22│07│Can true love exist anymore?

■某日
 The 1975のマシュー・ヒーリーの Rolling Stone UKのインタビューを読む。10月にニューアルバムのリリースを予定している彼らにとっておそらく初のオフィシャルインタビュー。次のアルバムの内容はもちろん、バンドの来歴にこの2年の間の心境の変化やSNSにおけるキャンセルカルチャー、インスピレーションの源泉、現代におけるmasculinity(男性らしさ)、現代がどういう時代で、そんな時代に何を歌うのかなど非常に多岐にわたっている。余りのボリュームに英語の勉強がてら自分で訳してみようとしたら自分の英語力では辞書と翻訳機能を使って3日かかった。けれどファンにとっては非常に読みごたえのある内容だったと思う。このインタビューの中でマシューがこう話す場面がある。

“Inspiration doesn’t come looking for you. Love doesn’t come looking for you. You have to turn up every day and catch it”

ざっくり訳すと「インスピレーションは君を探しには来ない。愛は君を探しには来ない。(それを望むなら)毎日自ら顔を出して、それを掴みにいかなければならない。」というような意味だ。「愛とは実践するものだ」というような言説を何度か聞いたことがあるが、それに近いようなものだと思う。
 「人のこと好きにならなさそう」とよく言われる。実際自分は気の利くタイプではないし、人に対しての興味や関心が薄いという自覚もある。「いつかそれを覆すような人が現れたらその時は人を好きなるよ」と言われると、自分はそういう人間なのだろうなといつ来るかもわからないそれを受け入れていた。
 人を好きになるということは相手を知るということだ。外見だけの好意やその場限りの楽しさは"好き"(人としてではなく愛に近い感情として)ということとは違う。他人に興味を持たず相手のことを知ろうとしない自分が人のことを好きになりようないのは当然だということを、この年になってようやく言語化できたことで理解した。今まで何やってたんだろうなと情けない気持ちになるが、こうやって遠回りするのが自分なのだろう。The 1975の次もアルバムは愛についての作品らしい。"Can true love exist anymore?"。その答えは自分にかかっている。


■某日
 7月も終わるので7月に好きだった曲をまとめる。洋楽を良く聞くタイミングやK-POPのリリースが固まるタイミングなどが微妙に分かれているようでおもしろい。自分の好きな曲を集めたプレイリストを見ていると「自分っぽいなー」と思う。ここには自分っていう人間がどういう奴かが、少なくともマッチングアプリのプロフィールよりはよく表れている。

■某日
 今日からフジロック。今年はサマソニに2日間行く予定でお金がないので現地に行くのは自粛。しかしこうして全アーティストではなくても生中継でライブ配信してくれるのは本当にありがたい。
 初日は仕事しながらだったのであまり見れなかったがTHE HUとKIKAGAKU MOYOとBonoboとVampire Weekendを見た。メタルでもポストロックでもエレクトロでもHIPHOPでもインディーロックでもJ-POPでもどんなジャンルも"フジロック"というフィルターを通すと全て"フジロックっぽく"感じる不思議。フジロックには何かそういうマジックがあるような気がする。気がするだけ。


■某日
 フジロック2日目。掃除や洗濯などの家事を午前中に済ませ、午後はひたすら家にこもりYouTubeに張り付く。普段なら興味がなくスルーするようなアーティストもせっかくだからと見てみたらめちゃくちゃ良いということがフジロックでは多々ある。
 2日目はBLOODYWOOD、ORANGE RANGE、Helsinki Lamda Club、toconoma、折坂悠太、Creative Drug Store、Foals、Arlo Parksを見た。ORANGE RANGEの懐かしいヒット曲メドレーに、中学生当時『musiQ』を買ったことが隣のクラスのヤンキーにバレ「貸してや」と言われ断れず貸したものの、そのまま借りパクされたことを思い出す。14歳の時の自分は「フジロック」って言葉さえ知らなかった。18年後、その「フジロック」を見ながらおれの『musiQ』を借りパクしたヤンキーの顔を思い出している。過去と現在が交差するとか言ったりするけど、これで合ってる?


■某日
 フジロック3日目。現地に行っているわけでもないのに3日目呼ばわりとは図々しい。コンビニにご飯を買いに行く以外は文字通り一歩も外に出ずに今日も一日中フジロックを見る。
 3日目はJapanese Breakfast、Elephant Gym、Bkack Country,New Road、PUNPEE、Superorganism、中村佳穂、ずっと真夜中でいいのに、ハナレグミ、Mura Madaを見た。もし現地に行くなら3日目だなと思っていたので、あっちが終わればこっち、そっちとこっちが被ってるなど息つく間もなくステージ間をワンクリックで移動する。Japanese Breakfast、Elephant Gym、Bkack Country,New Roadなど初めて見る海外勢のアーティストはどれも素晴らしく、特にMCで酔ってスマホをなくしたとおどけながらも超絶技巧なフレージングが強烈だったElephant Gymと、半年前にメインボーカルが抜けながらも新曲を揃え新しいスタイルを見せたBC,NRは来日に行きたいと思うほど好きになった。その後も中村佳穂は"生きる音楽"とでも言うような圧巻のステージだったし、スカパラを従えたハナレグミは言葉では言い表せないような音楽のマジックが間違いなくあった。現地で見れた人が本当に羨ましい。
 3日間ライブ配信を見てるとやっぱり現地に行きたくなる。ただこの気持ちは真空パックできないから、来年の今頃は「遠いし暑いし疲れるし雨降るし金ないしどうしようかな」ってウダウダ言ってる気もする。