2020.2.20 イギリス旅行記 1日目

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2月20日、アラームよりも早く目が覚める。時刻は朝6時30分。普段会社に行くよりも早い時間だが、緊張と興奮のせいか眠気はそこまで感じない。THE 1975とMura Masa、BABYMETALという自分の好きなアーティストのライブが続けてイギリスで行われることを知ったのは昨年の11月。こんな機会はもうないと、半ば勢いに任せロンドン行きを決めた。元々THE 1975は去年香港で観る予定だったが、デモの影響でライブは出発の3日前に中止。結局香港自体にも行くことはなく、旅券とホテル代は無駄になってしまった。そのこともあり、今回はそのリベンジを果たす機会がきたと(勝手に)天啓を受けたような気分だった。海外に行くのは約8年ぶり。ロンドンに行くのも9年ぶりだ。久しぶりの海外旅行。勝手がわからず、前日までの準備はドタバタ。おまけに今回Mura Masaマンチェスターで見る行程にしたため、ロンドンからマンチェスターへの移動も含め宿と列車を手配しないといけない。9年前どうしてたっけな。おぼろげな記憶を必死に辿るも、当時のことはほとんど覚えていない。Googleの検索窓にたどたどしく「ロンドン」の文字を入力し、航空券とホテル、列車を手配する。無事に出国できるだろうか。不安は拭えず、パスポートの有効期限を何度も確かめてしまう。

 

成田田空港に着き、チェックインカウンターへ。事前の不安をよそに、余りにあっさりと終わるチェックイン。更に手荷物検査も出国手続もなんなく通過する。「なんだ、余裕じゃん。」まだ日本の、おそらくここで引っかかる人の方が少ないポイントを通過しただけで達成感に包まれる。出発まで少し時間あるな。免税店近くのカフェでコーヒーを飲んで時間を潰す。店員さんは日本人だが、客に日本人は一人もいない。免税店から香る香水の匂いは、かつて通った国際空港の記憶を思い出させる。「これからロンドンに行くんだな」。何か大きいことを自分が始めるような(実際はそんな大層なものではないが)、使命感めいたものが込み上げてくる。すると店の外を空港のスタッフの人が名前を呼びながら走ってきた。

空港スタッフ「◯◯(私の本名)さんいらっしゃいますかー?」

今おれの名前呼ばれた??出発までまだ時間あるはずなのにどうして?理由はわからないが、とにかく急いだ方がよさそうだ。飲みかけのコーヒーを半分近く残し、駆け足で出発ゲートに向かう。

館内アナウンス「◯◯さま、飛行機が間もなく離陸いたします。いらっしゃいましたら出発ゲートまでお急ぎください。」

完全におれじゃん。ジワジワと込み上げる不安にトドメを刺される。初っ端からこんなことになるとは。息を切らしながら搭乗口へ着くと、スタッフの人が呆れたような笑顔で迎えてくれた。さっきまで心を満たしていた使命感は急速に萎んでいく。先が思いやられる。


ブリティッシュエアウェイズのCAは男性と女性の割合が半々。日本の航空会社では女性のCAの人しか見ないので新鮮だ。CA「搭乗券は持ってますか?」いきなり英語で話しかけられビクッとしてしまう。ここからもう日本語の通用しない世界なのか。出発前の機内安全ビデオにジリアン・アンダーソンが出てきてひっそりとテンションが上がる(Netflix『セックス・エデュケーション」に出演中)。機内食は2回。ビーフ or サーモンとチキン or パスタ。チキンとパスタは比較するものなんだろうか。パスタを選ぶも、こってりしていてかなり胃もたれした。次乗る時はチキンにしよう。飲み物を聞かれる。

おれ「オレンジジュースください。」

CA『rice?』

おれ「???米??」

意図はわからないが、とりあえずイエスと答える。氷を追加したところを見ると、どうやら『ice』と言っていたらしい。マジでわかんねぇわ。何を言ってるか分からない中突きつけられるYES or NOの2択に、この先何度も胃の縮む思いをすることになる。機内では『Mr.インクレディブル』と『アナと雪の女王』を見て時間を潰す。他の映画も見たかったけど、吹替がなく英語字幕だけで話が分からなくてダメだった。英語勉強しないとな。そんなことを考えながら、気がつくと眠りについていた。

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↑チキン or サーモンのサーモンの方。サーモンはかなり美味しかった。ただテーブルはかなり狭いので溢さないよう慎重に食べないといけない。

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↑パスタ or チキンのパスタの方。チーズとソースのパンチ力が強い。


12時間のフライト後、ロンドン・ヒースロー空港に到着する。飛行機を降りた瞬間、自分がこの感覚を知っていることを思い出す。「ロンドンの匂いだ」。9年前ロンドンに来たときも間違いなくこの匂いを嗅いだ。その感覚を自分が覚えていたことに嬉しくなる。うんうん知ってるよ、オイスターカードだろ?地下鉄に乗るためのオイスターカードを涼しい顔で買い、改札へ向かう(事前に調べ尽くした)。

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ヒースロー空港の到着口を出て駅に向かう途中

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オイスターカード。とにかくこいつにお金をチャージしておけばロンドン市内の移動はなんとかなる。

