬間が何度もあって、その度に胸が熱くなった。「胸が熱くなる」って言うけど、人間感動すると比喩じゃなくて本当に胸っていうのは熱くなるもんだ。「Aloneたち」。ゲストで来ていたVaVaが客席を指してそう言っていた。"Alone"。人は一人。でも一人じゃない。OMSBの音楽はそう思わせてくれる。OMSBがライブ中何度もありがとうって客席に言ってたけど、それは100%こっちのセリフだ。あと"Think Good"や"Scream"、"黒帯"、"Crown"みたいな昔の曲やPUNPEEがゲストに来ての"Life Goes On"、VaVaと3人での"Wheels"もやってくれてめちゃくちゃ豪華だったな。濃密すぎてライブ終わりちょっと疲れたくらい。でもできるならもう一回最初から見たい。


■某日
 角川武蔵野ミュージアム細野晴臣デビュー50周年記念展「細野観光1969-2021」を見に行く。正直細野さんのことにそこまで詳しくなかったが、そのキャリアを紐解いていくと大御所やレジェンドとして知られるアーティストとのバンドやユニットにソロプロジェクトまで、日本の音楽シーンに多大な貢献と影響を与えてきたことが嫌でもわかり、自分の無知が恥ずかしくなる。50年、プロジェクトは変われど音楽に関わり続ける細野さんの創作意欲は途轍もない。自分にそのぐらい何か人生を通して自分を注げるものってるのかな。あーでもTwitterはほっといたらあと40年ぐらいやってそうだ。
 帰りに池袋で餃子を食べてお酒を飲む。このぐらいの休日を幸せと言うのかもしれん。