22│07│show must go on

■某日
 誕生日が3日違いの人に出会う。自分は四柱推命占星術のような占いを結構信じていて、誕生日が近い人や誕生月が同じ人は自分と波長が近い人が多いなと思っているが、この女性も例に漏れずもう一人の自分かと思うぐらい感覚が似ていた。自分の感覚的な部分を話して共有し合えるというか、不思議な親近感があるというか、言葉では説明しにくいが"仲間"に会ったような気分になる。まあ以前誕生月が同じで感性や趣味のマッチ度90%超えみたいな女性にマッチングアプリで出会ったものの、一回のデートでフェードアウトとなったので自分と似てる=仲良くなれるとか付き合えるということでは全くないことも立証済なのだけれど。ただ自分が人生で最も好きになった人が2人いるが、その2人の誕生日が2月20日生まれと2月22日生まれと言われたら、そういうスピリチュアルなものにも何かあるんじゃないかという気分にもなってくる。あとこれまで出会った2月生まれの人は"2"という数字が異様に好きなのだが、他の月生まれの人も自分の誕生月の数字が一番特別だったりするのだろうか。これから人に誕生日聞くときは数字も好きか聞いてみよう。

■某日
 仕事以外なんの予定もない一日。マジ何もしてないなと急遽思い立ちカレーを食べに飯田橋へ。こだわり店主のワンオペ店という店構えに若干ビビるも、こういうお店が美味しくないはずはない(偏見)。辛くないのにスパイスで体温が上がってくると人体の不思議という感じがする。
 その後はカフェで西村賢太に『棺に跨がる』を読む。うだつは上がらないは暴力は振るうはプライド高くて僻み根性は凄いわという主人公の挙動に、読んでる方もインクを落とされたようにジメジメとした鬱屈とした気分が心に広がっていく。破滅的な最期の救いのなさには、自業自得と胸のすくような爽快感は欠片もなく憐憫や哀れみといった寂寥感に胸が包まれた。わざわざ時間を使ってなんでこんな気持ちになっているのかとも思うが、日常生活では到達しえない感情の片鱗に触れられるのが小説やエンタメの想像力のなせる業だとも思う。

■某日
 日向坂46ドキュメンタリー映画『希望と絶望』を観る。今年の3月末に行われた初の東京ドーム公演までの2年間を描いているということで、普段バラエティやライブで見る明るい一面の裏に隠された過酷なスケジュールやライブで酷使されるメンバーの苦悩や葛藤が描かれていた。ただタイトルに"絶望"と大仰な言葉が使われているが、その内の半分はマネジメントしている大人の失敗でしかなく、そういったミスも"物語"という抽象的な概念に回収されて美談に仕立て上げられていることにあまりノれなかった。劇中で大人への批評的な視点が入っていればまた自分の受け取り方も違ったのかもしれない。そう思うと9年前に公開された『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』はアイドルとファンの共犯関係やファンの功罪に自然と目がいくようになっており、アイドルドキュメンタリーとして凄い映画だったんだなと改めて思った。とはいえ個々のメンバーの姿には涙を流してしまった自分もいて、残酷で現金な消費者の自分には運営の大人を批判する資格はないのかもしれない。
 映画の後はカレーを食べに大塚へ。店員さんが全員インド人の本格インドカレー屋はマトンカレーが過去1,2を争うぐらい美味しかった。他のマトンと何が違うかと聞かれたらマジで一つも説明はできないが。

■某日
 仕事終わりに会社の同僚の女性とカレー屋へ。突然3日連続でカレー屋に行く謎のテンション。ただこれは一過性の発作のようなもので、一定周期で麻婆豆腐かハンバーガーか中本ブームがまたやってくるだろう。
 彼女が本当は今日は『処刑山』というホラーを見に行く予定だったという話を聞き申し訳なく思う。しかし巷でも『哭悲』や『呪詛』などホラーものが流行っている話を聞くし、最近ホラー好きな女性にもやたら出会うのだがホラーブームなのだろうか。自分はグロ描写が苦手なのでこの類の映画を見ることはほぼないのだが、彼女が見に行く予定だった『処刑山』にはナチゾンビとソビエトゾンビが出てくると聞いて、それはちょっと見てみたいかもしれないと思った。

■某日
 大学の時の友達から突然「明日東京行くんやけど会えるか?」と連絡をもらう。そいつに最後に会ったのは7年前かそのぐらいで、それ以降は一度も連絡をとっていなかったのでかなり驚く。自分はしばらく会ってない人とは関係性がリセットされてしまうというか、その人とどうやって話していたかがわからなくなり会った時ぎこちなくなってしまうので当日は緊張したが、大学時代と全く変わらない友達にすぐに当時(と同じと自分では思っている)に戻れた。近況や他の同期の友達の状況を聞きつつお互い彼女無しの独身として話は恋愛と結婚に。ずいぶん前に結婚していた2人の後輩が2人とも離婚していることを聞く。「結婚した奴から結婚して良かったって話きいたことない。」というそいつの言葉に「やっぱそうやんなー」と結婚したこともないのに頷きつつ、以前既婚の会社の先輩に言われた「結婚は別に良くないけど家族は良いよ。」という言葉を思い出す。人それぞれと言ってしまえば全てそうだが、結婚することでより幸せになれる人もいれば、必ずしもそうではない人もいる。結局問題は自分がどっちの人間かが未だにわかっていないことなのだろう。結婚式は茶番だから呼ぶなというそいつに、代わりに葬式には来てくれよと言って別れる。久しぶりに友達に会うと、連絡を取っていなかった他の友達にも会いたくなるのはただの一時的な感傷のせいだろうか。ずいぶん会ってない人に突然「久しぶり!」って連絡するのは少し恥ずかしいん。まあでも、努力しないと結構友達っていなくなっちゃうものでもあるよな。