 

ヒースロー空港からホテルの最寄りのキングクロス駅までは約40分。ロンドンに来る前、ヨーロッパでコロナウイルスが原因で差別を受けるアジア人の話を聞いた。周りからの視線に他意があるような気がして、電車の中では必要以上にビクビクしてしまう。


ホテルの最寄り駅に着き、地上に上がる。

「…わかんねぇ」

地理感覚も方向感覚もない。目印となるランドマークはどれ?東西南北は?ホテルはどっち?何度か身に覚えのある絶望感が押し寄せてくる。ここはどこだよ。震える手でレンタルしたWi-Fiを起動し、Googleマップを開く。見つけた。サンキューWi-Fi。サンキュー文明。日本ではそうそう味あわないが、自分の居場所がわからないというのは想像以上の恐怖だ。当たり前だが周りに日本人は一人もいない。思ったより寒いな。ロンドンの冷気が、突き刺すように肺を満たしていく。

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↑最寄り駅のキングクロス駅。空港から1本で行ける上に、6本ほど乗り換えの線が走っていてかなり便利

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↑2泊したホテル・メリディアーナ。キングクロス駅から徒歩5分ほど。


第二関門だ。人生で初めてアルバイトをするために、居酒屋に電話した時と同じ憂鬱さ。チェックイン一つするのにも大きな勇気を振り絞る必要がある。

おれ「チェックインしたいんですが。」

受付「オーケー。アーユーオールライト?」

よっぽど疲れが顔に出ていたのか、ロンドンに着いて初めての会話で心配されてしまった。大丈夫かどうかはおれもわからないが、大丈夫としか言いようがない。チェックインの手順は日本と概ね同じ。7割何言ってるかわからないが、ノリの相槌となんとなくの雰囲気でかわしていく。鍵を受け取り、部屋の場所を案内される。部屋は3F。トイレとシャワーは共用で部屋と同じフロアのを使ってくれ。朝食は5ポンドで朝7時からね。合ってるかは確認できないが、多分合ってるだろ。エレベーターがないので荷物は部屋のある3Fまで手運び。スーツケースを引きずりながら部屋に入ると、安息の地に辿り着いた安堵で涙が出そうになる。9年前来た時も英語は話せなかったし、なんならその時はWi-Fiも持って無かった。にも関わらずあのときの自分はどうしてたんだろうか。疲れてるし、このまま寝てしまいたいとも思ったが、ロンドンに来てまでホテルに引きこもりたくはない。ご飯を食べに外へ。

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↑ホテルの部屋。狭いが清潔感はあって居心地は悪くない。

 

キングクロス駅から大英博物館の方に向かって歩く。やたらと目につくのはピザ屋とカフェ、それにパブだ。日本みたいに、お一人様に優しいお店は少ない。適当に見つけたインド料理屋と中華の2択に絞る。どっちに入ろうか。そもそも英語でちゃんと注文できるだろうか。緊張と不安で、それぞれの店の前を3回通り過ぎる。意を決してインド料理屋の中へ。「1人で。」滞りなく席に案内されるだけで、寿命が縮む想いだ。店員を呼び、マトンカレーとバスマティライスを注文する。

店員『○×%$ナン?』

おれ「???」

なんかナンって言ってるな。ナンはいるかってことか?それはサービスなのか、それとも料金は取られるのか。聞くのも億劫なので適当にイエスと答える。数分後、注文が運ばれてくると、案の定食べる気のなかったナンもついてきた。カレーはトマトの酸味と風味が効いていてかなり美味しい。適当に入ったにしてはアタリだ。ロンドン1日目の夜を無事過ごすことのできそうな自分に、ささやかな拍手を送りたい。帰り際お会計を見ると、きっちりナンの料金も請求されていたが。

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↑マトンカレー(12ポンド)とバスマティライス(3ポンド)、そして見切れてるのがナン(2.5ポンド)。日本円で2,400円くらい。たけぇ。


やっぱ英語わかんねぇわ。方向感覚もないし、場所もわかんない。常に緊張。全てが不安。9年前の自分の方が、今より確実に気合入ってた。大人になったはずなのに、その分だけ臆病になった気がする。仕事を始めて日々をこなす中で、未知の世界に飛び込む大胆さ、無謀さを、知らず知らずのうちに手放してしまったらしい。12時間のフライトは想像以上に体力を削っていて、ホテルに戻るとそのまま力尽きたようにベッドに倒れる。1日目にしてかなり疲れた。明日はどこに行こう。ロクに計画を立ててなかったが、未来の自分に全てを丸投げすることにする。今日の適当YESの打率は3/6。まあ、意外となんとかなってるか。明日からの不安が頭をもたげたが、ベッドの柔らかさは沈みゆく身体を、思いの外優しく受け止めてくれた。

 

※使ったサイト

◼︎航空券
スカイスキャナー: http://bit.ly/2Vx5XsL


◼︎ホテル
Booking.com: http://bit.ly/3cgPO0l

◼︎列車(ロンドン〜マンチェスター)
Omio: http://bit.ly/2TdbuTQ

 

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